異世界転職
村の特産は異世界です
・異世界転職
相手が公爵家令嬢と言うことで、世話係をブーランジェリー王国から呼び寄せることにした。うん、コロナの御世話で、何人か入れ替わりで来ていたからね。こちらのことを知ってる側仕えが、それなりの数がいたんだ。
ちなみになぜ入れ替わりにしたのかと言うと、希望者が捌ききれなかったのがその理由。部屋が狭いとかはあるんだけど、設備自体の快適さが補ってあまりがあるそうなんだ。しかも食べる物が美味しいとか、いつでも温泉に入れるとか、娯楽が沢山あるとか、こっちの方が暮らしやすいそうなんだ。
ただ全員を連れて来るわけにはいかないので、時々入れ替えることで不満を抑えたと言う訳。それが今回役に立って、こちらの事情を知ってる側仕えを世話係として連れて来ることにしたんだよ。
それで呼び寄せられたのは、カリヤとジェメラ……ね。うん、適任だと思うよ。特にカリヤなんて、結構押しが強かったりするからね。側仕えとしての経験も豊富だし。ジェメラは……力強くて良いんじゃないのかな。
その二人が慶子さんの指示で、クレスタさんの寝ている部屋に突入……なじぇ突入? 結果的に、ジェメラが制圧したみたいだね。つまり、制圧が必要なぐらい抵抗してくれたわけだね。その意味で言えば、人選が正しかったと言うことか。
制圧後は、取りあえず部屋のお風呂で全身を洗い上げ、全身をトリートメントしてから用意した洋服にお着替えをしたようだよ。そこまで来たら、抵抗をしなくなったみたいだね。大人しく、カリヤとジェメラに料理をされたようだよ。
ちなみに用意した服は、ちょっとシックなワンピースなのだそうだ。もう11月も終わりだからね、集落の周りの木々は、魔王樹を除いて落葉しているんだ。ちなみに魔王樹なんだけど、まだまだ葉っぱが青々としていたよ。
季節に合わせた茶系のワンピースに身を包み、髪の毛をアップにしたクレスタさん……ちょっと見蕩れたと言うのは言っては駄目かな。彼女、王妃様になる予定だったんだよな。だったら俺が奥さんに迎えても……いやセレス、今のは冗談で言ったんだよ。だから本気にしないように。
ところでクレスタさん、お腹は空いていますか? そうか、思いっきり頷いてくれたか。
流石に宴会場……もとい、大食堂と言う訳にはいかないので。立木さん家のレストラン……と言う名の食堂で食事を振る舞うことにした。かなりの量を用意したんだけど、その大量の料理をとても上品に、そして高速に胃袋に収めてくれたよ。ビデオの早回し……それを思い出したと言ってはいけないかな。倍速とまでは言わないけど、1.5倍ぐらいの速度は出ていたと思うんだ。
それで落ち着いたところで、再度カリアとジェメラが彼女を部屋に連れて戻ったんだ。どうしてかなと思ったのだけど、理由を聞いて納得が出来たよ。どう言うことかと言うと、ここで生活するための作法……作法で良いのかな。それを一つ一つ教えて行ったんだ。例えばトイレの入り方とか、シャワー洗浄の使い方も覚える必要があるんだ。なになに、こんな上質な紙を使って良いのかって? 確かに、始まりの世界でも、こんなに綺麗な紙を使っていなかったね。と言うより、紙なんか使っていなかったと思うんだ。そう、トイレの横に水桶が置かれていたんだよ。
こちらの世界で初めてのお風呂は、部屋に備え付けのお風呂だったんだけど。ここで暮らしていくのなら、大浴場の使い方も覚える必要があるんだ。それに加えて、大浴場でのマナーも覚える必要があるし、身分を含めてルールを覚える必要があるんだ。その一つ一つを、カリアとジェメラが叩き込んでいったとさ。
その一つ一つを、クレスタさんはとても真剣に覚えてくれたようだよ。そして最後に、カリアがとても重要なことだと人間関係……序列と言った方が良いのかな。それを一つ一つ、具体例を挙げて説明したんだよ。間違いなく、こちらで暮らして行くのに重要なことだと思うんだよ。
トップ、集落のトップは俺に決まってるだろう? だったら立木さんは? バカ殿を支える有能な家老……言いたいことはわかるけど、流石にバカ殿はないと思うんだよ。
