指切り
和希は授業を真面目に受けて、そして、放課後になり、今日は紅葉たちと一緒に駅前に行ってもいいかも、と考え彼女に声を掛ける。
「紅葉ちゃん、帰ろうか。」
和希がそう言うと、紅葉は本当に残念そうに顔を曇らせる。
「凄く、残念、ごめん。」
まるで子犬が叱られたようにシュンとしおれる紅葉に和希は苦笑する。
「用事があるんじゃ仕方ないね。」
「……何で、今日に、限って。」
恨めしそうに低い声を出す紅葉に和希は乾いた笑いになる。
「また今度でいいじゃない?」
「……和希ちゃん、方向、違う……。」
唇を尖らせ、肩を落とす紅葉にそっと彼女の頭を撫でる。
「出来るだけ帰るようにするからね?」
「絶対。」
「うん、絶対。」
まるで、幼子に言い聞かせるように言う和希に紅葉はジッと彼女を見つめ、突然、小指を突き出す。
「指切り。」
和希は懐かしみながら紅葉の指に自分の小指を絡める。
「「指切りげんまん、嘘ついたら、はりせんぼん、のます、指切った。」」
紅葉は満足そうに笑い、和希もつられるように笑った。
「そう言えば、用事って?」
和希の問いに紅葉は言葉を詰まらせ、そして…。
「ひみつ。」
和希は普通の人では一見わからない、紅葉の引きつったような顔を見てこれは問い詰めても何も言わないだろう、と長年の経験で知っていた。
そして、こういう時は確実にくだらない事をやらかすのだと知っているので、少し呆れたような顔をしながら肩を竦めるのだった。




