132話
「その刀の試し切りをお願いしたかったのだけど、身体は大丈夫ですか?
明日ダンジョンに行くから、なるべく早く済ませるけど」
「はい! 大丈夫です! 任せてください!」
オレの言葉に、アヤノさんは四本の刀を両腕で抱き締めるように抱えている。
豊満なお胸様が押し潰されているけど、大丈夫?
おっと、視線には気を付けないと。
まぁ、アヤノさんはそれどころではなく、意識は完全に刀に向いているみたいだ。
でも、待った!
その前に、することがあるんだよ?
「まずは、先にこれを着てもらえますか?」
そう言ってオレが出したのは、作ったばかりの長袖のシャツで、本当はブラウスにしようかとも思ったが、ボタンが面倒だったから、それにした。
生きてきた四十年近くの記憶を総動員して、女性物の衣服を参考にして作ったのだが、結果的にシンプルなデザインになってしまった。
仕方ないんだ。
これはあくまでも身体のサイズを確認するための、サンプル品なのだ。あんまり凝るのも、どうかと思ったんだ。
それと、作っている途中で気付いたのだが、本当に必要なのは、アヤノさんの鎖帷子と鎧下だ。
そのサイズを知りたいなら、今ある現物──オレの鎖帷子と鎧下で確認すれば良い。
それを身に着けてもらって、キツいところと緩いところを調整すれば良いのだ。
それに気付いたので、ブラウスのボタンとか、シャツのデザインとか、どうでもよくなってしまいました。
まぁ、今後の参考になるかと思って、シンプルなものにしましたが。
なんか、いろいろ反省だな。
オレの鎧下だけを渡しても良いのだが、本来は素肌の上に着けるものだけに、着脱の度に席を外さなければならないのは時間がもったいないので、シャツを着てもらう。
「これからアヤノさんの防具を作るのだけど、サイズを調整したいんだ。そのためにいろいろ動作確認の必要がある。そのときに、刀を振ってもらうから、まずは着替えてください。
私は、部屋の外に──」
って、着替えるの早い!?
慌てて目を逸らしたが、全く間に合わなかった。
白い肢体に、シンプルなデザインの白い下着。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるそのスタイルの良さを、簡素な下着であるにもかかわらず、十分に引き立たせている。
何て言うか……エロい。
のおぉぉぉぉっ!
イカン! 十七歳だぞ! 犯罪です! お巡りさん、オレです! 条令違反しそうです!
違う! こんなときは、素数だ! 素数を数えるんだ!
1、3、7、11、17、23…………。
「あ、ごめんなさい。つい、家にいるときの感覚で……。父や母にいつも怒られるんです」
「……いや、こちらこそ、申し訳ない」
視線を戻すと、アヤノさんは渡したシャツとスパッツ姿で……スパッツ?
つか、下に穿くスカートかパンツを用意しなかった! バカか、オレ!
「えっと、わたしって、スカートが苦手で、いつもスパッツを着けているんです。見えても大丈夫なのですから、気にしないでください。
むしろ、お見苦しくて、逆にごめんなさい……」
頬を赤くして、シャツの裾を引っ張りながら身体を縮こませるアヤノさん。
オレは無意識のうちに、【錬金術】を発動。スカートを作製する。パンツの方が良いみたいだけど、量的にミスリル銀布が足りない。てか、スカートも膝までは届かない。ミニスカートになる。ちょっと無防備だな。ならば別の生地を使って、ニーハイソックスを作製しよう。絶対領域バンザイ。違う。これではオレの好みになってしまう。何を考えている、オレ! てか、どういうわけか、ここまで数秒しか経過していない。【高速思考】のスキルが仕事したのか? もっと別のときに働けよ!
アレ?
っていうか、いつの間にか、アヤノさんがスカートとニーハイソックスを穿いている。
そして、オレの鎧下を着けて、身体を動かしていた。
何が起きたんだ? まさか、記憶がなくなって……?
「うーん。当たり前ですけど、胸がキツいです。それから……」
アヤノさんの要望を聞きながら、また無意識に【錬金術】でアヤノさん用の鎧下を調整していく。
ヤバイな……。気を付けないと、いつか暴走するかも。
もっと理性的な思考を心掛けよう。
次からは、アヤノさんと二人きりになるのは避けるべきだな。ディーネか誰かにいてもらわないと……。
「そんなところ、でしょうか?」
「わかりました。じゃあ、これが、アヤノさんの鎧下です。ちょっと、着てみてください」
気を取り直そう。
防具は命に直結する。この場合は、アヤノさんの命だ。真剣にならねば。
アヤノさんは無事に日本に帰す。それが、年長者としてのオレの役目だ。
だから、邪念はポイしましょう。ポイ。
では、これからは真剣に。
やっぱり、どうしても、胸部にボリュームが必要だな。だからといって肩と脇の関係もあるから、バランスを取る必要が必要だし、腰回りも気を付けて、と。
む?
鎖帷子だと、胸部に補強を入れる必要があるのか? でないと、負担が掛かりそうだな。
かといって、補強しすぎると、バランスが悪くなって、せっかくの軽い鎖帷子のメリットがなくなりそうだし。
なかなか、難しい……。
何度も防具を着けたり、脱いだりしてもらって、その合間に、刀を振って、といろいろ並行して確認作業を繰り返した。
全てが終わったのは、明け方近くだった。
アヤノさんが刀を振るのに興奮して、なかなか睡魔が訪れず、いつまでも続けてしまった。
結果、調整が終わった上に、小太刀まで作れたから良かったけど。
最終的に、力尽きてそのまま作業部屋で眠ってしまったので、午後までそのままにしておこう。
っていうか、この娘。いくらなんでも、無防備すぎやしないかね?
オレが親なら、心配して外に出せないくらいだよ。
まぁ、刀を抱えて眠りについているから、怖くて逆に手を出されないんじゃないか、とは思うけど……。




