着せ替え人形
和希は自分の姿を見てうんざりする。
夏子がやってきてからしばらくして宅配便が来て、そして、その人が持ってきた巨大な姿見で和希は自分の姿を映している。
「似合うじゃない。」
後ろから聞こえる賛辞に和希は遠い目をする。
彼女が着ているのはいわゆるメイド服。
色は幸いにも紺と白の地味だけど和希に良く似合うもので、頭には真っ白なカチューシャをつけていた。
「うーん、化粧しようか?」
何か物足らなそうな顔をしてそんな事を言う夏子に和希は泣きたくなる。
彼女の語尾は疑問符がついているだろうが、その眼は決して断る事を許さない眼をしていた。
そして、和希は夏子にされるがまま化粧までさせられる。
「…………よ…か…た。」
「何か言った?」
「いえ。」
和希は冬牙が居なくて本当によかったと呟いたが、幸いにも夏子の耳には届かなかったようだ。
「それにしても、いいわね。」
「何がですか?」
「化粧のりはいいし、足は細いし、色は白いし、胸はでかいし。」
最後のはセクハラじゃないのかと和希は静かに夏子を睨むが、彼女は気づいていないのか、それとも、気づいていても無視しているのか、多分後者だろうが全く気にする素振りを見せない。
和希はこっそりと溜息を零して、夏子が持ってきた紙袋から見える服を見る。
セーラー服、ナース、婦警官、チャイナ服、袴、ゴスロリ、幸いにも持ってきたのはこれだけだったが、間違いなく彼女の旦那が暇だったら更にいくつかの服が追加されただろう。
「うーん、ど定番もいいけど、少しエロが入っていてもいいわね。」
「エロ……。」
うんざりする和希は嬉々とする夏子を冷めた目で見る。
「よし、彼シャツという事で、あの餓鬼の部屋からTシャツを。」
「やめてください。」
流石に無断で冬牙の部屋に入るのは拙いと思う、和希は彼女を止める。
「えー。」
どこか子どもみたいな顔をする夏子に和希は真剣な目で彼女を見る。
「……しょうがないわね。」
諦める夏子に和希はホッと息を吐く。
「それじゃ、次はこれね。」
そう見せられたのはチャイナ服。
スリットは深い長めのチャイナ服。
和希は諦めたかのようにその服に手を掛ける。
昔からこの人には逆らってはいけない、それは魂に深く刻まれたものだったかもしれない。
着せ替えは冬牙が帰ってくるまで続く、彼が帰ってくるまで後三時間。