「私を保護していただきありがとうございます」
一通り教え込まれたところで、ようやく俺にご挨拶。ちなみに立木さんは、京都に出張中。なんか立木さん、落ち着かないと言って良いかな。それとも、面倒を俺に押しつけたと考えた方が良いのだろうか。
ただ挨拶をされて安心できたのは、王女様たちとは表情が違っていたこと。緊張感が前面に出ていたんだけど、女の顔は表に出ていなかったんだよ。ちょっと残念……いやいや、安心できたと思ったよ。
嘘を吐けっ
誰だ、俺の心の声を代弁したのは……いやいや違う違う、俺は本気で安心できたんだよ。そりゃあクレスタさんは美人だし、こうして見るとスタイルが良いのもよくわかるんだよ。くびれた腰とか大きな胸とか……いやいや、セレスには負けるからね。
それはそうと、何を話せば良いんだ? こう言った時ってさぁ、だいたい立木さんに任せていたんだよ。その立木さんがいないと……うん、はっきり言って何を話して良いのかわからないんだ。こう言う時はさ、必殺技を使う時だと思うんだよ。うん、立木さんヘルプぅっ!
「なにか、最近甘えていませんか?」
小休止後に現れた立木さんのお言葉。うん、否定はできないよな、否定できないんだよ。ただ、今持ち出しても仕方が無いよね。
「仕方が無いのでしょうね。それではクレスタさん、貴方はどこまで事情を理解されていますか?」
「私の世話をした側仕え……確かカリヤでしたか。その方から、とても簡単な説明を受けています。ですので、殆ど理解していないと言うのがお答えになります。そもそも、どうして私はここにいるのでしょうか?」
「なるほど、まずはそこからと言うことですか」
そこでサイ……ため息と言うんだけど。ため息を吐きたくなるのも理解出来るよ。だって、殆ど全部説明が必要ってことになるんだからね。立木さんが女神……ルクシオに怒った理由がよくわかるよ。
それで立木さん、どう説明するんですか?
「こんなもの、責任者を呼び出すに決まってるじゃありませんか」
そうかぁ、そう来たかぁ。こっちに面倒を持ってきたんですからね、責任を取らせるのも当然だと思いますよ。
「ルクシオ、滅せられたくなければ大人しく出てきなさい」
普通に呼び出すのではなく、脅しから入ってくれましたか。それが適切と言うのは、はい、ちゃんとわかっていますよ。だって女神ルクシオが、速攻で現れて土下座なんかしてるからね。
「クレスタさん。貴方も、女神ルクシオの名前ぐらいは聞いたことがありますよね?」
「そのですね、私たちが信仰している女神様の名前がルクシオと言います。ルクシオと言うのですけど、目の前で土下座で良いのですよね。土下座をしている女性との関係が理解出来ません」
そりゃあ、女神様って世界を統べる存在だからね。つまり、世界で一番偉い存在ってことになるわけだ。その女神様が、普通に呼び出されて土下座をしているんだ。自分の信仰する女神様と同じなんて、絶対に信じられないと思うんだよ。
「信じられないかもしれませんが、彼女が女神ルクシオ。あなた方が敬っている女神様と言うことになります」
「この状況で、それを信用しろと仰るのですか?」
「信じられないと言うのは理解出来るんです。ただ説明が長くなるので、そう言うものだと今は理解してください」
「とても理解出来そうな気がしないのですけど……本当に女神様なのですよね?」
顔を上げたルクシオが、とっても力強く頷いてくれてるよ。だけど、それをすると逆に信じられなくなるんだよな。ほら、クレスタさんの表情が、猜疑心たっぷりって感じになってるんだ。
「取りあえず色々と棚上げすることにいたします。それで、女神ルクシオと私の関係は何なのでしょうか?」
「あなたは、スタジオネ王国の者に攫われたと伺っています。そこで抵抗した結果、馬車から投げ出されたと言うのは間違っていませんよね」
「私の記憶が正しければ、ですけど。ただ、馬車から落ちた後の記憶が無いのです。馬車が走っていた場所を考えたら、無事でいられるとは思えないのは確かです」
