3年目の幕開け
村の特産は異世界です
・3年目の幕開け
はい小谷静香です。ええ、まだ冷凍マグロになっていませんよ。だって、まだ年越しをしていませんからね。なんです、意外だと言ってくれますか。いやですね、私だってそれぐらいのコントロールは出来るんです。
しかし凄かったな、紅白。諸星さんとか立木さんが顔を出したのは説明したよね。ただね、マミちゃんとかBLTが審査員だとは知らなかったのよ。しかもマミちゃんたち、翼人に運ばれてゲートを通っていったのよ。いやぁ盛り上がった盛り上がった。もうね、番宣としては満点だったんじゃないのかな。しかも、年明けから番組の時間枠拡大も告知したのよ。魔王様たちは無理だけど、竜人とかハイエルフとか闇エルフが、各地の施設を訪問するの。しかも同行者が、なんと最上カンナちゃんなのよね。最近顔を出すことが多いと思ったんだけど、これの前振りだったのね。
それで最初の訪問地は、なんと沖縄県の宮古島なのよ。それから沖縄巡りをして、2週間分撮りだめて来るってわけ。ちなみに第1回目のゲストは、ラズライティシア様とインテグラさんのお二方なのよ。もうね、最初から最大戦力をつぎ込んでくれるかな。
まあ、見た目は置いておいて……はっ滝のような冷や汗がっ!
「シズカよ、見た目がどうとか聞こえてきたのだが?」
い、嫌ですね、そ、そんなこと言っていませんよ。上里集落の最大戦力を投入したと言っただけです、はい。ただ可愛い系が居ないなぁって思っただけで。あと翼人も。
「翼人か……確かに、目立つと言う意味なら良いのであろうな。それで可愛い系か……ならばシオンでも連れて行くか」
いいんですか、いえ、何とは言いませんけど。
「良いに決まっておるだろう。シオンはな、われの弟子になったのだからな。しかし、われが魅せられるとは思っておらなんだぞ。しかしなんだあの生物兵器はっ! つくづくキヨヒコが凄いと言うのを思い知らされた気がするぞ」
なぜ、いきなり立木さんが? そうですか、立木さんは普通にエリシオンさんに接しているのですね。その辺りは、年の功と言って良いんじゃありませんか。だったらラズライティシア様も……はっ、滝のような冷や汗がっ!
「シズカよ、言いたいことがあるのならはっきり言って良いのだぞ。われとぬしの間柄だ、エクシブを交えて可愛がってやろうではないか」
ええっと、素敵と言うより怖いと言うのが先に立ってしまうんですけど。それはそれとして、エリシオンさんを連れて行くと後の人がやりにくくなると思うんですよ。
「つまり、われの後だとやりにくくない……むしろやりやすいと言ってくれるのだな?」
そ、そんなこと、思っていても口に出しません。あっ、思っていてもって言っちゃった。
それは良いんですけど、そろそろ今年が終わりますからね。立木さんの所に行った方がよくありませんか? ほら、みんな集合していますよ。
「命拾いをしたな」
なぜ、命拾いと言う話になるんでしょう。それはそれとして、急ぎましょうか。
「お前たち、MHKの行く年来る年も来てるからなっ!」
そうですか、あの番組まで来ているんですね。ひょっとして、『年の初めの』なんとかとかまで来ていませんか? そうですか、そこまでは来ていないのですね。いえ、ちょっと安心できたかなって思っているんです。
はい、カウントダウンですね。サンニイイチっ『明けましておめでとうございますっ!』ドンドンドン。
あっ、中継が入りましたね。それは良いんですけど、どうしてマミちゃんがリポーターをしてくれるの。ねえ、本気で泊まっていく気なのかしら? 違う、転移ゲートを使えば自宅まですぐ。すぐだけど、カンナちゃんと朝まで飲み明かすと言ってくれるのね。
よぉし、よく言った。ところで一升瓶だけどどれが良い? あとはね、酒器は勿論どんぶりで良いんだよね。大丈夫よ、飲み過ぎても冷凍マグロになるだけだから。ここだったら、貞操の心配もいらないと思うしぃ。
「諸星さんに介抱して貰えたら嬉しいなって」
あー諸星さんね。諸星さんはね、明日奈良で記者会見があるのよ。超越の恩恵があるから、二日酔いになることはないと思うけどね。あと、寝不足も心配いらないとは思うのよ。だけど、緊張してるから早くお布団に行くんじゃないのかな。うん、あの人意外に小物だから。
とぉにぃかぁくぅ、さささ飲みましょう! 御衣黄さんが、美味しいお漬物を買ってきてくれたからね。明太子……カンナちゃんが持ってきてくれたの。よしよし、これで一升瓶が何本もいけるわね。いぶりがっことかもあるからね、この辺りは立木さんが色々と揃えてくれてるのよ。愛してるっ……はっ、背中に滝のような汗が。お、おじさんって言ってないんだけど。
さて集落結成から2年目の正月は、いつもの通り大宴会から始まった。ただ俺は、この後があるからお酒は抜きにしている。その辺りは、立木さんたちも同じようだ。大盛り上がりを見せる宴会の端っこで、熱い緑茶でおせち料理を摘まんでいた。
「さあ、お前たち。集落リーダー諸星所長の年頭訓示だぁっ!」
なんか、朽木君が壊れてないか。いや、やけに昨夜からテンションが高いのだが。そうか、昨夜から宴会が継続していたのか。つまり、そこの冷凍マグロは小谷さんと言うことだな。
それでマミちゃんとカンナちゃんは……まだ飲んでるよ。ちゃんと昨夜は布団で寝たのかな?
