夕食の買出し
和希は激安スーパーで有名な所にたどり着いた時には既にタイムサービスが行われていた。
それを見た和希は必死になって突撃する。
徐々に減っていく卵パックだったが、最後の一つを手に入れる事が出来た和希は素早く人ごみを抜け、ハンドベルが鳴った次のエリアに小走りで移動する。
『続きまして鮮魚にて、鮭一パック――。』
和希は次々と戦利品を手に入れる。
卵から始まり、鮭の切り身、キャベツ、人参、ジャガイモなど、普通よりもかなり安く手に入れる事が出来るのだが、その分和希の体力は減っていき、レジの行列に並んだ時には制服はよれよれになっていた。
しかし、疲労と引き換えに得たものは大きく、和希の顔には疲労と共に何か満ちたれた顔をしていた。
「合計で二千百一円です。」
和希は財布から丁度の金額を支払い、籠を持った瞬間、やってしまった、という顔をした。
そして、和希の予想通り、袋は計四袋となり、一つ一つ中身がパンパンに膨らんでいた。
腹を括りいざ持ってみると、ずっしりとくる重みに顔を顰める。
買い物している間はあまり感じていなかったが、いざ、帰るとなると、両手両肘にかかる荷物、それに背中に背負っているとはいえ教科書やノートがあるので結構な重さが和希を襲う。
「………こういう時、男だったら……。」
昔は多少そう思う事があったが、思春期に入ってからはなくなっていた考え方が自然と零れ、和希は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……結構吹っ切れたと思ったんだけど、最近、「一輝」のような言動が出る時が、あるな……。」
今は「和希」なのに、と和希は自嘲の笑みを浮かべる。
情けない、そう思いながら和希は天を仰ぐ。
冬牙と再会してから完全に「前」と今を受け入れたと思っていたつもりだった、和希だったが、自分が思っていた以上に未だに「前」を引きずっている事に自分を情けなく思っている。
和希には気心の知れた親友がいるが、流石に前世の記憶がある事は話していない、だから、今彼女が悩んでいる事を理解できる人がいなかった。
彼女は冬牙が過去の自分に囚われている事に気づいているのに、自分が必要以上に「前」を気にしている事に気づいていない。
しかし、和希は自分で何とか出来る力を持っている。
それはいいことなのか、悪い事なのかは誰も分からない。
和希は自分の考えを振り払うように一歩踏み出すのだった。




