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罠師の魔王と取説少女のダンジョン経営(旧題:六畳一間ダンジョン攻防記)  作者: 佐崎 一路
地下1階 ロクでもない魔物娘たちが増えました
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地下1階 2部屋(その2)

 塵も積もればなんとやら……で、翌朝起きた俺がベッドから降りるのに合わせて、奥義書(グリモワール)形態で本棚に収まっていたヤミも、パラパラと回転しながら見慣れた美少女形態へと変貌を遂げた。


 俺としては女の子にベッドを使わせて、俺はテーブルの上にでも寝っ転がってれば良かったのだけれど、ヤミが、

「とんでもございません! 従卒であるわたくしがマスターであるアカシャ様の寝所を使い、こともあろうにテーブルの上へ追いやるなどと、冗談でも口に出してはなりません!」

 頑として聞き入れず、やむなくこの形となったのだ。


 まあ、もともとヤミの場合は奥義書の姿の方が本体であり、人の姿を取る場合にはまずは俺のMPを消費して依り代を形作り、その後は周囲の魔素を取り込んでその姿を維持しなければならないそうで、省エネのためにも夜間は本来の姿になっていたほうが都合がいいらしい。


 とはいえ、そうであってもそのうち部屋を拡張するなり、個室を作るなりして、ヤミ用のベッドも揃えよう……そう密かに画策する俺なのだった。


「おはよう」

「おはようございます、アカシャ様。お加減はよろしいでしょうか?」

「ああ、すこぶる快調だな」


 これは単なる挨拶の定型ではない。実際、自分でもびっくりするほど気力・体力共に漲っているのだ。


「おそらくは就寝中にLvが上がり、その影響でステータスに変動が起きているのではないでしょうか?」

 そう俺の疑問を読んで答えを導き出すヤミ。

 それから、促されるままダンジョンマスターの椅子に座ってステータスを確認してみた。


----------------------------------------------------------------------------

Name:虚空(通称:アカシャ)

Rank:Dungeon Master

Class:Der Erlkönig

Level:3

HP:1650/1650

MP:1800/1900

Status:

・STR 170

・VIT 168

・DEX 160

・AGI 152

・INT 174

・LUK 16

Point:3555/3555

Skill:『迷宮創作(Lv1)』『召喚魔法(Lv1)』『土魔法・ピット』『ダウジング(Lv2)』

Title:『異界の魔人』『罠師の魔王(トラッパーズ・デビル)

Privilege:レアリティ☆☆☆以上魔物ガチャ(1/1)[初回特典]

     レアリティ☆☆☆以上装備ガチャ(1/1)[初日プレオープン特典]

     レアリティ☆☆☆☆☆以上魔物ガチャ(1/1)[初日enemy撃退・駆除特典]

----------------------------------------------------------------------------


「お! おおおっ、Lv3になってる。あとなんか変な名称と、ガチャが追加されている!」

「おめでとうございます。アカシャ様の功績に応じて、運営からのプレゼントですね。Titleに関しては、今後のダンジョン作成時にプラス補正が働くことになりますので、それですとおそらくは罠系統の効率が良くなると思われます」

「なるほど……」


 どうやら運営の意表を突いたことで、運営は俺のことを『罠師』もしくは『詐欺師』と見なしたってことか。やってくれるな……。


「あと、このガチャなんだけど――」

「あの、その前に一階の扉を閉めませんか? いつまでもプレオープンにしておくと、動物やモンスター、最悪原住民に発見される危険がありますので」


 ついつい興奮して性急にいまあるものの確認を進めようとする俺を制して、ヤミが頭の上――正確には斜め上――を指さした。

 言われてみればその通り。

 迂闊に開けっ放しにしておくわけにはいかない。日中は偽装しておかないと。


 自分が思いがけずに浮かれ過ぎていたのを自覚させられ、ばつの悪い思いで立ち上がって出口へと向かう。

 一歩離れてヤミが当然のように付いてくる。


 で、玄関先で靴を履いて扉を開けると、そこには薄暗い階段が上に向かって続いていた。

 階段の造りは床と同じ石造りで、壁と天井は花崗岩を組み合わせたようなダンジョンの岩である。

 昨日、5,000ポイントで部屋を増築した後、もともとあった部分を『迷宮創作』で操作して地下一階へ持っていき、増築部分を一階部分として残しておいたのだ。


 もともとあった部屋マスタールームは、垂直方向ではなく斜め下方向に沈下させる形となったことから、こうして双方の部屋をつなぐ通路も斜め方向へ延びる形となっている。

 ちなみに通常の通路に関しては、追加でポイントを払わない限り、基本的に最小限かつ飾り気も罠もない最短距離を取る形で自動的に延びる形となるそうだ。


 そんなわけで一階分を上り切ると、そこには九畳ほどの殺風景な石造りの小部屋があった。

 ただし変わったところでは、部屋の中央にすり鉢状の井戸が掘られ、そこに水が溜まっているのと――昨日、『ダウジング』で水脈を見つけて、『地魔法・ピット』で掘りまくった結果であり、水が出た当初は結構泥水臭かったのだが、一晩でだいぶ上澄みは綺麗になっているようだ――天井からぶら下がった照明のひとつが水面以下に沈降していて、薄明りと細かい電気を放っていることと、部屋の二箇所のこちらは天井付近に照明の水晶がぶら下がっており、これも細かく静電気を放っているパチパチという音が聞こえるくらいである。


「虫の類はダンジョンの壁や床に吸収されて浄化されているようですね。井戸の方は底の方に小動物の骨らしきものが見えますので、虫目当てか水を飲みに来たネズミやトカゲが感電死したようですね」

「なるほど。それで予想よりもポイントとLvの上りが多かったのか」


 体感だけれど、一晩でポイントは100程度。Lvが2上がったわけなのだから、これは予想以上の効果だろう。


「そうですね。コンスタントに100ポイント稼げるのでしたら、半年で約18,000ポイントが濡れ手で粟で手に入るということになりますから」

「とりあえず最低限の生活費は賄える……ってわけだ」


 相槌を打ってくれるヤミに頷き返しながら、俺はぐるりと井戸を迂回して、一晩開けっ放しになっていたダンジョンの扉を閉めて鍵を掛けた。

 これで再び偽装は完了した筈である。


「とりあえず飯にするか」

「――はい」

 俺がそう促してマスタールームに戻ろうと踵を返すと、いまだ一緒に食事をすることにわだかまりがあるのか、ヤミは微妙な表情でぎこちなく頷いた。

次回、「仲魔が増えるよ!」「やったねヤミちゃん」

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