126話
クライネ師匠の話をまとめると、こうだ。
いつの頃からかはわからないけど、昔々から、異邦人が現れるようになった。
その当時は、どこかよその土地からやってきたのだろうと思われていたが、その異邦人の知識や技術力は、周囲の人たちとは隔絶していた。
そのわりに、知っていて当然のことや、生活をする上でできないことが多く、「どこかの貴族ではないか」「いや、それにしては、偉ぶっていない」「そもそも貴族ならどうして、一人でこんなところにいる?」などと、言われていた。
しかし、異邦人がもたらす知識や技術は、村や町、次第には国までを富ませ、裕福にしていった。
それは政治体制を変えるほど革新的なことで、異邦人のいる国は、大きく強くなっていった。
もはや、異邦人の出自など、気にするものはいなくなった。
一方で、異邦人のいる国のその変化に、周辺の国々は危機感を募らせる。
このままではよくないと、自国でも異邦人を探すが、そうそういない。
特徴として、黒目黒髪の、自らを『ニホンジン』と呼び、異世界からやってきたと主張することが上げられるが、それだけで見付かりはしない。
懸賞金目的で、偽者が出回り始めるなど、混乱が起こりだし、徐々に治安が乱れるようになると、各国の首脳陣は暴走を始める。
自国に『ニホンジン』がいない。
隣国に『ニホンジン』がいる。
ならば、そこから連れてくれば良い。
言うことを聞かないなら、強引に連れてくれば良い。
いかなる手段を使っても。
記録として正確には残っていないが、かなり酷い手段が取られたようだ。
拉致したり、家族を人質にしたり。
もっと悪辣な出来事もあったと思われる。
そこまでされて、『ニホンジン』も黙ってはいなかった。
比較的、穏和で平和的な考えを持つ『ニホンジン』──だからこそ、強引な手法を取られた、とも言える──だが、自らに、あるいは周囲の人々に危害を加えられて、安穏とはしていられない。
自らの持つ知識を使って、対策をしていった。
それは、次第にエスカレートしていき、各国を巻き込み、戦争へと発展していったのだった。
その中でも猛威をふるったのが、『ニホンジン』の持つ知識と技術力だった。
自らの身を守るために、あるいは、無理矢理に使わせられ、戦争は激化していく一方であった。
そして──とある大陸に大穴が空き、海水が大穴に流れ込み、部分的に沈没し、隆起し、地形が大きく変化した。
気候が変わり、空気が汚染され、人の住めない大地へと変貌したのだった。
その大陸にいた人の大部分は死に絶え、逃げ出せた一部の人も病に冒され、長くは生きられなかった。
地形や気候の変動、食糧難、難民がなだれ込むなど、戦争の影響が蔓延し始めてようやく、残った国々──それも大国と言われる──は『ニホンジン』の危険に気付いた。
事ここに至って、慌てて彼らを保護するべく、動き出した。
しかし、一度不審を覚えてしまった『ニホンジン』は、一部を除き、ただひたすらに抵抗し、最終的に姿を消した。
抵抗される段階で、大きな被害を出してしまった国々は、今後のことを考えて、残った一部の『ニホンジン』と各国間で協定を結んだ。
すなわち、異世界から『ニホンジン』が現れたら、その国の裁量で対応すること。そして、それに他国が関わらないこと。ただし、非人道的な行為が認められた場合はその限りではない、とした。
細々としたことは他にもあるが、大まかにそう決まった。
『ニホンジン』が現れるのは、そう頻繁ではない。
十年、二十年と経っても一人もいないことがあれば、二、三年で数人まとめて現れることもある。
彼らは誠実に付き合えば、敬意には敬意を、逆に害意を持っていると、敵意には敵意で返すという、わかりやすい反応を返してきた。
もちろん、全ての『ニホンジン』がそうだったわけではないが、概ね、そうであるとわかると、次第に大袈裟に考えるのではなく、他国から難民がやってきた、という程度の対応をするようになっていった。
世界は、『ニホンジン』に特別に過剰な反応をしなくなっていった──アーガスト聖王国が、『ニホンジン』を強制的に召喚できるようになるまでは。
一話で終わらせるつもりでしたが、長くなりそうなので、キリの良いところで中断します。
残りは、明日に。




