あれっ?この内容って……
二人の男女にしつこく迫られた自称ヒロインさんは自分が転生したゲームの内容を話し始めた。
簡潔に言えば、ヒロインさんは普通の女子高生で、中間であまりいい成績を取れなくてそこから攻略対象の「神咲 一輝」に自分の知り合いの青年を紹介する。
それがもう一人の攻略対象者の「日向 冬牙」との出会いのイベントらしい。
どうやら他にも攻略キャラがいるのだが、この自称ヒロインは他の人は別に興味がないようなので「冬牙」ルートだけを説明し続ける。
そして、その説明を聞いていた和希は表面では呆れたような顔をしていたが、内心では冷や汗を流していた、何せ、その「冬牙」の生い立ちは前世の一輝の時に知っている冬牙のものと全く同じだったのだ。
何せ、「冬牙」の両親の話、そして、それを近くで見ていた「一輝」が面倒を見ていて、そして、そのまま彼が高校教師になっても同棲するくらい、彼の面倒を見ていたそうだ。
もしも、前世の自分が死ななかったら確実に有り得そうな展開に和希は苦笑いを浮かべる事しか出来ない。
「そして、わたしと「冬牙」様が付き合って、というのがハッピーエンドなのよ。」
「ふーん、べたべたの乙ゲーか。」
どこかつまらなそうな顔をする和希の親友の一人である南部 桂子は肩を竦める。どうやら桂子はこのゲームの内容は好まないようだ。
一方、テンションが高かった二人は何かが高ぶっているのか二人して悶えている。
「………それにしても、本当にあの「一輝」はうざかったわ、「冬牙」様の信頼を得るまでは優しくしないといけないし、かといって好感度を上げすぎたら「冬牙」様がわたしを見てくれないなんて本当にムカつく。」
「あはは……。」
前世の冬牙を思い出し、あれがあのまま育てば何となく先が見えるような気がした。
「君の言葉は腹立つ、和希ちゃんを貶されてるみたいに聞こえるわ。」
「何よ、あんたたちには関わりがないでしょ。」
「関わりがないのならば和希ちゃんに近づかないで。」
「いやよ、少しでも「冬牙」様の出会いイベントを作らないといけないのっ!」
「それは君の都合でしょう。」
「何よ、恋する乙女の邪魔をする気。」
「何が恋する乙女よ、現実が見えてない痛い子は本当に駄目ね。」
「け、桂子ちゃん、その辺で……。」
「………桂子?まさか、あんた「南部桂子」?」
「そうよ、それがどうしたの。」
「……西瑛瑠、南部桂子……雰囲気が全く違うけど、あんたもしかして、東雲 紅葉?」
残念自称ヒロインは先ほどから黙っている紅葉に話しかける。
「………ん。」
「どっちよっ!」
「………ん。」
「ちょっと、そこの腐女子通訳しなさいっ!」
「えっー、っていうか、その言葉しっているちゅーことは。」
「言っておくけど、わたしはノーマルよっ!」
「なーんや、でも、うちは答える気はないからな、なんせ、可愛ええ和希ちゃんを貶す性格ブスの役になってなりとうないわ。」
「何ですってっ!」
「それは言えてるわ。」
「せやろー。」
「……。」
残念自称ヒロインは瑛瑠と桂子を睨んだあと和希を物凄い勢いで睨んできた。
「どうにかしなさいよ、モブで、ブスで、貧乳で今どき真っ黒な髪なんてダサダサなーー。」
「黙って。」
いつの間にその箒を持ってきたのだろうかと、のんきに和希は思いながら残念自称ヒロインに箒の柄を突き付ける紅葉に感嘆の声を上げそうになるが、よくよく紅葉の目を見て冷や汗が流れ始める。
「こ、紅葉ちゃんっ!落ち着いて。」
「和希ちゃん、止める、駄目。」
「いやいやいや、紅葉ちゃん止めて、本当に止めて、ねっ、ねっ、ねっ!」
必死になって紅葉を止める。そして、和希は体力、気力を使い果たして何とか紅葉を止める事に成功するのだった。




