137話
買い物を終えて、お屋敷に戻った。
庭にいたクライネ師匠と模擬戦をする。
ジュリアとヴィヴィはそのまま参加し、ディーネとアヤノさんは夕食の仕度をするため、お屋敷の中へ。
いきなり全員が参加することはない。
そんなことをされたら、死んでしまう(死なないけど、死ぬよりキツい)。
徐々に厳しくなる、という寸法だ。
また、アヤノさんは、先程まで初めてのダンジョンアタックなこともあり、疲労を考慮するとともに、日本の料理をレベッカとエリーゼに教えておいて欲しい、という理由もある。
レシピさえ教えておけば、あの二人ならなんとか出来るだろう。
ついでに、ディーネが料理のイロハも学べるし。
ある程度、料理の仕度が済んだところで、ディーネとアヤノさんも模擬戦に参戦するとちょうど良いだろう。
というわけで、オレは現在クライネ師匠とジュリア、ヴィヴィにボコボコにされて──いない。
そうなんです。
意外にも、抵抗出来ている。
まぁ、あくまで「抵抗」なのだけど。
三人の攻撃が避けられるのだ。
今までは、攻撃が見えていたが、避けられなかった。
ところが、今は避けられる。
反撃までは出来ないけど(三人がかりだし)、かろうじて避けられるのだ。
嬉しいな!
今までの努力が、結実したのか。
感無量です。
おそらく、スキルが増えた影響だと思う。
身体の動きが結構違う。
朝の稽古で、なんとなくコツみたいなものを掴んだ感じだったけど、それがしっかりとスキルと合わさって動作に結び付いているようだ。
まだ、経験が不足しているから、フェイントとか三人の連携攻撃には対応しきれず、完全には攻撃を避けきれないけど、それでもダメージを最小限に抑えることは出来ている。
だから、動きが止まってしまうことがなく、畳み掛けられることがなくなって、まだまだ動き続けることが出来ているのだ。
これは、完全にアヤノさんのおかげだな。
別に、LOVE的な意味でも、運命で云々……的な意味でもない。
オレは単に、アヤノさんの動きを模倣しているだけなのだ。
これまでは、クライネ師匠の動きを模倣しようとした。
けれど、師匠はどうもわからない。
それに、教えてもらっている動きとなんか違うのだ。
おそらく、師匠は長い年月をかけて、自分の身体に最適化させた上で、それを対応されないように、隠すような癖が付いてしまっているのだと思われる。
一方でアヤノさんは、素直というか、稽古してきた動作がそのまま見てとれるというのか、とにかくわかりやすい。
それは彼女が真剣に取り組んできた、ということなので、素晴らしいことなのだ。
それに、アヤノさんが師匠に劣っているということでもない。
いや、日本にいた頃の彼女だったら、師匠には敵わないと思われるけど、異世界に来てチートな身体になった今、アヤノさんに足りないのは、実戦経験だけだろう。
適切な例えかわからないけど、アヤノさんの動きは参考書で、師匠のは問題集だ──それも、激ムズの。
ある程度以上の知識がないと、答えを読んでもサッパリわからない問題集であるクライネ師匠を、参考にするのは難しいのだ。
別に師匠の教えるのが下手だと言いたいわけではない。
ただ、小学生に基礎的な勉強を教えるなら、偏屈な大学教授よりかは、素直な高校生の方が向いていた、ということなのだった。
まぁ、理由はどうでも良いか。
なんか楽しくなってきたし!
クライネ師匠の剣を避ける。
ヴィヴィの上空からの強襲を避ける。
ジュリアのデスサイズの横薙ぎを受け流し、反撃。
しかし、それは師匠に撃ち落とされる。
間、髪入れずに師匠の剣が襲いかかり。
同時に、ヴィヴィの掌底がオレの脇腹を抉ろうとして。
また、受け流したはずのジュリアのデスサイズの石突きが目の前に。
魔法を使えば、離れることは簡単なのだけど、今はそれはご法度です。
避けきれないので、一番ダメージの少なそうな掌底での攻撃にわざと盾を当てて、衝撃を利用して距離を取った。
以前までなら、掌底の一撃でバランスを崩してしまい追撃を受けてきたが、今はちゃんと着地をして、剣を構えることが出来る。
いける。
ちゃんと戦える。
体力的に問題はないのだ。
後は、こちらの攻撃を当てさえすれば良い。
いつかは勝てる。
オレは成長しているんだ!
よっしゃ! やったるでぇ!
ごめんなさい、ちょっと攻撃を避けられたからって、調子に乗りました……。
まだまだ手加減してくれていたんですね。
これからも、精進が必要のようです。
頑張りたいと思います……ガクッ。