「貴方を死なせるのは忍びないと、彼女が命を助けたと言うことです。そして保護をして貰うため、こちらの世界に連れてきたと言うのが貴方がここにいる事情と言うことです」
事実だけを取り上げれば、立木さんの言っているとおりなんだけどね。ただそれだと、女神ルクシオがクレスタさんの恩人と言うことになるんだよ……そっか、事実だけなら恩人で間違っていないのか。
「つまり女神様が、私の命をお救いくださったのだと」
「事実だけでお話をするのなら、その通りと言うことになります」
「ですが、それだけでは私がここにいる理由にはならないと思います。ここが神の世界と言うのであれば、まだ説明が付くと思いますが……違いますよね?」
「ええ、違っていますね」
うん、クレスタさんが冷静と言うのがよくわかるな。それから、かなり賢いと言うのも今のやりとりを聞いていれば理解出来るよ。
「ただ命を助けただけだと、早晩貴方が死ぬことになるのがわかっていたからだそうですよ。だから、受け入れて貰えそうな世界に連れてきたと言うのが彼女の言い分です」
「まさかとは思いますが、それを信用されていますか?」
「ええ、まさかですね。信用して貰えると考える方がおかしいと思いますよ」
ああっ、土下座をしている女神様。汗をだらだら流しているよ。薄いローブの背中が、しっかりと汗で張り付いているよ。ちょっと前に、エンビジョンでも見た光景だな。
「ルクシオ、貴方の説明はクレスタさんにも通じていませんよ」
ああっ、ガンガンと床に頭を打ち付けているよ。つまり、説明できない理由があったと言うことか。つまり、立木さんが警戒したとおりと言うことなんだな。
「未だに自分の目が信じられないのですが……これ、失礼、彼女が本当に女神ルクシオ様なのですか?」
「その気持ち、わからないとは言いません。残念ながら、彼女が女神と言うのは間違っていないんですよ」
もの凄い言われようって言って良いよな。でも、ここの所ポンコツ女神ばかり見せられているんだ。だから立木さんの言うこともよくわかるんだよ。
「理由の如何に関わらず、私はこの世界に連れて来られたと言うことですね。それで私は、これからどうなるのでしょうか?」
「貴方にいくつか選択肢を差し上げることが出来ます。まず1番目ですが、元の世界に送り返して差し上げることができます。ただ出来るのは、送り返して差し上げることだけです。そこから先の未来は、貴方が自力で切り開くことになります」
「私を、返してくださると言うのですね」
本当に冷静だな。今までの王女様とは、ちょっとタイプが違っていると思うんだ。
「そして2番目は、こことは別の世界に送らせていただくと言うことです。別の世界、そこの王族の方が貴方を引き受けてくださるそうですよ」
「その王族の方と言うのは、当然殿方なのですよね。お言葉はありがたいのですが、今は嫁ぐ気持ちになれないんです」
まあ、酷い目に遭ったばかりだからな。男を信用できないと言う気持ちは理解出来るぞ。
「最後の選択肢は、ここに残って居場所を探すと言うものです」
「つまり、結論の先送りと言うことですか?」
「そう受け取っていただいて結構です。少しこちらの世界で、気持ちを落ち着けると言うのも悪くないでしょう」
落ち着けるのかと言う疑問はあるけど、送り返すのもギャランさんに貰われていくのも、それからでも出来ることだからな。だから、結論の先送りと言うのは間違っていないんだ。
「元の世界に対する未練は全く……と言うのは言いすぎでしょうね。ですが、私は処刑されることになっていました。それを考えれば、戻っても良いことは何もないと思います。王家に嫁ぎ、王妃として国を導いていく……その目標がなくなってしまったんです。自分に何が出来るのか、何をすることが出来るのか、今は全く考えられないのです」
「ですので、考えるための時間を差し上げようと思っていますよ」
「私のような者へのお慈悲に感謝いたします」
いやぁ、本当によくできた人だね。しかしなんだ、こんな綺麗で賢い女性を処刑するって……そりゃあ、回りのみんなが頭を抱えるはずだよ。テアトル王国だっけ? 屋台骨が揺らいでいるんじゃないのか?