「布団……布団ってなんですかぁ?」
いや、聞いた俺が悪かった。まあ正月ぐらい、羽目を外しても問題ないんだろうな。ところでBLTの二人は? 正月は稼ぎ時、だから仕事に戻っていった。ああ、朝からお笑い芸人が沢山出てるからな。それでBLTの二人はどこに? 仙台……ここから仙台……まあ地元なんだから、帰ってもおかしくないとは思うぞ。ただ、思いっきり遠いよな、ここだと。
そうか、シャルロットが運んでくれたのか。うん、ご苦労だったなシャルロット。
それはそうと、年頭訓示だったな。こう見えても、市会議員は挨拶が必須項目なんだよ。どんなときも安心挨拶集にも、年頭挨拶ってのが載っていてだな。
「と思ったが、盛り下がるので年頭訓示は無しだぁっ!」
おい、こう言った時ぐらいちゃんとやろうよ。年頭の挨拶に、盛り上がりを求めちゃ駄目だろう。去年も盛り下がった……白船君、何のことを言ってくれてるのかな?
それは良いんだけど、そろそろ奈良に行く準備をしないとな。うん、移動だけなら時間は掛からないよ。だけど、記者会見に出るんだよな。だったら、びしっとスーツで決めていく必要があると思うんだ。髪型だって、びっちりと決めておくのが必要だろう。だれだ、やるだけ無駄って言ったのはっ!
無駄かもしれないが、努力をしたと言う実績は必要なんだよ。なんです慶子さん、ああ、流石に緊張するんですね。スーツなんて着るのは、高校の卒業式以来。ええっと、ん十年昔の話じゃないんですよね。
「生徒の卒業式のことを言っているんですけど……拗ねて良いですか?」
ええっと、すみません。本当にすみません。確かに、公立のインターナショナルスクールで先生をされていたんでしたね。はい、そのプロフィールは教えて貰っていました。ああっ、俺としたことが、最大の失態じゃないか。
「諸星さん、騒げば騒ぐほど傷口が開くのを理解されておいでですか?」
そうですか、そうですね。いえ、わざとじゃないんですよ。ちょっと、自分の失敗が情けなかっただけで。いえ、これ以上言わないのでご主人に言いつけるのは勘弁してください。
ところで立木さん……じゃなくて陽佳さんはどんな格好で? ブラウスにセーター……ちょっと良いのが手配してある。だとしたら、エリシオンさんは? そうですか、同じくブラウスとセーターなんですね。おそろいだけど色違い。目的が目的だから、落ち着いた感じでまとめてあるのですね。あと、足下が寒いのでスラックス着用なんですか……いえ、ミニのスカートが良いなんて言いませんよ。はい、思っていても言いませんから。
「マスコミ用に、ミニスカートにした方が良いのかしら? でも、生足は流石に寒い……シオンさんに魔法を使って貰えばいいのかな?」
後はですね、スカートの中が見えなくなる魔法と言うのも必要だと思います。ええ、ミニスカートだとちょっとした弾みでですね……いえ、アクシデントを期待しているわけじゃありませんよ。有象無象に見せるのは勿体ないと思っていますから。
「もの凄く説得力のある言い訳ですね。でも、陽佳ちゃんに手を出したら……手を出しても困らないのかしら? 年齢的にはバランスも取れているし」
もしもし、俺にはセレスと言う奧さんが居るんですからね。はい、彼女は戸籍上も俺の奧さんですから。
それは良いのですけど、旦那さんの方の準備は……そうか、今日は居酒屋でくだを巻いていれば良いんでしたね。ところで、誰が実況中継してくれるんですか? なるほど、いつものアナウンサーの方ですか。馴れ合いを疑われても仕方がない気がしてきましたよ。ゲスト、ゲストもいるんですか? 太田類さん……あの居酒屋番組で有名な方ですか。なるほど、あちらから売り込みがあったと言うことなんですね。
そんなこんなで準備をして、俺たち全員が奈良県庁に移動。そうか、奈良県庁ってのは東大寺の近くにあるんだな。しかも、興福寺も近くにあるんだ。なるほどなるほど、観光の中心にあるってことか。
それで、ここから先は立木さんたちは別行動。例のおでん屋さんのご厚意で、元日から貸し切り営業をしてくれたんだな。それで、最終的な出席者は? いつもの教授連プラス名古屋組、オルティアさん、ラズライティシア様、インテグラ、フローリアンさん、御衣黄さんですか。都合11人にアナウンサーさん……確か、谷上さんだったかな。あとは、太田類さんで13人ね。なんか、俺の混じる余裕がありそうな気がするんだよな。
