芸能人ですか…?
たどり着いたマンションに和希はあんぐりと口を開けた。
和希の学校にかなり近い高級マンションでそこのセキュリティはどこぞのお偉いさんでも住んでいるのかと疑うほどしっかりしていた。
「いつ来てもすごいわね。」
「あいつが押し付けてきたからな。」
何を思い出しているのか冬牙は険しい顔をしていた。
「今さらどの面下げてこんな事をするんだろうな。」
「……。」
「あのくそ野郎。」
憎しみの籠った表情に和希は何となく彼が誰を憎んでいるのか分かった気がした。
「それでも。」
「煩い。」
「……それでも、貴方の親なのよ。」
「煩い、黙れ。」
夏子を睨む冬牙に和希は動く。
「夏子さんを睨んでも状況は変わりません。」
「お前に何が分かる。」
「分かるはずがありません。」
「……。」
「だって、私は貴方に初めて今日お会いしました。」
「和希ちゃん。」
「えっ。」
夏子が和希の名を呼ぶと冬牙の表情が変わる。
「お前、かずき、って言うのか?」
「……。」
和希は真っ直ぐに向けられる視線に思わず逸らしそうになるが、そうすれば間違いなく彼の印象がどん底まで落ちてしまう気がして堪える。
「はい、私の名前は神崎、和希。」
「……よりによって、お前なんかと…。」
憎々しそうに冬牙が和希を睨む。
和希は小さく息を吸って、表情を引き締めた。
刹那、乾いた音がエントランスホールに響き渡る。
「――っ!」
「いい加減にしてください、それもで、男ですかっ!」
和希はあの短い間に腹を括った。
この冬牙は自分が死んでしまった事で歪んでしまった、それならば、その記憶を受け継いだ自分が何とかして真人間に戻す必要がある気がした。
「てめぇ。」
胸ぐらを掴もうとする冬牙に和希は流れるような動きで、彼を沈める。
「本当に子どもですね。」
「何だと。」
「癇癪を起こして夏子さんを困らせて、そして、自分の思い通りにならないからって暴力ですか?」
「……。」
「夏子さん。」
「何かしら。」
「私引き受けます。」
本当は後戻りが出来ないように夏子が彼女の退路を断っていたのだが、それでも、和希が自分の意思で彼の面倒をみるという事を宣言したかった。
「この甘ちょろい餓鬼を何とかしたいと思うので、頑張ります。」
「和希ちゃん、ありがとう。」