「それはそうと、彼女の住まいをどうしましょうかね。後は、世話係を付ける必要があると思うんですよ」
そう言えば、住まいが必要になりますね。それから世話係なんですけど、当面カリヤとジェメラで良いんじゃないのかな。少なくとも3部屋必要なんですよね。だとすると、使えそうなのはウチと立木さんのところと言うことですか。ところでクレスタさん、何か希望があるのかな?
「その、厚かましい申し出と言うのは理解しております。私が目覚めた時に使っていた部屋をお願いすることが出来ますでしょうか?」
つまり、立木さんのところと言うことか。慶子さんがいるから、安心できると言えば出来るのかな。それに立木さんのコレクション外だから、貞操の心配も要らないしな。あっ、酷い冷や汗がぁっ!
「また女性が増えるのかぁ……」
でしたら、ギャランさんに居候をして貰いますか? 流石に勘弁……まあ、そう仰るのは理解出来ますよ。それでは立木さん、彼女のことはお任せします。それから今夜は、歓迎の宴会をしますからね。それはもっと落ち着いてから。だから今夜は、内輪の歓迎会にすると言うのですね。ひょっとして、別宅その5恒例のガーデンパーティとか言いませんよね?
「もうすぐ12月なんですよ。寒いのは魔法でなんとか出来ますが、気持ちが盛り上がらないので大食堂ですることにします」
ああっっと立木さんが薄くなった頭を掻いてくれたよ。ところでルクシオ、まだいたんだね。
「帰って良いとのお言葉を頂いていません」
だそうですよ立木さん。忘れていた……それも可哀想な気がしますけどね。まあ、仕方が無いと言えば仕方が無いんですけど。
と言うことでルクシオ、帰っていいからね。うん、パーティーに君の席はないと言っておこう。
初めまして、ではありませんね。二度目になります、元公爵家の長女クレスタと申します。色々とあったのですが、今は立木様のお宅で御世話になっています。
そこでカリヤさん、ジェメラさんに教えていただいたのですが、私の選択は正解なのだそうです。特に良いのは、こちらには王族がいないと言うことです。そして慶子様、で良いのですよね。慶子様がとてもお優しい方だからと言うことです。
それは良いのですけど、同じ屋敷に住む住人を紹介していただきました。それなのですが、立木様ご夫妻とそのお子様以外……藍香さん、大悟さん、杏香さんはお子様ではないのですね。でしたら、円香さん、文香さんは? そうですか、そちらもお子様ではないのだと。でしたらフルグラさんは? 居候、居候とはなんですか? 客人のような者、そうですか、私と同じ立場だと考えれば良いのですね。
それからかすみさん、アスカさんは? ホームステイ……ってなんですか? 親代わりで面倒を見ているのですね。つまり立木様は、篤志家であられるのですね。
それはそうと、それ以外の方々がおかしくありませんか? 私の世界では、妖精族と言うのは伝説の存在なのです。その妖精族が四方も住まわれているんですよ。それから、竜人ってなんですか? そうですか、仮想体、仮想体と言うのも良くわからないのですが、竜の姿になることが出来るのですね。それからとても神々しい方がお二人、フローリアン様とパナメーラ様……ルクシオ様よりも高位の女神様が住まわれている。
