1話
初投稿です。
「わたくしの世界を救って下さい」
「……お断りします、申し訳ありません」
「……そうですか。では、貴方に用はありません」
女神様はそう言うと、姿を消した。
オレはその場に残される。
どうしてこうなった……。
※※※※※
7月某日、オレは免許の更新に行った。
正直、暑いので行きたくなかったが、誕生日が7月なので更新も必然的にこの時期になる。梅雨時に行くよりかはまだマシかと思うので、通知が来てすぐさま有給を取った。
免許を取って数年経つが、ほとんど車に乗ることがなかった。なので、別に更新しなくて良いかな、なんて思うが、40歳間近ともなると、何かあったとき必要かもしれない。両親も年が年だしな。
「暑い……」
まだ午前中だがもう気温は30度を超え、今日も当然のように猛暑日だ。熱中症にならないようにオレはなるべく日陰を選びながら、試験場まで急ぐことにする。
電車を乗り継ぎ、最寄りの駅に到着した。
この季節は地下鉄が良い。何て言っても涼しい。少し遠回りであっても、地下鉄に乗るのだ。地上のホームなど言わずもがな、冷房が効いている車内であっても、日差しが入ると地獄のように思います。
地上に出る階段を登っていると、段々暑くなってきた。この瞬間はうんざりする。本当に夏は嫌いだ。
たったっと、階段を駆け登る音が聞こえてきた。この暑いのに、と思って背後を確認すると、セーラー服の女子高生が髪を振り乱して走ってオレを追い抜いていった。
元気だな、と思ってオレはなるべくゆっくりと階段を登る。アラフォーになると、走る体力などないので、走らなくても良いように時間には余裕を持つこと、というのがオレの持論だ。友人に話すと、「時間に余裕を持つのは当たり前、キミが虚弱なだけ」とバカにされたが。
ふと、上を見上げる。やたらまぶしい。確かに、出口があるので光が入り込んできてもおかしくないが、それにしても……。
先に出口に到着した女子高生が立ち竦んでいた。影が伸びて、オレの足元まで来ている。おかしい。いくら夏の日差しが強くてもこんなに……。
その瞬間、光が爆発した。階段を登っている途中のオレはまだマシだったが、女子高生は目の前でそれが起きたので直撃したようだ。眼を守ろうとして手を翳し、少しでもその場から身体を離そうと足を引く。がしかし、そこは階段だった。
女子高生は足を踏み外し落ちる。オレは咄嗟に階段を駆け登り、彼女を掴まえ……、
「うぐっ!?」
運動不足、体力不足が祟った。女子高生を掴まえたまでは良かったが、その身体を支えきれずに、足を滑らしてしまった。
……仕方ない。女子高生を庇うため落とさないように抱え、オレは頭を打たないように顎を引く。
うむ、運動神経が壊滅的なオレだが、咄嗟にしては上出来ではないだろうか。これも火事場の馬鹿力というヤツかな。
「ゴフッ!?」
背中に衝撃を受け、同時に腹にも衝撃がきた。何故! と思ったが、女子高生を抱えていたのだった。それもそうか。
薄れていく意識の中、あの光はなんだったのだろうか? なんで爆発したのだろうか? いくつも疑問が浮かぶ。
そして、
最大の疑問は、
もう光が消えた今、
階段を登っているあの男、
あれは『オレ』だ、『オレ』の後ろ姿だ、
何故『オレ』は階段を登っている……
ここで倒れているのは誰だ……
オレはどこに……
※※※※※
「……………………い」
眠い……。仕事か……、行きたくないなぁ。
「……き……さい」
今日は何するんだっけ? ……あぁ、報告書、出さないと……。そろそろ、期限が近いし。
んー、眠い。
「いい加減に起きなさい!」
「ハイッ!」
女性の声で耳元で怒鳴られたので、慌てて飛び起きる。
ヤバい。
もしかして職場で居眠りしたか?
でないと、女性に怒鳴られることなんてない。
まだ完全に覚醒してないが、頭を振って無理矢理にでも起こす。
ついでに頬を叩きながら、周囲を見回すと……、
「やっと起きましたか」
……心臓が停まるかと思った。
「なんですか、その顔は?」
ものすごい美女がいる。
後光すら差しているようだ
……いや、実際に後光が差している。
どんな芸能人であっても、絶対にかなわないと確信する。
それほどだ。
「確かにそれほどでもありますけども、目の前で言われると、少々照れますね」
「っ!? 声出てましたか?!? 失礼しました!」
「気になさらずに。それよりも、落ち着いて下さい」
ぐぁ、恥ずかしい……。
完全に赤くなっているであろう顔を冷やすために、頬を手で隠しつつ、周囲を見回す。
……なんだ、ここは……? 真っ白な床がどこまでも続き、空なのか、天井なのか 、やはりどこまでも白い。
そんななか白でないのが、目の前の美女だ。後光が差しているように見えたのは、周囲が白かったからだろうか。いや、やっぱり後光が差している。何故?
「ここは神界です」
「……え?」
しんかい……? 深海? 神……界……?
「ここは神界です。貴方の目の前にいるわたくしは女神であり、その女神であるわたくしがいるここは神界です」
大事なことのようだ、なにせ2回も仰ったのだから。
女神様のおわす世界、神界……。
そうかぁ、なるほど……。神界だから女神様が……、
「……ぇえっ!? なんでっ!? なゴフッ! ゴホッ!?」
「落ち着きなさい、深呼吸して」
すーはー、すーはー。
「そのままわたくしの話を聞きなさい」
すーはー、すーはー。
「貴方はわたくしの世界である『ザザザーザーザザ』に召喚されました」
うん? 途中でひどい雑音が入ったけど……。
「『ザザザーザーザザ』では災厄に見舞われ、とても困窮しているそうです」
「あの、途中で一部聞き取れない部分が……」
「あら? あぁ、『ザザザーザーザザ』でしょうか」
頷く。
「そうですね、説明すると長くなるので、異世界ゆえに、と考えてください」
異世界……。これなんてラノベ? 確かにオレはラノベ好きだけど、こんなことあり得るのか?
「とにかく、現地の王族が召喚儀式魔法を発動しました。わたくしはそれに応え、貴方たちを呼んだのです。行ってくれますね」
「いろいろ質問がある……」
「わたくしの世界を救って下さい」
「質問が……」
聞いてくれ!
「わたくしの世界を救って下さい」
「……お断りします、申し訳ありません」
「……そうですか。では、貴方に用はありません」
女神様はそう言うと、姿を消した。
オレはその場に残される。
どうしてこうなった……。