緞帳……緞帳なんて使うんだ。その緞帳が下りた状態で、俺たちがひな壇に並ぶことになった。中心に奈良県知事と奈良市長が並んで、その隣に異世界文化交流会館の館長をして貰う藤原教授。そして俺と慶子さんが並んで、その隣に陽佳さんとエリシオンさんが並ぶことになった。
緊張は、多少しているがまだましかな。うん、俺も随分と場馴れしたと思うよ。それに、官邸での記者会見と比べたらプレッシャーも少ないしね。ただまあ、慶子さんと陽佳さんは緊張を隠せていないね。その辺りは、まあ経験の問題だと思えば良いんだろうな。
さて、そろそろ時間だな。司会は……副知事さんがしてくれるんだね。うん、ちょっとだけ緊張してきたかな。なんか、こう言った仰々しいのは初めてなのに気づいたんだ。
「さて、本日はお忙しい中、しかも元日のお昼にお集まりいただきありがとうございます」
そうなんだよなぁ、今は1月1日の午後1時だもん。普通の人たちだったら、家で炬燵に入ってお昼ご飯を食べて……ひょっとして遅い朝食かな。とにかく、のんびりとしているところだと思うんだよ。
「この奈良の地に、新しい文化の交流地点が開かれるのを光栄に思います。異世界文化との交流は、現代のシルクロードと言って良いかと思います。かつてのオリエント文明、そして今は異世界文明。その交わる地として、ここ奈良が新しい役割を担うことになったのですっ!」
おおっ、知事さん力が入っているな。まあ、京都に比べて奈良って地味な存在だもんな。これで、奈良が世界的注目を集めることになるんだから。知事として力が入るのも理解出来るよ。
「異世界文化交流会館は、現在仮住まいとして奈良県庁の一角に場を設けています。今後用地の選定が終わり次第、拠点となる建屋を用意する予定です。そして館長として、今回ご尽力いただいた藤原教授に就任していただくこととなりました」
「ご紹介に与りました藤原と申します。このお話を伺ったとき、私などが勤めて良いのかと正直不安になりました。ただIMO研究所の諸星所長、立木副所長から背中を押されてしまいました。微力ながら、新たな文化交流に尽力する覚悟です」
「ではIMO研究所所長、諸星様からお言葉をお願いいたします」
よぉし、いよいよ俺の出番だな。うん、ちゃんとテレビカメラも回っているな。
「ごぉ……失礼」
ああっ、声が裏返っちゃったよ。だめだ、こんな小物じゃ駄目だろう。超越超越、こんなことは大したことはない。
「ご紹介に与りました諸星孝明と申します。皆様ご存じのIMO研究所で所長を拝命しています」
うん、出だしはこんなものだろう。後は、異世界との交流、なぜ奈良だったのか……実は、これが一番難しかったりするのだが。立木さんは、藤原教授を理由にすればいいと言ってくれたんだ。確かに藤原教授は、文系として最初に飛び込んできてくれたんだよな。
ただな、立木さんが敢えて言わなかったこと。俺にはそれもわかっているんだ。
ここを選んだのは立木さん。そして、その理由になったのは藤原教授……当時の准教授でした。理系方面で注目を集めていた上里集落に、藤原教授は文化的な意味を求めて訪問してくれました。異世界でくくるのは範囲が広すぎるのはわかっているが、その異世界を理解するためには文化的なアプローチが必要と言うことだ。
そしてそのアプローチを、藤原教授が最初にしてくれた。そして異なる文化と交流するのに、奈良と言う地が適切と言うのを俺はここに来て理解することが出来た。それが、なぜと言う問いへの答えになっていると思う。そして我々の思いに対して、藤原先生の大学、そして奈良県が応えてくれた。それがすべてだと思っている。
「奈良と言う土地、そして人を評価していただいたと思って良いのですか?}
簡単に言えばそう言うことになる。そして大学として、帰還者を受け入れてくれると言う決定をしてくれた。そして帰還者だけでなく、片道……つまり、あちらから来た者の受け入れも表明してくれたんだ。IMO研究所、上里集落代表として、今後とも良好な関係を維持していきたいと思っている。
「今お話に出た帰還者ですが、十河……失礼、立木陽佳さんと言うことですか?」
その通りと言うことになる。彼女が異世界で経験したことを伝えることも、藤原教授のお手伝いになると思っている。
「そして、異世界から来られた方、こちらはエリシオンさんと受け取れば宜しいのでしょうか?」
