撮影までの待ち合わせ 1
あっという間に夏子の約束の日になり、和希はズーンと落ち込んでいた。
「おい、大丈夫か。」
「あんまり。」
あまりに落ち込んでいる和希に珍しく心配する。
「……どうしたんだ?」
「ちょっと、この撮影で不安材料が一つあって。」
「何がだ?」
「衣装。」
「衣装?」
予想外な言葉に冬牙は首を傾げる。
「うん、昨日聞いたんだけど、向うで何着かあるから自分で選ぶんだって。」
「ふーん。」
思ったよりもくだらないと思ったのか、冬牙は気のない声を出す。
それに、和希はカチンとくる。
「日向さん?」
「何だ。」
「私にとって重要な問題なんですよ。」
「何でだよ、適当に選べばいいだろう。」
「男性はタキシードを選ぶだけですけど、女性はそうじゃないんですよ。」
「何だ、ただドレスを選ぶだけだろう。」
「そのドレスが厄介なんですよ。」
和希は唇を尖らせ、冬牙を睨む。
「まず、色とか。」
「白でいいんじゃないか。」
「確かに白でもいいですけど、白と言っても素材とか色々あって本当に同じ白でも違うんですよ。」
「……。」
「で、今言いましたけど、素材とかも色々ありますし、ドレスのデザイン、それに、アクセサリーとか色々と選択しないといけないんですよ。」
「……。」
和希の迫力に押され始めたのか、冬牙は黙り始める。
「まあ、それはいいんですけど。」
「いいのか?」
「一番の不安が…私の友達なんです。」
「あの、個性的な?」
冬牙の言葉に和希は思わず半眼になりながら彼を見る。
「何だ?」
「いえ、日向さんには言われたくないな、なんて思っていませんから。」
「…思いっきり思っているだろう。」
「そんな事はないですよ。」
和希は若干拗ねたような口調で言うものだから、まったく説得力がなかった。
「……。」
「話を戻しますけど、あの友人たち……絶対にバトルになるんですよね。」
「バトル?」
「はい……、皆で服を身に行く時、かなりの確率で私が着せ替え人形になって、それで、三人の趣味がでるんです。」
「……。」
「確かに、私の趣味じゃないけど、でも、不思議と合っているんですよね。」
和希はその時のことを思い出しているのか苦笑している。
「まあ……、三人とも競い合うように勧めてくるから一つのお店で二時間とか結構あるんですよ。」
「……。」
「今回はそんな事がなければいいんですけど…。」
あの三人だからな、と遠い目をする和希に結局冬牙は待ち合わせ場所に着くまで何も言う事はなかった。