カリヤさん、ジェメラさん、本当にこちらで正解なのですか? そうですか、これでも正解なんですね。そこから常識、常識ってなんなのでしょうね。常識が違っているわけですか。
パーティーはどうだったか、ですか。とても質素だったと思いますよ。ただ、とても暖かかったかと思います。私の知っている盛大なパーティは、本音を仮面の下に隠した、化かし合いの世界だったんです。
はい、食べる物もとても美味しかったと思います。お肉なんですけど、少し油が多かった気もします。ただその油ですが、甘くて美味しかったと思いますよ。それ以上に美味しかったのは、果物、果物で良いのですよね。ところでリンゴって……これがリンゴなのですか? 私の知っているリンゴよりも大きくて、とても甘くて美味しいと思います。それからイチゴって……赤くて甘くて綺麗で美味しいと思います。ケーキ、これがケーキなのですか、いえ、私の知っているケーキとは全くの別物だと思います。
ところで、楽器……ピアノと言うのですね。とても綺麗な音がするのですが、その音に合わせて女性……藍香さんと仰るのですね。藍香さんが歌ってくださりました。言葉は魔法でわかるのですが、それでも意味はまだまだ理解出来ないところがあるんです。それでも、とても心に刺さる歌だと思います。
はい、円香さんと文香さんの歌も素晴らしかったと思いますよ。お礼にですね、私も一曲宜しいでしょうか? はい、伴奏は無理だと思いますので、無伴奏で歌わせていただきます。これは、お母様がよく歌ってくださった歌なんです。あれっ、ちょっと悲しくなってしまいました。すみません、少し席を外させていただきます。
その後部屋に戻って、思いっきり泣かせていただきました。だって私、両親にも見捨てられてしまったんです。家のためには仕方がないこととは言え、公開処刑って酷くありませんか? 私は、何一つとして悪いことはしていなかったはずです。その私が、家から見捨てられ、世界からも見捨てられたって……なぜ慶子様がこちらに?
「一人でいると、ますます悲しくなってしまいますからね。大丈夫、貴方は一人ではありませんよ」
私は一人ではないと仰ってくださるのですね。ですが、もう少し泣かせていただけませんか? そうですか、無理をする必要は無いと仰ってくださるのですね。でしたら、少し胸をお借りしても宜しいでしょうか? 遠慮は要らない、小さな胸で申し訳ない、ですか。では遠慮無く……
そこからどうなったのか記憶があやふやなのですが、気がついたらベッドで寝ていました。着替えも出来ているところを見ると、カリヤさんたちが着替えさせてくれたのでしょうね。だけど私、一体何を握りしめているのでしょうか。
そう思って右手を見たら、慶子さんが微笑んでいるのを見つけてしまいました。もうですね、これだけで涙腺が決壊してくれました。お母様、ですか。実のお母様にも、こんなことをして貰った記憶が無いんです。だから、お母様と言ってもピンとこなかったりするんです。
「目が覚めましたか?」
そう言った慶子さんは、握っていた手を離してくださりました。その途端にですね、なにか酷い喪失感と言えば良いのか。大切な物が離れていった感じがしたんです。
それがわかったのですね。慶子さんがもう一度私の手を握ってくださりました。それだけで安心できてしまうなんて、どれだけ私の心は弱くなっていたんでしょう。
それは良いのですけど、ずっとこうしてくださっていたのですか?
