10話
目を覚ますと、見覚えのある森の中だった。
違和感を覚えて顔に触れると、乾きかけの血が付いていて……、
そうだ、思い出した!
オレは熊に殺されて、そして女神様に会って……?
「っ!?」
急いで近くの樹に登る。熊に殺される前に登った樹だ。
適当なところまで登ると、バクバクと暴れる心臓を静めるため、膝を抱えて座り込んだ。
何度も深呼吸をしながら、オレは女神様との会話を思い出す。
『貴方に死ぬことを許さない』
女神様はそう言っていた。
……事実だろうか?
確かめる手段はあることは、ある。
今、高い樹の上にいるので、ここから落ちれば良い……いや、駄目だった。先ほど一度落ちたんだけど、助かったんだった。次に上手く死ねるとは限らない。
ならば、ナイフで胸を突くか、頸動脈を切るか。
ギラギラと光るナイフを見つめ……ふと我に返った。
「……こわ」
オレは知らない間に抜いていたナイフを鞘に収めて、自分の思考に震えた。
なにをナチュラルに、本当に死ぬことができないか、を考えているんだ?
自殺とかないわー。
それに、今すぐに不死かどうかを確かめる必要はあるのか? ……ないな。
犬に襲われ、高い樹から落ちて――これは自業自得だけど――、熊に襲われる。ここに来てから一時間も経たない内に、これだけ危険があったんだ。
絶対に近いうちに、死ぬだろうな。そのときに、不死かどうかわかるはずだ。
うん、自殺とかないな。そうです、イヤなことは後回しです。
よし。とりあえず、今後のことについて考えよう。
まずは森から脱出する。そして人のいるところに行く。その途中でおそらく死ぬことになるだろうから、そこで不死かどうかわかる……?
「いやいやいやいや」
ちょっと待て。落ち着け、オレ。
なんで死ぬこと前提なんだ?
普通は、死ぬことは避けるべきだろう?
自殺とか、事故死とか、殺害されるとか、危険なことからは遠ざかるべきだろう!
ヤバい、オレ、おかしい。さっきから思考が危ない。
深呼吸だ、すーはー、落ち着け、すーはー、冷静になれ、すーはー。
「……はふぅ」
そうだ、落ち着け。
神様は言っていた。この異世界は大変なところだ、チート能力がないと詰む、と。
その通りだ。ここは危険なところだ。
しかし、こうも言っていた。チート能力あげるから、君が頑張ればイージーモードだ、と。
犬に襲われたときだって、警戒していたから対処できた。
熊に襲われたときは、樹から落ちて呆然としていたから、なにもできなかった。
なら、オレが危険を察知して警戒すれば、死を避けることは可能なはず。
いや、むしろ不死というのは、チート能力の極致ではないだろうか?
「……ふふ」
そうだ、イージーモードにするために、努力すれば良いのだ。
オレは痛いのを我慢さえすれば、いくらでも『死に覚え』できる。
「……ははは」
できないことも、死ぬほど繰り返せば、いつかはできるようになる。
「あははははは」
この異世界は――RPGだ。
RPGの世界で、オレは生きれば良いんだ。
――この瞬間、オレは生まれ変わったのだと思う。