まさにその通りと言うことになる。1千年以上生きてきた彼女が、今まで何を見てきたのか。それを伝えることも、陽佳さんの役割同様重要なことだと考えている。そしてもう一つ重要だと思っているのは、彼女にこの世界のこと、そして普通と言われる生活を知って貰うことだ。気の遠くなるような時間、彼女は戦いと殺戮に明け暮れていた。恐らく心は悲鳴を上げていたのだろう。それすらもわからなくなるほど、彼女の心は傷つきすぎている。奈良の地で学ぶことで、その心を癒やしてほしいとも考えている。
と言うのが俺の考えなのだが、立木さんの思いとはさほど違っていないと思う。その考え方が、上里集落を作るときに考えたことだからだ。どうも最近忘れていた気がしてならなかったのだが、今回それを思い出させて貰ったと思う。
「立木陽佳さんに伺います。4月から大学生になることへの抱負をお願いします」
「お父さんからは、頑張りますでいいと言われたのですが……今までやりたくても出来なかったこと。具体的にと言うと難しいのですが、普通と言われる生活を送りたいと思っています。学問的なことは……苦手と言っていられないことはよくわかりました。と、お答えさせていただきます」
「ありがとうございます。奈良の地が、陽佳さんにとって良き場所となることをお祈りしております」
うん、殺伐としていないインタビューって良いなぁ。それで、つぎはエリシオンさんだな。
「次にエリシオンさんに伺います。こちらの大学で学ばれることに対して、豊富のようなものはあるのでしょうか?」
「立木から、見聞を広めろと言われた。ここで学ぶ……何を学ぶのかもよくわかっていない。一つ一つが、私には今まで考えたこともないことだった。だから、だからでもないのだけど、色々なものを知りたいと思っている。予めお断りしておくけど、京都の研究を手伝うようにも言われている」
そうそう、エリシオンさんには色々と手伝って貰うことがあるんだよな。魔法と言う意味なら、ラズライティシア様が居てくれるんだけどね。だけど、一人より二人の方が出来ることが多くなるんだ。その意味で言えば、エリシオンさんが加わってくれたことはありがたかったんだ。
「立木慶子さんに伺います。お嬢様が奈良の大学に通われることをどのようにお考えですか? 慶子さんの出身校だと伺っております」
そう言えばそうだったな。奈良を選んだことにも……違うのか、立木さんが奈良に出没した理由に関係していたんだな。お陰でオルティアさんと言う余人に代えがたい人も加わってくれたんだ。
「はい、奈良は私が6年過ごした地です。ですので、とても懐かしい……来るだけで興奮してしまう場所でもあります。そこで私たちの娘二人が学べることを夫婦で喜んでいます。ただ、こうして注目されるのは、どこかくすぐったいものがあると思っています」
意外と言って良いのかな。とても落ち着いて対応してくれてるよ。そのあたり、流石は立木さんの奧さんと言って良いんだろうな。
「陽佳さんとエリシオンさんですが、こちらのお住まいを探されたと伺っています。空間転移でしたか、それが出来ることを考えれば、上里集落から通うこともできたのではないでしょうか?」
「こちらに居を構えるのは、夫の方針……だけではありませんね。私も、その方が良いと考えたからです。奈良の地に住み、その空気を吸う。それだけでも、上里集落にいては出来ない経験だと考えました。そして、こうして交流事業が行われることになったんです。その意味を考えたら、二人が奈良にいることに大きな意味があると思うんです。ちなみにこれは、夫の考えでもあるんです」
「仰るとおり、お二人がこちらに住まわれることは、大きな意味があると思います」
「私も、時々顔を出そうと思っているんです。陽佳ちゃんには悪いのですけど、エリシオンさんと二人だけだと……色々と怖いかなと思ったからです。何がどう怖いのかは、皆様のご想像にお任せしたいと思います」
一人住まい……まあ、今回は二人なんだが。そこで何が起こるのか……か。うん、部屋が腐海に沈まないことを願うことにしよう。腐海に沈まなくても、埃でコーティングされることは十分に有り得るんだよな。ああっ、陽佳さんが頬を膨らませているよ。どうやら、心当たりがあるようだな。
「料理、掃除ともに頑張りたいと思います」
「部屋を綺麗にする魔法ならある。あと、お洋服を綺麗にする魔法もある。ただ、美味しい料理をする魔法はない」
「シオンさん。埃を吹き飛ばすのを、部屋を綺麗にするとは言いませんからね」
「そう、なの!」
そうか、埃を吹き飛ばしたのか。何と一緒に吹き飛ばしたのかな?
