↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/228

202話

「巨大なカエル?」


「はい、巨大なカエルです」


「カエルって、ゲコゲコ鳴くあの?」


「はい、ゲコゲコ鳴くあの、です」


 オレとアヤノさん、それとイザベラ嬢の3人で依頼を終わらせて、ギルドに戻ると、平原の彼方にいた巨大な生物の正体が明らかになっていた。




 現在、午後6時です。

 思ったより配達の依頼が長くなってしまった。

 原因はイザベラ嬢。


 この娘、めちゃめちゃ方向音痴だ!


 明らかに進むべき道とは、正反対の方向に行きたがるのだ。

 「こっちですわ!」「違います」というやり取りを何度したことか。

 自信があるだけ、たちが悪い。

 道案内に向かない人でした。


 良いところのお嬢さんだし、美少女だし、頭も悪くないんだけど、いろいろ残念なお方です。

 端から見ていれば面白いんだけどさ──自分が関わらないで済むならね!


 まぁ、イザベラ嬢については良しとしよう。

 結果的に時間もこれくらいでちょうど良かったみたいだし。


 冒険者ギルドの職員が荒ぶる冒険者たちをなだめながら、平原に現れた巨大生物について説明している。


 それによると、平原を越えた先に湿地帯があり、そこに問題の巨大生物が住み着いたのだそう。

 周囲の魔物の様子から、恐らく一月も経っていないとのこと。

 この頃から、少しずつ何らかの報告があったのかな?


 そして、誰もが気になっている巨大生物の正体なのだが……。


「カエル?」


「やった! 一儲け出来る!」


「バカな……もしかして、あのカエル、か……?」


「おお! オレ、好物なんだよな、カエル。運が良かったぜ!」


「おいおい……。マジか? くそっ!? どこか他の国に逃げるか……?」


 …………。

 何やらざわざわしているけど……?

 なんなの、これ?

 やたら悲喜交々(ひきこもごも)な感じだなぁ。


 ……っていうか、カエル?


「カエルですって、ラムダさん?」


「んー、まぁ、あれだけ大きいのだから驚異と言うか、脅威なんだろうけど……。

 周囲の反応がおかしいな?」


 ふとイザベラ嬢の様子がおかしい。

 顔面が蒼白だ!

 なに、何があったの?


「カエル……カエル、怖い……」


 なんか呟いていると思ったら、カエル怖い、と?

 キライなのですか、カエル?

 口から魂が出そうだけど。


 とりあえず、イザベラ嬢を引っ張って隅のテーブルに連れていき座らせた。

 〈アイテム〉(ストレージ)からコップを出して、水を飲ませる。

 落ち着いた?


「申し訳ありません、取り乱しましたわ」


「嫌いなものなら仕方ないかな?」


「いえ……嫌い、というよりは……」


 イザベラ嬢はむにゃむにゃと口ごもる。

 別に強がらなくても良いのに。


「まぁ、そんなに言ってやるな。

 イザベラは以前にカエルに集られて、気絶したことがあるんだ」


「殿下!? どうしゅてそれを……? いえ、しょれよりもどうしてここにゅ?」


 いきなりやって来るなり、イザベラ嬢の秘密をバラす王子様。

 うん、落ち着こう、イザベラ嬢。


「ははは。公爵が前に笑いながら言っていたぞ」


「お父様……」


 がっくりと項垂れるイザベラ嬢。

 なんか可哀想なので、お茶を淹れてあげよう。ついでに、ドライフルーツもどうぞ。


「……ありがとうございます。いただきますわ」


 イザベラ嬢はドライフルーツを摘まんで、もそもそ食べ始めた。


「ところで、殿下は何故ここに?」


「ああ。カエルが現れたからな。父──陛下の命令で俺が討伐の主導をすることになった。そのためにギルドと連携を取る必要があるからな。

 その話し合い……と言うか、顔見せだな」


 ふむ?

 いろいろ疑問がありますよ。


「ああ。

 お前たちはニホンジンだったから知らないのか」


 そう言って、王子様は優雅にお茶を飲む。

 うーん。

 黙ってそうしていると、とても絵になるな。横にいるイザベラ嬢と相俟って、いかにも貴族らしい。


「この国は、10年から30年くらいの間隔で、カエルが現れるんだ。

 建国から……10回以上はあるな。

 2パターンあって、今回のような巨大なカエルが1匹出るか、あるいは、小さなカエルがたくさん出るか、だ」


 …………。

 えっと、真面目な話なんだよね、これ。


「前回は、小さなカエルが大量に現れて、大変な騒ぎになった。

 イザベラ嬢が集られたのも、そのときのはずだ」


「その話は、今は関係ありませんわ!」


 重ねて言うけど、これって真面目な話なんだよね?

 どうも、そうは思えないんだけど……。


「ま、その気持ちもわからないではない。

 実は苦手な人もいるが、あれは食べるとなかなか美味いんだ。

 それもあって、カエルが出てくるとちょっとしたお祭りみたいになる。

 と言っても、記録を読んだだけで、俺はまだ一度しか経験してないがな」


 へぇ。

 そういえば、日本でもカエルを食べる話は聞いたことがあるな。

 見た目を気にしなければ、オレも食べてみたいな、じゅるり。


「小さいのは街中まで入り込んでくるが、子供が捕まえて小遣い稼ぎに出来る。

 俺もイザベラ嬢もそうだった。懐かしい」


「……わたくしは、忘れたい記憶ですわ。忌まわしきカエルめ……!」


「ただ、問題は大きいカエルでな。

 聞いたところによると、100m前後の大きさらしい。

 以前はそれを、城の兵士と冒険者たちが寄って集って倒したそうだ。身体は大きいが、動きが鈍重だからそんなに苦戦しなかったとか」


 はて?

 イザベラ嬢の呪詛はさておいて、王子様の話で何かおかしなところがあったような……?

 アヤノさんも同じだったようで、腕を組んで首を傾げていた。


「100m……?」


 ……っ!?

 そうか!

 100mはおかしい!

 オレたちが見たのは──もっともっと巨大(・・)だったんだ!

 100mどころか、その数倍はあったぞ!

 体積を考えたら……?


「そうだ。

 だから俺たちは、あのときあれを見ても、カエルのことは想像だにしなかった。

 そして、あれをカエルと聞いて一度安堵したのだが……次に来た感情は、筆舌し難いものだったな」


 オレたちは今、冒険者たちから離れた隅の方にいる。

 彼らの喧騒を背にして、オレの周囲は沈黙が占めていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。