写真撮影 準備編1
和希は暗い顔で学校に向かう。
「皆に何て言おう。」
「なーにがや?」
「顔色悪いわ。」
「和希ちゃん、大丈夫?」
「うひゃっ!」
まさか後ろにいるとは思ってもみなかった和希は素っ頓狂な声を上げてしまう。
「うわ、和希ちゃん珍しいな。」
「本当に。」
「大丈夫?」
「皆、おはよう、ごめんね、勝手にびっくりして。」
「ええんやけど、何か悩み事?」
「あー、昨日、夏子さんが来て。」
「……ああ、ウエディングドレスの件?」
「うん。」
「あーあ、その様子やと不本意やのに了解してもうたとか?」
「うん。」
「別に、平気。」
「えっ?」
紅葉の言葉に和希は瞬きをする。
「別にええのに。」
「そうよ、するにしても記念になるし、しなければ、それでもかまわない程度よ。」
「でも、不特定多数の人に見られるんだよ?嫌じゃない?」
「うちは大丈夫。」
「そうよね、イベントに行ってコスプレとかもしているものね。」
「だって、好きなものは好きなんやからしゃーないやん。」
「そうね。」
同意する桂子に瑛瑠は満足そうに笑った。
「せやから、うちと桂子ちゃんは平気やよ?」
「そう言えば、桂子ちゃんもイベントごとがあったら、付き合っているんだっけ。」
「ええ、楽しいわよ。」
桂子の言葉に和希は苦笑する。
「私は人に見られるのとか苦手だから遠慮する。」
「別にコスはええんやけどね。」
「仕方ないわよ、和希ちゃんはそもそも人ごみも苦手なのよ。」
「無理強いは、よくない。」
「いやいや、うちは無理に誘ってへんで。」
「ふふふ、分かっているわよ。」
和希はようやく心からの笑みを浮かべる。
「あー、和希ちゃんようやく笑ってくれたわ。」
「良かったわ。」
「和希ちゃん、笑顔、最高。」
「うんうん、何て言うか心が洗われよーなきーするわ。」
「そうね。」
「いやいや、それ大げさだよ。」
「大げさ、違う。」
「そうそう、和希ちゃんは和希ちゃんやからね。」
「……。」
和希は桂子に助けを求める視線を投げかけるが、彼女はそれを分かっているのか、分かっていないのか、助けてはくれない。
そして、和希が時間に気づくまでこの話題が続いた。