「個人的な話になってしまいました。では、私の方から今後の方針をお伝えしたいと思います」
うん、交流会館の館長様だからな。これからどう交流していくのか、それを詳らかにするのも藤原教授の仕事なんだよ。勿論、可能な限り支援をする覚悟はあるんだぞ。
「交流と大上段に構えましたが、最初にするのは調査だと思っています。京都の方と協力して、ブーランジェリー王国の調査を行いたいと思っています。比較文化論的なことをして、私たちの文化との共通点、相違点を明らかにして、なぜ違いが生じているのか……違いますね、なぜ共通点が生まれたのかを研究していきたいと思っています。そして先方と協力して、同じもの、違うものをこちらで展示したいと思っています。そして叶うのなら、人も一緒に来て貰いたいと思っています」
交流と言うのなら、一方的なものは良くないよな。だから、こちらに来て貰うと言うのは納得できる話だと思う。それからだな、あちらにも学者さんはいるんだよ。そう言った人とか、人だけは良い前ポンパドール子爵様と言うのも居るんだ。
セリカの父親だから、頭は悪くないと思うんだよ。ただ、押しには思いっきり弱いんだけどな。
「もう一つの異世界……確か、シャトレーゼ王国でしたか。そちらも、調査に行かれる予定はあるのですか?」
「勿論と言うのが答えになります。シャトレーゼ王国王女様がこちらに嫁がれておいでですので、協力をお願いしたいと思っています」
「その、王女様が嫁がれていると聞こえたのですが……やはり、諸星さんのところと言うことでしょうか?」
「その質問は、今更だと思いますよ」
「はあ、今更……ですか」
なぜ、そこで呆れてくれるんだ。いや、呆れたくなる気持ちも理解出来るけどさ。だけど、本人を前にして呆れてほしくないんだよ。俺だって、傷つく繊細な神経を持っているんだからな。いや、色々と超越してるから、多分気のせいで終わってしまうと思うけど。
「できれば、ゼミの学生を連れて訪問したいと思っているんですっ!」
これで、藤原教授のゼミの人気も沸騰するな。それはそうとして、誰か就職してきてくれないかな。なんかもうね、色々と人手不足なんだよ。だったら求人しろ……ええっと、これは立木さんに任せれば良いのだろうか。だけど、下手に求人を出したら収拾が付かなくなりそうな気がするな。だったら、コネを頼るしかないのか。
とりあえずだ、特に揉めることもなく記者会見は終了。ところで慶子さんたちは、これから? そうですか、のんべの輪には交じりたくないと言うのですね。ええ、とってもよくわかります。だからのんべの輪には、俺だけ加われば良いと……なんです藤原先生?
「これから懇親会を行いますので、是非参加願えればと言うことです」
懇親会……ですか。いえ、喜んでとお答えさせていただきます。こう言ったお付き合いも、代表としては必要なことですからね。
狭い……と言っちゃあいけないのでしょうね。いえ、いつものお店のことです。本当は、座敷があったりするのですけど、映えで良いのですか。映えを考えたら、この字のカウンターの方が良いなぁとの指定があったりしたんですよ。
まあ、カウンター越しでも顔を見て話せるだけ良いと思いますけどね。それに年寄りには、胡座を掻くのも辛いかなと言う気がするんです。
ところで太田さんでしたか、ようこそ年寄りのんべの集いに。そんなことはない、綺麗どころが揃っていると仰ってくれますか。ちなみに綺麗どころなのですが、太田さんより年下は二人なんですよ。ええ、オルティアさんとかすみちゃん……御衣黄さんの二人です。
後は……シアとアンはどちらが年上なんですかね。一番若いインテグラでも、室町時代が始まった頃の生まれなんです。まあ、そう見えないのは確かなんですけどね。と言うことなので、後は太田さんと谷上さんに進行をお任せします。
と言うことで引き継いだ谷上です。はい、MHK東京で報道局のアナウンサーなどしていたりします。色々と立木さんに鍛えられた一人だと思っていただければ幸いです。固い……まあ、年の初めですからね。それにまだアルコールが入っていませんし。だから、最初ぐらいは真面目に行っても良いのかなと。
しかしなんとまあ、絵面が凄いと思いますよ。東京の方から大芝教授と宇梶教授、名古屋からは香川教授に川端教授、そして京都からは本山名誉教授ですからね。こんなメンバーが揃うのは、文化勲章の授与式ぐらいじゃありませんかね。
しかも英国から、オルティア女史まで参加されているんです。もうですね、ノーベル賞の記念式典かと思うぐらいの陣容なんですよ。そして今や若手注目株の御衣黄女子ですよ。これが立木さんの人脈と言うのですから、驚くばかりと言う所です。バグってる、神ってると言われるのも、宜なるかなと思いますよ。
そう言うことでですね、年齢的には下から2番目の私、谷上が司会をさせていただきます。諸先輩方を差し置いてなんですが、ここは新しい年に乾杯とさせていただこうかと思います。では、乾杯のご唱和願います。勿論、ご主人も参加していただいて結構です……と言いますか、参加してくださいと言わせていただきます。では、
乾杯!
