一月 3
「ご馳走様。」
ペロリとケーキを二つ食べきった和希は両手を合わせる。
「本当に二つ食べたのね。」
「食べれるから言ってます、もし、入らなかったらラップして晩御飯のデザートにでもします。」
「そう。」
「で、夏子さんは何で来たんですか?」
「一か月だから。」
「…違いますよね?」
睨むように和希が言えば夏子は観念したのか、それとも始めから遊んでいたのか肩を竦めた。
「もう、もうちょっと遊んでくれてもいいじゃない。」
「こちらは遊びじゃないんで。」
「本当に面白くないわね。」
夏子は溜息を零し、そして、鞄から一つのパンフレットを取り出した。
「何ですか?」
パンフレットにはウエディングドレスを着た女性とタクシードを着込んだ男性が映っている。
「今度うちでやる企画なんだけど、困った事にモデルが決まらないのよ。」
「……。」
和希は嫌な予感がして冬牙を見る。
冬牙もまた嫌な予感がするのかそっぽを向いている。
「四人の花嫁に四人の花婿が必要なのよね。」
「……。」
「あっ、紅葉ちゃん、瑛瑠ちゃん、桂子ちゃんは貴女が了承すればいいって言っていたわ。」
「マジですか……。」
夏子の言葉に和希は頭を抱える。
「いいじゃない、いい思い出になるわよ。」
「明らかに楽しんでいるじゃないですか。」
「あら、そんな事はないわよ。」
「……花嫁役は私たちであと花婿さんは誰なんですか。」
「こいつの了承があればこいつと後は貴女たちの知り合いにいい人たち居ないかしら?」
「……。」
完全に他人任せな夏子に和希は溜息を零す。
「私はまだ承諾していませんよ。」
「してくれるでしょ?」
和希が断るとは思っていない夏子に和希は本気で溜息を吐いた。
「全く…。」
「やったー、承諾してくれたわ。」
「えっ、ちょっと、私返事してませんっ!」
「善は急げよっ!」
夏子は和希の言葉を聞かず荷物を持って立ち上がる。
「それじゃ、詳しくはこいつの携帯で知らせるから、じゃあね。」
「ちょっと……。」
もう見事というしかない程鮮やかに立ち去る夏子に和希は手を伸ばすが、すでに、夏子は立ち去って行った。
「……私返事してないよ…。」
あまりに不憫に思ったのか、冬牙はポンと和希の肩に手を置いた。




