179話
「貴様ら、こんなところで何をしている?」
扉が開くとともにこの言葉が聞こえたときは、ここは地獄か、と思いました。
いや、だって、地を這うような低い声で言われたら、誰だってそう思うよ、きっと!
この更衣室にいる面々だってそう思ったから、顔面蒼白にして身動きがとれなくなっているんだから。
むしろ、オレより恐怖を感じているんじゃないか、彼らは?
なんせ、数人でたったの一人を取り囲んでいるのだからね。
この状況はアウトだ。
かつ。
ゆっくりと室内に響き渡る足音。
かつ。
それはまるで、断頭台に上がる死刑執行人のよう──。
「もう一度聞こう。何をしている?」
無表情でそう聞いてくるのは──軍曹先生だった。
オレはその後に起きた惨劇のことを、思い出すことは二度とないだろう。
──というのは冗談だけど、まぁ、なかなか大騒ぎになった。
リーダー格で、率先してオレを責めていた貴族の男の子──王子様のお付きの一人──は、すぐに気を取り直すと言い訳を開始した。
曰く、王子様と公爵令嬢に近寄り過ぎ、無礼。
曰く、口の聞き方がなっていない、不敬。
曰く、庶民なのに態度が悪い、失礼。
などなど。
周りもそれに追従し始め、収拾がつかなくなってきたが、
「それが、更衣室に結界を張って、中にいる転入生に数人で詰問する理由なのか?」
と、軍曹先生に無表情で問われると、何も言えなくなってしまった。
うん、気持ちはわかる。
無表情だけど、いや、だからこそ、スゲー怖い。
あれに言い返していたら、次は拳が飛んできそうな雰囲気だった。
そんな猛者はここにはいない。
「ラムダ。貴様は帰って良いぞ」
……っと、良いんですか? もう一方の当事者の話を聞かなくて?
「構わん、行け」
「はっ! 失礼します」
踵を揃えて、ピシッと背筋を伸ばして敬礼する。
いや、冗談じゃなく、自然にそうなってしまう。
立ち去る際、背中に恨みがましい視線を感じたが、無視する。
もう、いろいろな意味で関わりたくない。
つか、君たち、よくオレを睨む余裕があるな?
オレなんて、軍曹先生が現れてから、冷や汗が止まらないくらいなのに。
あの殺気を受けているのは彼らなのに、同じ空間にいたオレにも影響があるんだから……。
多分、軍曹先生が怒っているのって、彼らの鈍感さではないかな?
言い訳をしたり、立ち去るオレのことを気にしたり。
軍曹先生が怒っていることは気付いてはいる。
だから、見付かったときは顔色が悪くなった。多分、成績とか家のことを考えたんだろう。
でも、軍曹先生が殺気を放っていることまでは気付いていない。
これは致命的だよね。
王立魔法学院の生徒は、軍の予科練という扱いだ。
つまり、何かあれば──戦争とか──戦力として計算される。
そうでなくとも、卒業後の進路に軍属という選択がある。
自分が死ぬかどうかの瀬戸際にいるのに、それがわからないというのは、危機意識が足りない。
そういったことを授業で学んでいるはずなのに、身に付いていないのだから、軍曹先生が怒るのも当然だろう。
彼らにしてみると、殺されるようなことはしていないのだから、そこまで思い至れないのかもしれないけど、軍曹先生のあの殺気を受けてもあんな態度でいられるのだから、ちょっと問題だね。
心の中で合掌しながら──同情はしない──、オレは更衣室を出たのだった。
外には、アヤノさんがいた。
オレが遅いから迎えに行こうとしたのだけど、目的地が男子更衣室だから、軍曹先生に一緒に来て欲しいとお願いしたのだろう。
それがあんなことになるとは思わず。
いや、アヤノさんのせいではないけど。
「大丈夫ですか?」
「ええ。問題ありません」
ちょっと怖かったけど、それだけだし……ごめん、うそ。スゴい怖かったです、未だに冷や汗が止まらないし。
「本当ですか? いじめは怖いですよ。
日本にいた頃、友達の友達がいじめで自殺した子の中学の下級生だったとかで、大騒ぎになったことがあったんですけど……」
うん。
それを人は無関係と言うよ。
まぁ、確かにいじめは怖い。
けど、今ここでオレがされたことなんて、いじめなんて言わないと思うよ。
それにオレの実年齢は、もうアラフォーだし。
正直、こんな程度でどうにかなるほど、柔ではないのです──社会に出ると、もっといろいろあるのさ。
そんなことよりも、ダンジョンに行こう。
地図も手に入ったことだし。
「……そうですね。遅くなっちゃいましたけど、まだ間に合いますもんね」
そうそう。
何か問題があっても、明日の自分に任せよう。
今、出来ることをしないと、後悔するからね。
おっと。
ダンジョンに行く前に、試したいことがあったんだ。
転移魔法を使えるようになりたい。
水を通って転移することが出来るけど、やっぱり迂遠なんだよね。
森の中だと便利だったけど、街中とかはどうしても面倒です。
スキルの【時空魔法】が有るし、出来るようになっておこう。
では、レッツチャレンジ!
スキル
不死 状態異常無効 超回復
杖の才能 魔法の才能 高速思考
夜目 魔闘撃 魔力制御 魔力操作
魔法並列起動 バランス 身軽
空間把握 空間機動 空歩
杖術LV.12 剣術LV.11 体術LV.11 盾術LV.11
投擲LV.10 必中LV.12 回避LV.12
ジャンプLV.10 ダッシュLV.11 耐久走LV.11
身体強化LV.1 精神強化LV.2(+1) 防御力強化LV.1
解体LV.10 危険察知LV.11
錬金術LV.11 結界術LV.12
召喚魔法LV.12 時空魔法LV.10
火魔法LV.10 水魔法LV.10 風魔法LV.10
地魔法LV.11 氷魔法LV.10 雷魔法LV.11
光魔法LV.11 闇魔法LV.11 無魔法LV.12