最初にビールと言うのは、日本の文化と言って良いと思いますよ。それで、おつまみは……そうですか、年の初めなのでおせちが用意してあるのですね。黒豆タツクリ、昆布巻き、数の子。良いですね、日本の正月は。と言うことなので、私に日本酒をお願いいたします。そうですね、善童鬼をお願いします。
おや、オルティアさんは風の森ですか。なるほど、思い出のお酒なのですね。宜しければ、その辺りをもう少し詳しく。
「タチキニ、ハジメテゴチソウニナッタオサケ」
なるほど、お二人の馴れ初めのお酒と言うのですね。それから立木さん、抗議は受け付けませんので悪しからず。ええ、馴れ初めで言葉は間違っていませんよ。日本語を操るMHKのアナウンサーが言うのですから、何一つとして間違っていないことを保証いたします。
それから大芝教授、宇梶教授、立木さんとは温泉で知り合ったと伺っています。それは、裸の付き合いと言う奴ですか?
「食堂で、隣の酔っ払いに絡まれたのがきっかけなのだが?」
立木さん、繰り返しますが抗議は受け付けません。それで、絡んできた酔っ払いとどうなったのですか?
「難しい話をしてやったら、退散してくれると思ったんだよ。だが、酔っ払い相手に常識が通用しなかった。難しい話は止めて、俺の酒が飲めないのかと言われたんだ。いい歳して、大人しく飲んでいるんじゃないとな」
そうですか、はい、抗議は受け付けません。ただ、良い歳をして大人しく飲むな……ですか。普通、歳をとったら飲み方も大人しくなるものだと思いますよ。ええ、普通はですけど。
それで、その先は?
「なぜかでたらめな議論を続けながら飲み続けたな。ビールは……1ケース以上飲んだ気がする。後は、一升瓶も転がっていたと思う。翌日宿に迷惑を掛けたことを謝罪したのだが、結局出禁を食らってしまった。ただなぁ、出禁の理由はそこの女将さんが……いや、多分勘違いだろう」
その勘違いの部分を詳しく……いえ、勘違いですよね、勘違い。ご主人、すみませんが冷たいおしぼりをいただけますか。いやあ、お店の中は暑いですね。
ところで本山名誉教授は……似たようなものですか。ただ、行った温泉が違っているだけ。なるほど、奈良の温泉でなぜか意気投合したと言うのですね。ちなみにですが、そちらは出禁にならなかったのですか?
「最後は、宿のご主人と一緒に飲んでいた記憶がある」
そうですか、そちらはしっかりと巻き込んだと言うことですね。ご主人すみません、私にも風の森をお願いします。
それから太田さん、結構大人しく飲まれるのですね? 酒も美味しいし、肴も極上……こんな空気の中酒を飲めることが幸せと言ってくださいますか。確か太田さんは、文化勲章の候補だったと思いますが? そうですか、それでもこんなに楽しい雰囲気の中でお酒を飲むことは出来ないと仰るのですね。
ええわかります。私も、色々と仕返しが出来て楽しいと思っていますので。それからご主人、風の森のお代わりをお願いします。
それで香川教授と川端教授、大学時代の立木さんはどのような方でしたか? そうですか、モテないくせに女好きだった。いえ、モテるのと女好きは背反するものではないと思いますよ。それに、女性が嫌いな男はいないと断言させていただきます。LGBTQですか、お酒を飲んでいるときぐらいは忘れることにしましょう。ご主人、篠峰をお願いします。
それで、他に情報は? 川端教授は、研究室が離れていたのであまり付き合いがない……訳でもないと仰りますか。結構いじってくれた……今とあまり変わらないと言うのですね。それで香川教授は、隣の研究室……煩くて仕方が無かった。立木さんがと言うことではなくて、研究室自体がですか。餃子が美味しそうだった……なんですか、それ? そうですか、大学の研究室で餃子パーティをしていたのですね。あっ、貴仙寿を常温でお願いします。それから、チェイサー代わりにレモンサワーを一つ。
それでは皆さんお待ちかねのラズライティシア様ですね。こちらの世界に来て、どのようなことを感じられましたか? なるほど、想像もしたことのない世界だと仰るのですね。それで、とても長い時間生きてこられたと伺っています。神話の時代から……と伺っていますが、それはどのようなものなのでしょうか。いえ、全く想像が付かなくて、ですね。
なるほど、女神とかが地上にいたと言うのですね。それで、その地上に居た女神様はどうなったのですか? いつの間にか消えていた、いつの間にか、ですか。そんなことで良いのかと言ってはいけないのでしょうか? 別に構わないが、自分のせいではないと仰るのですね。
それで質問なのですが……今までのも質問だろう、ですか。それはそうなのですけど、色々と伺いたいことがあってですね。その、神話の時代から今までで、どれだけ世界が変わったのでしょうか。いえ、こちらの世界で言うとですね、たった100年程度前でも、今とは全然違った世界だったのですよ。
「女神以外は大した違いは無かったな」
