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164話

 ジーク師匠にダンジョンの話を聞いた後、アヤノさんと一緒に勉強をする。

 授業についていくのに必要な基礎的な知識が全く足りていないので、そこから始めなければならない。いくら時間があっても、足らないくらいだ。

 さらに、明日の授業の予習もしなければならない。

 少なくとも、最低限のことは知っておかないと、授業中に何も出来ずに、ぼんやりしている羽目になる。

 それは時間の無駄になるので、わからないということがわかる程度にはしておきたい。


 ありがたいことに、ジーク師匠が必要な資料を集めるようにあらかじめ指示してくれていたようで、机の上に本が山積みになっていた。

 あまりの量にウンザリするが、アヤノさんと二人で分担すれば何とかなるかな?

 いや、しなくてはならない。

 なんせ、やらなければならないことが増えたからだ。




 ジーク師匠との会話を思い出す。


「王立魔法学院にはダンジョンがある。

 お主たちには、そこを突破してもらいたい」


 えっと……ちょっと何を言っているのか、わからない。

 ダンジョン?

 学院に?


「そう言っておるじゃろう」


 髭を触りながら、師匠は言う。

 けど……。


「いや、危険じゃないですか。

 何でまた、そんな場所に学院があるんです?」


「逆じゃ。ダンジョンの上に学院があるのではない。

 学院の下に、ダンジョンが出来たんじゃ。

 当時は、大騒ぎじゃったわ」


 あぁ、そうか。それもそうだな。

 ビックリした……。

 そりゃ、大騒ぎにもなるだろうよ。


「ダンジョンから魔物が出てきたりしないのですか?」


「定期的に、冒険者を呼んで間引いている。

 が、なんせ場所が場所じゃから、誰でも入れるわけではない。それなりに高ランクの冒険者が望ましいが、そう人数はいないからのぅ。

 仕方なく、学院の講師だったり、成績の優秀な学生の中から希望者を募ったりして、魔物を倒させているが……」


 んー?

 まぁ、そうか。

 第一王位継承者だったり、公爵令嬢だったりがいるんだものな。

 信用できる相手じゃないと、何するかわからないか。


「全く利用していないわけでもない。

 授業で、ダンジョンというものを体験させるために浅い階層に連れていったり、ダンジョン内で手に入れた素材を売却して、学院の運営費にしたりしている」


 なるほど。

 それは理解できる。

 けど……。


「お主の懸念も当然じゃ。

 ただ……これまで特に問題がなかったからのぅ。

 王宮の役人などは、それらの利益を前提に予算を考えておる。

 これが如何に危険か、想像もしておらん。

 いや、役人だけではない。

 そこに通う学生も、自分たちの足元に何があるのか、全く疑問に思っておらんのじゃ」


 まぁ、意識したときからそれがあって当然の常識だとしたら、それに対して疑問を持つことなんてないだろうね。

 何か起きてからでないと、常識なんて崩壊しない。


 例えば、オレみたいにな!


 ……やめよう。泣きたくなるから、自虐はしちゃイカン。


「あれが出来た当初の混乱を知っている者は、儂とクライネを除いて、もういない。

 だから、あれを危険だと頭では理解していても、どうにかして排除しようと考える者はいないのじゃ」


「上手く付き合うのも、選択のうちでは?」


「あれが、もっと辺鄙な場所にあれば、それでも良いのじゃが……」


 確かに、子供の通う学院の下にあるしな。

 つか、今までよく何もなかったもんだ。

 でも、これからもそうだとは限らない。

 ジーク師匠の危惧しているのは、そこなんだ。


 ……よくよく考えたら、あそこに王子様が通ってるんだよな?

 何故、許可した?

 そこまで、危機感がないのか……あるいは……?

 これ以上、考えるのは止めましょう。あまり良くなさそうだ。


「そんなわけでな、お主たちに頼ることにした」


 はい……?


「ダンジョンの最奥には、ダンジョンコアがある。それを破壊すれば、ダンジョンは機能しなくなる、というのは、知っているじゃろう?」


 えっと、まさか……?


「ダンジョンがなくなれば、危険もなくなる。安心して、学院に通えるぞ」


 うわぁ……。マジか……?


「でも、それをしてしまって良いのですか?」


 今まで黙って話を聞いていたアヤノさんが口を開いた。

 確かに。

 ダンジョンありきで、いろいろ考えられている部分も多いはず。

 それがなくなったら……?


「ダンジョンがないのが、当たり前のことなんじゃ。

 あんなもの、あって当然とかいう方がおかしい」


「それでも、それで社会が回っている以上、反発が大きいかと……」


「そうなんじゃが……そこで、お主たちの出番じゃ」






 オレは学院内にあるダンジョンの前に立った。

 一緒にいるのは、精霊──ディーネ、ジュリア、ヴィヴィ、ユミルだ。

 アヤノさんはいない。

 もう遅い時間なので、家で寝ている。

 明日も早いしね。


 予定としては、夜明け頃までダンジョンに潜り、魔物の傾向と対策を立てる。それと、マッピングをする。

 一度ダンジョンから出て、朝食まで勉強だ(予習が間に合わなかった)。

 学院に行って、授業を受けて、放課後に改めて、アヤノさんとかも一緒にダンジョンアタックだ。ただし、夕食までには帰らないと行けないので、二、三時間くらいだろう。

 そして、夕食が済んだら、予習と復習をする。

 それが終わったら、オレとディーネたちとでダンジョンアタックだ。


 といった感じか。

 アヤノさんの負担が大きいけど、最初のうちは仕方ない。

 諦めて、頑張ってもらいたい。


 はぁ……。

 マジで最近、溜め息ばかりしている気がする。


 こんなんで、オレ、これから先、大丈夫ですかねぇ……?


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