電車 2
「……。」
和希は無言で、手を伸ばし、女性に悪さをしている男の手を握り締める。
「なっ!」
「えっ…。」
驚いている痴漢の男と涙目で和希を見る被害者の女性。
和希は痴漢の男には厳しい目で睨み、女性には柔らかい笑みを浮かべる。
「次の駅で降りますよ、貴女も申し訳ないけどいいかしら?」
「ちっ。」
男は悪あがきをするように和希の手を振り払おうとしているが、彼女は慣れているのかびくともしなかった。
女性はまだ震えているのにも関わらず気丈にも和希に頷く。
「ねぇ、今はまだ誰も気づいていないけど、いいの?
女の子に捕まって、ダサいわね。」
悪あがきばかりしている男に和希は思わず鼻で笑う。
「このアマっ!」
逆上する男に和希は仕方なさそうに飾りベルトを外し、それを男に巻き付けて動きを制限させる。
「今日は装備が万全じゃないのに。」
「凄い…。」
女性はあまりの出来事に震える事を忘れて和希の技に驚嘆の声を上げる。
「お前…。」
「日向さん?」
呆れたような声がして、和希が振り返るとそこには、声のままの表情を浮かべる冬牙の姿があった。
「えっと?」
「有り得ねぇだろう。」
「何がですか?」
「何でちょっと目を離している間に人を捕まえているんだ。」
「あはは。」
「あはは、やないで。」
「そうよ。」
「ん。」
「……お前ら。」
「……。」
いつの間にかこっそりと近寄って来た紅葉たちに顔を顰める冬牙、ああ、やってしまったと、天を仰ぐ和希。
「まあ、それが和希ちゃんやし。」
「あたしたちが夏子さんたちに言っておくわ。」
「…一緒、ダメ?」
「紅葉ちゃん。」
「そら、あかん。」
「……。」
シュンとしている紅葉に二人は苦笑しながら、和希を見る。
「ちゅう事で。」
「和希ちゃんと、日向さんは用事が済んだら来てね。」
「ありがとう、皆。」
「……。」
和希のお礼の言葉に三人はニッコリと笑い、同時に冬牙には冷たい目を送る。
それは和希に何かあったら許さないと言っているようだった。