女神以外の違いが無い……つまり、文明、文明で良いのですよね。文明が発達しなかったと言うことですか。それは驚きですね、と言うことなのでご主人、善童鬼をお願いします。その辺り、是非とも学者さんの話を伺いたいところですね。
では次はインテグラさんお願いします。そう構えなくても大丈夫ですよ。ただインテグラさんには、色々と伺いたいことがありまして、ですね。
なぜ地球……この星なのですが、なぜこの星に来たのかと言うことです。はい、キャロさんが落ちたと言うのは伺っています。ですが、見捨てると言う選択肢も合ったかと思います。
「種を残すために逃げ出した私たちに残された、最後の子供だからと言うのが理由です。どんなことがあっても、キャロだけは守らなければならなかった。年齢的に、子供を産めるのはもう一人のコローラルぐらいなんです。だから、最悪の場合二人だけでも生き残って貰う必要がありました」
なるほど、非常に重大な決意の元行われた逃避行と言うことなのですね。今回別の世界の始祖竜ですか、その方たちと巡り会われたかと思います。私たちから見たら同族に思えるのですが、インテグラさんにとって始祖竜の一族はどのような存在になるのでしょうか? あっ、その前にご主人、風の森をお願いします。いやぁ、お酒が美味しくて良いですね。
なるほど、見た目は似ているが別の種だと仰るのですね。そうですか、一番の違いは大きさだと言うのですね。始祖竜の大きさは、こちらで言う40mぐらい。確かインテグラさんは、100mを超えていたのでしたね。でしたら、別の種と言うのも理解出来ますね。
「それでも、可能性の一つと言うのは間違っていないと思います。私たちに生まれなかった子供が、始祖竜の皆さんには生まれていますからね」
可能性ですか。確かに、重い問題だと思います。ところで、竜人の方たちは他の種族と交配したことはあるのでしょうか? そうですか、翼人と一緒にしてくれるなと仰るのですね。ところで本山先生、現時点でわかっている遺伝子の違いはあるのでしょうか?
「なぜ立木ではなく私に振ってくれるのか……と取りあえず文句を言わせて貰う。文句を言った上で答えるのなら、特異な器官……御衣黄女子がMS器官と呼んだ器官を除けば、私たちと差異が無いと言うのが答えになる」
つまり、こちらの人間との間でも子作りが可能と考えて良いのですか? それから立木さん、私から視線を逸らさないように。ええ、酔っ払っていますよ。お酒を飲んでいるから、当たり前だと思いますけどね。
そう言うことなので、風の森のお代わりをお願いします。いいですよね、普段と攻守が逆転すると言うのは。
ところでラズライティシア様に伺います。ラズライティシア様から見て、インテグラさんとエリシオンさんの関係はうまく行っていますか?
「それは、なかなか難しい問題だと言えるな。何しろシオンは、とても多くの竜人を殺しておるのだ。殺された中には、インテグラの夫もおったのだ。夫の敵相手に、冷静でいろと言うのは流石に難しいだろう。まあ、キヨヒコが頑張っておるので、表だった対立が起きることはないと思うぞ。加えて言うと、シオンには悪意と言うものが存在しない。僅かに残っておった義務感のようなものは、キヨヒコの努力で消し去ることが出きておる」
なるほど、立木さんが『頑張った』のですね。ですから立木さん、今日は意見を求めていません。それでも立木さんに申し上げるとするなら、ラズライティシア様の言葉で更に敵を増やしたと言うことです。
「キヨヒコの敵を増やした理由……シオンなのだがな。どうやら、一人で寝るのが怖いらしい。だから、人のベッドに潜り込んでくるのだが……」
おや、そこでインテグラさんの顔を見ましたね。つまり、インテグラさんのベッドにも潜り込んできたと言うことですか。それでそれで、一体何が起こったのですか? いえ、こんな面白い話は酒無しで聞けないでしょう。そう言うことなので、ご主人篠峰をお願いします。
「インテグラが起きてこないので見に行ったのだが……シオンに抱きつかれて硬直しておったな。どうやら、一睡も出来なかったようだ」
なるほどなるほど、一睡も出来なかったのですか。それはなんです、やはり恐怖が理由なのですか?
「それ以外に理由があると思う?」
ですよねぇ。何しろ、襲撃を受けて殺され掛けたのですからね。なるほどなるほど、わかります、わかりますよぉ……
太田類と申します。いえ、谷上氏に圧倒されていたのですが。圧倒されていたのですが、潰れて、ではないですね。ラズライティシア様が眠りの魔法を掛けてくださいました。いやぁ、流石にあれは飲み過ぎだと思いますよ。完全に絡み酒になっていましたね……特に立木氏への絡み酒ですか。どうやら、かなりストレスが溜まっていたようですね。
と言うことで、ここから先は私太田類が後を引き取ります。と言ってもですね、学術的なお話は新年早々宜しくないでしょう。しかもここは、酔っぱらいの集まりですからね。酔っぱらいらしく、お酒と肴の話と参りましょうか。
では、静かに飲まれていたオルティアさんに伺います。どうして、このお店に来ることになったのですか?
