現実に引き戻されました
「ちょっとあんた聞いているのっ!」
「あっ……。」
ぼんやりと過去の事を思い出していた和希は苦笑を浮かべる。
それを見た美少女はきつい目で和希を睨んでいた。
「本当に腹が立つ……。」
「なぁなぁ、ちょい聞いてもええ?」
「な、何よ、あんたは。」
「うち?うちは和希ちゃんの二番目の親友の西 瑛瑠や、まあ、あんたみたいな子に下の名前は呼ばれとうないけどな。」
「……。」
ニッコリと笑う瑛瑠だがどこか迫力を持っている。
「言っとくけど、和希ちゃん傷つけたらうちも他の子らも黙っておらんから。」
「……ふん、何よ雑魚キャラ……って西瑛瑠ですって?」
「なんや?」
「まさか……いえ、口調が全然違う……いえ、でも、見た目は……。」
ブツブツと呟く少女に和希は彼女の頭は大丈夫なのだろうかと、心配になるけど、他の三人は違っているようだ。
「なに、ぶつくさ言っているのか分からんけど、一つ言わせてや。」
「何を?」
「あんたがゲームだとか言っているちゅー事は……BLってあったんっ!」
「はぁ?」
怪訝な顔をする美少女に対しキラキラと瑛瑠は顔を輝かせる。
「まあ、中二病患者なんてほんまは無視したいところやけど、こないな、面白い事には首突っ込まんとね?」
瑛瑠は後ろにいた彼女と同じように目を輝かせる少年に疑問を投げかけた。
「そうそう、乙女ゲームとかだったらマジでネタの宝庫だからな。」
「そやね、たとえばヒロインを挟んでると思わせてライバル同士が実は……あー、ほんま美味しいっ!」
「そうそう、後はモブの幼馴染系の奴とイケメンも美味いっ!」
「…………。」
この連中は何なのっ!と責めるように和希を睨んでくるが彼女は苦笑を浮かべるしか出来なかった。
何せ和希でさえ、この暴走しだした四人を止める事は至難の業なのだ、だから、完全に暴走する二人を止めるなんて今の和希には出来ないのだ。
「……本当に役に立たないわね。」
「え……と。」
「「かずき」ならば「冬牙」様とヒロインであるわたしと出会わせるただのモブキャラじゃない。」
「……とう…が?」
和希は前世の彼を思い浮かべるが、すぐに誰にも分からない程度で首を振った。
「私は確かに「神崎 和希」だけど、私は前世も何もない、ただの「和希」よ。」
「……いい子ちゃんぶって。」
忌々しそうに睨む少女に和希は真っ直ぐに彼女を見つめる。
「貴女の知っている「かずき」が何の役割を持っているかなんて、私には全く関係ない。」
だって、私はもう「一輝」にはなれない、女である「和希」なのだから……。
とうの昔に過去を振り払った少女は強かった。
「何よ、何よ、あんたなんてただのゲームではホモ一歩手前じゃない、わたしが介入しなきゃ、「冬牙」様と同棲して、その上、互いに依存する関係の癖にっ!」
「……。」
完全にゲームの「かずき」と和希を同一視する彼女に和希は溜息を零す。
しかし、和希はすぐに自称ヒロインに向けた溜息を別の人物たちに向ける事になる。
「来た来たーっ!」
「その話詳しくっ!」
「な、何なのよあんたたちはっ!」
がっしりと少女の腕を掴む男女は鼻息荒く、少女に詰め寄っていた。
「………私…帰ってもいい?」
「和希ちゃん、ストッパー、帰る、駄目。」
「……うーん、あたしと紅葉ちゃんじゃ止められないから、駄目だね。」
「そうですよね……。」
自分の役割を分かっている和希は肩を落としたのだった。




