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157話

 戦乙女(ヴァルキリー)であるルキア様との話し合いから、三日が経った。

 ルキア様は魂のみになって、神界に戻っていき、その身体はユミルのものとなった。


 あれ以来、ルキア様の警告に従って、お屋敷にずっと籠っていた。

 していたことと言えば、クライネ師匠に延々と稽古を付けられていたことと、一人で港町に行って買い物をしていたことくらいだ。


 アーガスト聖王国にいる日本人が、チート(ズル)どころではない道具を持っていることについて、オレは特に思うところはない。

 ただ、そのことでトラブルがこっちに飛び火するのは、勘弁して欲しい、と思うけど。


 なので、お屋敷に引き籠っていたけれど、よくよく考えてみれば、そんな必要なかったんじゃないか、とふと思った。


 何故なら、アーガスト聖王国の日本人──一宮礼子嬢の立場になって考えてみると。

 せっかく手に入れたチートアイテムを、GM(神様)の使い(ルキア様)に没収されかけた。

 なんとか撃退したので二度と敵対しないように呪いで隷属させようとしたが、逃げられてしまった。


 さて、一宮嬢はこれからどうするか?

 1.追いかけて、止めを刺す。

 2.没収されないように、逃げる。

 3.現状維持。


 この三つだと思われる。

 このうち、1はないとは思う。

 追いかける手段がないのだ。

 ルキア様は逃げる際に転移魔法を使ったし、さらにその魔法も暴走してしまったらしい。

 それを追いかけるならば、発信器のようなものが必要だけど、そんなものは付いてないし、仮に目に見えないくらいのものでも、アヤノさんには【鑑定】のスキルがあるので、何かくっついていても、それを誤魔化すことは出来ないのだ。

 では、追跡することの出来る魔法ならばどうかと言うと、これも不可能だ。

 ルキア様が事故でダンジョンコアに取り込まれてしまった際、彼女は一度死亡してしまっている。

 その彼女にかけられた魔法も、その段階でキャンセルされているのだという。

 長々と説明したけど、要するに、ルキア様を探すことは、一宮嬢には不可能だということだ。


 では、2はどうだろう?

 アーガスト聖王国から出て、逃亡生活をする。

 ちょっと、考えにくい。

 と言うのも、一宮嬢は、チートアイテムを手に入れるために、他の能力が一切ないのだ。

 いくらチートアイテムがあっても、それを使いこなすのは難しい。

 というか、誰かに守ってもらわないと無理だろう。

 前回は、他の日本人がいたからルキア様を撃退出来た。

 次もそうするには、一緒に逃げてもらう必要があるけど、そこまでしてくれるかな? 特に、お城でチヤホヤされる生活を捨ててまで。

 まぁ、そもそも一宮嬢がそのチヤホヤ生活を捨てるとは思えないけど。

 そこまで切羽詰まってないのだし。


 この考えを突き詰めると、3の現状維持が望ましい。

 逃げているとチートアイテムを使うのは難しいけど、逆に迎撃にはとても便利なのだ。

 城の兵士と、仲間の日本人の後ろにいられるから、落ち着いてアイテムを使える。

 それに、一度そのやり方で、ルキア様を撃退している。

 その成功体験を捨てるとは、ちょっと考えにくい。

 だから、一宮嬢ならばアーガスト聖王国に留まっているだろう、と思う。




 と、いろいろ考えてみたけど、まぁ、これが正解かはわからない。

 オレの想像を超えた何かがある可能性はある。

 なんせ、オレの考えることだ。

 オレは、オレのことを信じていない。

 考えが足らずに、知らないうちに、破滅しているかもしれないのだ。


 だからといって、いつまでも引き籠っているわけにもいかない。

 いや、オレは良いんだけど。

 引き籠って、稽古三昧の日々。

 意外と悪くない。今まで、そういうことをしたことなかったから、新鮮で楽しい。


 しかし、他の面々は違うようだ。

 ディーネはそうでもないみたいだけど、ジュリアやヴィヴィ、ユミルが飽き始めている。

 アヤノさんも、口には出してないけど、退屈そうだ。

 まぁ、それも仕方ないけども。

 なんせ、何もない森の中のお屋敷だ。

 そして、していることと言えば、稽古と家事くらい。

 一七歳の少女だし、そりゃ、退屈にもなるよ。


 それに、ルキア様が一宮嬢からチートアイテムを没収したからといって、それで安心出来るとは思えない。

 むしろ、逆恨みされそうだし。

 そこら辺は、ルキア様にうまいことやって欲しいものだけど……。


 まぁ、何て言うか、下手の考え休むに似たり、とあるので、もう難しいことを考えずに、好きなようにしよう。


 お米を手に入れたかったけど、それは諦めて──いや、それは機会を見て、オレ一人で行けば良いから、それはそれとして──アーガスト聖王国には近寄らないようにしよう。


 もし、ユミルが見付かっても、他人の振りをすれば大丈夫ですよね。

 実際、他人なんだし。

 ダメなら、逃げるだけだ。


 うん、そうだ、そうしよう。


 よし!

 そうと決まれば、早速出掛けよう。

 どこに行こうか?


 ……ふむ。

 ストレス解消に、馬車を全力で走らせようか。

 お屋敷に引き籠る前は、ダンジョンアタックをしていたから、あまり走らせてなかったし。

 ついでに、彷徨いている魔物を倒して素材を売りに出せて、一石二鳥だし。


 では、出発しましょうか、……ん?


「おお! 出掛ける前じゃったか、ちょうど良かった!

 ちょっと儂のワガママに、付き合ってくれんかのぅ?」


 ジーク師匠……。

 久し振りですけど、急に何を言ってるのですか……?


初めて感想を書いて頂きました。

大変嬉しく思います。

頂いた意見を参考に、これからも続けていきたいと思うので、よろしくお願いいたします。

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