「ニホンニキテ、イセカイノクウキニフレタカッタ。タダ、カミサトシュウラクニハハイレナイノハワカッテイタ。ダカラ、ガイドマップニノッテイタナラニクルコトニシタ。キョウトニシナカッタノハ、カミノオミチビキダッタトオモウ。コノオミセハ、ガイドマップノオススメ。ニホンラシイフゼイヲアジワウコトガデキルシ、ドウホウモタクサンキテイルトショウカイサレテイタ」
つまり、立木さんとの出会いは全くの偶然だったと仰るのですね。なるほど、神のお導き……ですか。ちなみに、その神様はキリスト様のことを仰っていますか?
「ドノカミサマカハワカラナイ。ソレデモイエルコトハ、ワタシハタチキヲメザシテイナカッタ。ナラカンコウヲシテ、ナットクガイッタラカエルツモリデイタ」
それなのに、立木さんに出会って今はIMO研究所に参加されておいでだ。どの神様かはわかりませんが、オルティアさんの願いを叶えてくれたわけですね。
「IMOラボニカンケイシテ、カミニカンスルカンガエカタガカワッタ。コノセカイニハ、シンコウジョウノカミト、カンリジョウノカミガイルノヲリカイシタ。チナミニ、カミトヨバレルモノノイデンシモワタシタチトオナジ」
ほほう、なかなか難しい話になっていますね。ただ、私が引き取った以上、難しい話には持っていきません。オルティアさん、日本に来て美味しいと思われた食べ物、飲み物はどう言ったものがありますか?
「ニホンシュノオイシサヲリカイシタ。トクニ、ウミノモノトノアイショウノヨサヲカンジテイル。センジツタベタカニハオイシカッタ。ロバタデイイノカ、ロバタデタベタウニトノアイショウモヨカッタ。タチキトイッショニイルト、オイシイモノヲタクサンアジワウコトガデキル。タダ、オレイガシタイノニウケトッテモラエテイナイ」
なるほど、いえ、突っ込みませんよ。これ以上深みにはまると、色々と危ないのはわかっていますからね。だから、安全そうなラズライティシア様に振ることにします。ええ、可能な限り危ない話を避けていただけるとありがたいですね。
「確かに、危ない話ばかりだな。それはそれとして、キヨヒコには様々な美味を紹介して貰っておるぞ。先日の高級旅館も良かったが、素朴な山の宿も負けず劣らずうまいものがあった。そこの教授連と出会った宿も、肉や魚も極上だったと答えておく。次は、どこに連れて行ってくれるのか楽しみにしておるのだ」
「それは、私も同じね。伊豆で良かったかしら、そこで食べたお魚もとても美味しかったわ」
日本の海の幸は絶品ですからね。勿論、山の幸が絶品と言うのは仰るとおりです。そして我が故郷長野の山の幸は、どれをとっても絶品と言うのを強調させていただきます。
「なるほど、ぬしは長野出身なのか。では、ここはと言うお勧めを教えて貰えるか?」
お勧め、ですか。私のお勧めは松本近辺なのですが、立木さんのお勧めと被っていると思いますよ。優しいお湯と言う意味では、別所温泉もお勧めなのですけどね。別所温泉は、秋口に行って松茸を食べるのがお勧めです。それ以外だと、今の季節野沢辺りはかなり雪が深くなっていて面白いと思いますよ。勿論、それ以外にも良い温泉は沢山あるんですよ。そしてですね、私の立場では『ここ』と言うのは言いにくくなっています。
「そうか、ぬしの立場上と言ってくれるのだな。ならば、後でこっそりと耳打ちをしてくれれば良い。まあ、キヨヒコに伝えるのもありと言えばありなのだがな」
では、後ほどこっそりと。それから、御衣黄さん。とても大人しく、しっとりと飲まれておいでですね。はい、飲んでいる姿も美しいと思いますよ。それからフローリアンさん、フローリアンさんは女神様と伺っています。その女神様から見て、こちらのお酒や食べ物をどう思われますか?
「すべて、絶品だと思っています。もう、何を食べても美味しくてっ!」
そ、そうですか、評価いただきありがとうございます。ところで立木さん、御衣黄さんとフローリアンさんなのですが、いつもこのように落ち着かれておいでなのですか?
「どう答えても差し障りのある質問だと思いますよ」
そうですか、差し障りがあると仰ってくれますか。いやぁお酒が美味しいですね。ご主人、善童鬼をジョッキでください。いえ、なにか飲まないとやっていられない気持ちになってきたんですよ。正確に言うとですね、酒に逃げたいと言えば良いのか。ええ、谷川さんが壊れたのも、これが理由なのかなと。
奈良での文化交流の話が出ていない……ですか。居酒屋ライターの私に期待する話じゃありませんよね。ですので、私はこれから潰れることにします。はい、後始末は立木さん。宜しくお願いしますよ。
奈良って、地味ですよね。いえ、好きですよ。最近は京都より行っていますから。