「貴方が手を離してくれませんでしたからね」
そうですか、ずっとこうしてくださったのですね。なんと言えば良いのか、ご迷惑をおかけしたと言うことですか。謝罪、で、良いのですよね。謝罪をさせていただきます。なんです、久しぶりの感覚を味わえたと言うのは。
「娘に甘えられた。そんな気持ちを味わうことが出来ましたよ。陽佳ちゃんも、甘えてくれるんですけどね」
陽佳さん……異世界で勇者をされていた方のことですね。その方も、慶子さんに甘えられていると言うことですか。ですが陽佳さんは、お子様になられたのですよね。赤の他人の私とは、立場が違うと思うんです。
「同じと言ってはいけませんか。私にしてみれば、貴方は娘……孫かしら。そんな年齢なのですよ」
そう言っていただけるのはとてもありがたいと思います。ただ私は、別の世界で生まれ、その世界から捨てられた女なのです。他人に甘えていては、この先生きていけるとは思えないんです。だから私は、自分を厳しく律しないといけないと思っているんです。
「そればかりだと、疲れてしまいますよ。内緒にしていてあげますので、私に甘えてくれて良いんです。それ以上に、甘えていただけると私も嬉しいんですよ」
そこまで甘えて良いものなのでしょうか。そうですか、子供が遠慮するものではないと仰ってくださるのですね。いえ、自分では子供ではないつもりでいたのですよ。ただこうしていると、私はまだまだ子供だったと思い知らされた気がします。
それはそうと、今は何時……朝なのでしょうか? そうですか、そろそろ皆さんが起き出す時間なのですね。慶子さんは……朝食の準備があるのですね。私が手伝えれば良いのですが、あいにくその方面の教育を受けていないんです。ですので、私に出来ることは、これ以上甘えないことなのでしょうね。
「甘えてくださっても結構なんですけどね。ただ、大悟君と杏香ちゃんの朝食を作ってあげないといけないんです。それ以外の方たちは、朝が遅いから大丈夫なんですけどね」
大悟さんと杏香さん……昨夜紹介いただいたお二人ですね。はい、そのお二方を優先していただいて結構です。私も、着替えをしてレストラン……食堂なのですね。そちらまで降りていきますので。
これから、こちらの世界で生きていく必要があるんです。ですので、いつまでも甘えていてはいけないことがわかっているんです。ただ慶子さんにお願いがあるのですが、たまで良いのですけど、こうして甘えさせていただけませんか? 喜んで、喜んでと言ってくださるのですね。改めて、ありがとうございますと言わせていただきます。
11月もそろそろ終わりになると、次は12月……なんて当たり前のことを言うつもりはないんだ。12月になる前に、IMO研究所定例会見と言うのがあったりするんだよ。
ちなみにこの会見なんだけど、相変わらず北の大地で開催なんかしているんだ。その辺り、『ただでも良いですから』って、先方からの強いお願いがあったのも理由なんだよ。その下心も理解しているんだけど、取りあえずは利用させて貰っていると言うのがIMO研究所側の事情かな。
それで最初は、いつもの通りエンターテインメント部門の報告と言うことになる。うん、名前の長い国のマスコミ招待も好評のうちに終わったから、次は一般公開の運びになっているんだよ。
「まず今日の異世界に行こう! だが、契約交渉はすべて完了した。MHK、D’sエージンシー、そしてIMO研究所で放映権料を分割しているのだが、IMO研究所の取り分は4百億円を超えている。うむ、立派に収益源となっていると報告させて貰う」
ちなみにこの放映権料なんだけど、EU諸国からもとっているんだよね。今の関係なら、ぼったくってもおかしくなかったりするんだけど、それをしないと言うのが研究所のコンセンサスになっているんだよ。
「ちなみに、今日の異世界に行こう! の派生事業として、細々と芸能活動をさせて貰っている。その芸能活動なのだが、半年でトベ、ダウンロード販売、コンサート収益が1千億に迫る勢いになっている。馬鹿げた利益率をたたき出しているので、所属するタレントに還元しているのだが……まあ、持ち慣れないお金を貰うものではないと言うのがこの場でのコメントになる」
うん、その辺りは俺も一緒と言っておくよ。だってさ、預金通帳の残高の桁に、カンマが3つ付いているんだよ。しかも、毎月どんどん増えていくんだよ。どうやって使えば良いのか、誰か教えてくれないかな?
