104話
クライネ師匠によるお説教がメインの反省会は終わりました。
さらに時間まで実戦形式の訓練を数回、続ける。
早いと一分かからずに終わる。
頑張っても三分少々といったところで、クライネ師匠とジーク師匠にボコボコにされた。
最後の一戦なんて、僅か数秒である。
秒殺。
……自信がなくなります。
「……最後のは、あれじゃ。指標とするところ、じゃな。
明日は、今日より一秒長く。
明後日は、それより一秒長く。
そうやって、少しでも強くなっていけばよい」
「うむ。諦めることなく、一歩でも前へ進むのじゃ」
痛む身体を無理に動かし、頷く。
喉を攻撃され、声が出せないのだ。
魔法を封じるのに、有効な手段だね。
実地で教えてくれて、ありがとうございます。
明日以降、ジーク師匠にお返ししたいと思います。
はぁ。
反省は後でするとして、夕食にしよう。
レベッカが呼びに来てくれた。
これから魔物狩りだし、しっかり食べて、頑張ろう。
材料は渡してあったが、メニューは任せていたので、何を作るか楽しみだった。
食堂には入ると、テーブルには魚のスープ──アクアパッツァかな?──とサラダ、パンが並んでいる。
ちょっと足りなそうなので、ソーセージも渡して焼いてもらおう。
美味しかったです。
スープはちゃんと出汁が利いていて、それでいて魚の味も残っている。魚介類の下拵えもされているから、臭みとかもないし。
ただ、やっぱり量が少なくなかった。
両師匠の見た目から、少なくしたんだろうね。
まぁ、そんなに食べるとは思わないよな。
クライネ師匠は、よく食べるのは知っていたけど、ジーク師匠も、痩せた外見とは裏腹に、健啖家のようだ。
それに、精霊たちもよく食べる。
特に、ヴィヴィだ。
一応、そのことはレベッカとエリーゼに伝えていたけど、想像を越えていたらしい。
途中で、肉を追加で焼いたりしたくらいだ。
まぁ、これでわかったはずなので、明日以降は大丈夫でしょう。
「何か困ったことはありましたか? 特にキッチンで」
キッチンには、併設で食料保存庫があった。
とりあえず、そこに〈アイテム〉から野菜などの食料を置いておく。
結構涼しめなので、すぐには傷まないだろう。
「念のため、魔道具用の魔法石が欲しいっす。
聞けば、長い間ここを使ってなかったみたいで、魔法石が消耗してるかもしれないっすから」
コンロとか冷蔵庫があったのは、驚いた。
やっぱりこのお屋敷って、日本人が設計したんじゃないの?
ジーク師匠によると、この建物自体は、【空間魔法】を利用して、安く売られていたものを移築したんだそうな。
だから、誰がこのお屋敷を建てたのか、知らないとのこと。
コンロも冷蔵庫も、電気の代わりに魔法石を使う。
魔法石というのは、魔物を倒すとたまに手に入る魔石を加工したもので、魔力を貯めておけるのだ。
まぁ、ぶっちゃけ、電池なんだけと。
この魔法石の魔力を使って、コンロの火を出したり、冷蔵庫の中を冷やしたりしている。
こういった魔道具は結構あって、既に庶民の生活の一部として馴染んでいる。
きっと、過去の日本人が造ったものだね、間違いない。
だから、お屋敷内の温度や湿度なんかも、空調でしっかり保たれているし、お風呂も、水を溜めるのもお湯にするのも、魔道具故なのだ。
スゴいね。
ただ、それだけに、魔法石は多く必要になる。
特に冷蔵庫は、常に稼働していなければならないし、魔法石がなくなったら、悲惨だろう。
レベッカの懸念ももっともなので、持っていた魔石を渡した。
まだ、未加工だけど、魔法石を持っていないので、仕方ない。
「明日、町に行くので、それを加工してもらってください」
「わかりましたっす」
「あと、寝室などで必要なモノはありますか?」
「あ、ジーク様の寝室の用意がないっす。元々、部屋は綺麗なんですけど、マットレスが足りないっす」
「あー」
急に来たからね。どうしたものか。
「ふむ。儂のことなら気にしなくてもよい。『アイテムボックス』にある程度のものは揃っているからの」
ジーク師匠がやって来て、そう言った。
ここ、キッチンなんですけど、どうしました?
「クライネの分もある。屋根のある場所で寝られるだけ、ありがたい」
「いや、そういうわけにもいかないんで……あっ、そうだ!」
毛布の類いはあるから、マットレスがあれば、とりあえずはしのげる。
なので、【錬金術】でスライムパウダーを加工して、少し固めのゼリー状にする。
それを、【結界術】で強化した布地に入れた。
イメージは、ウォーターベッドです。
出来上がったものを〈アイテム〉から出して、レベッカに試してもらおう。
「え、ここに寝るっすか? 大丈夫っすか、これ?」
「それを試して欲しいのだけど」
「ぅ。……わかりましたっす」
レベッカがウォーターベッド擬きに寝転がる。
ごろごろゴロゴロ。
「最高っす! あふ……眠い」
ふむ、まぁ、こんなものか。もう少し柔らかくても良さそうだけど、あまり柔らかくても逆に寝づらくなりそうだし。
試行錯誤が必要だな。
今日はとりあえず、これで行こう。
何個か作って……と。
これでよし。
後で皆に使ってもらおう。
あー、レベッカさん、ここで眠らないように。
後で皆に渡しておいてね。
では、オレたちは魔物狩りに行くとしましょうか!