「それからおかしの世界を含めた異世界観光なのだが、入場者数がめでたく5百万人を超えてくれた。12月からはエリアを拡大するので、さらなる入場者数の増加が見込めるだろう。こちらは、入場料及び物販、宿泊費で1千億円を超えている。芸能活動を含め、IMO研究所の貴重な収益源となっている」
う~ん、予想以上の売り上げと言って良いかな。立木さんに教えて貰ったんだけど、原価、経費と言った方が良いのかな。本当にあまり掛かっていなかったりするんだよ。だから濡れ手に粟……鴻池さんのところもそうなんだけど、ぼろ儲けになっているんだそうだよ。
大谷村、かい? 人が増えれば、それだけお金を落としてくれるんだよ。だから、税収が増えたって、中林村長が明るい顔をしていたよ。
「これは本業ではなくなっているのだが、ゲーム部門も堅調に売り上げを伸ばしている。異世界観光との相乗効果だと思うのだが、こちらも5百億に迫る売り上げとなっている」
ってことは、エンターテインメント部門だけで3千億を余裕で超えてくれると言うのだね。これだけで、昨年度の売り上げの5倍ぐらいになるのかな? 人数が増えていないことを考えると、もの凄い伸びと言っていいと思うんだ。
「エンターテインメント部門の発表はこの程度なのだが。質問があれば受け付けることにするぞ」
相変わらず上から目線で話をしてくれるな。まあ、それが彼のパーソナリティーとして受け入れられているから良いのだろうな。
それで、おっ、またヨーロッパ系なのかな?
「EUハ、アイテニシテモラエテイルノデスカ?」
いや、その質問っておかしくないか? なんだ、その、『アイテニシテモラエテイルノカ』ってのは。
「色々とこれまで言っているが、別に排除しているつもりはないぞ。だから、EUに関して言えば、そちらの問題を解決しろと言うのがIMO研究所としての答えとなる」
なんだよなぁ、未だにEUと話をしていないんだよ。まあ、あっちの体制がガタガタになっているから、誰と話をすれば良いのかわかっていないと言うのもあるんだけどね。誰に手を差し伸べれば良いのかわからないって、友池さんも言っているんだよ。
「新たな異世界との交流は行われたのですか?」
そうか、その質問が出てきたか。まあ、でもおかしくない質問だと思うよ。
「それについては、立木副所長から説明をして貰う。と言うことでだ、お待ちかねの立木副所長の登場だぁっ! お前ら、拍手拍手っ!」
「朽木君、だから研究部門にはエンターテインメント性は必要無いんですよ。それに私は、開会の辞とかやっているので、今更登場と言われても、ですね」
だけど、立木さんが受け答えをしてくれるんだよね。記者さんたち、立木さんの登場を待ち構えていたりするんだよ。
「まず研究の方ですが、予想通り大学設立に時間を取られていたりします。それでも少しずつ進捗はあって、人工的にMR器官の生成に成功しています。検証方法ですが、魔力の蓄積並びに細胞寿命の延長で確認が行われています。また人工的なMR器官生成の過程で、魔法による高次空間アクセスへの理解も進んでいます。こちらは、オルティアが現在論文化を検討しているところです。理論的な物となっているので、検証は無理でも高次空間への理解の助けとなるものではないでしょうか」
この辺り、何か凄いことになっているんだよね。だから、神岡とかからも、研究者がひっきりなしに来ていたりするんだよ。高次空間アクセスと、ニュートリノ発生、そして重力波発生の因果関係が見えてきたらしいんだ。
もうね、俺の頭では理解が追いついてくれないんだよ……初めからだけど。
「魔道具に関しては、増産が進んでいます。魔法都市特区関連で消費をしているのですが、もう一つぐらい特区を作っても良いぐらいに空間転移の魔道具は準備が出来ています。医療用魔道具の方は、4万セットを超えていると言うのが現在の状態です」
両方ともさ、原料の改良とかあったんだよね。当たり前だけど、フローリアンさんたちの魔道具って、単なるチョーカーでも良かったりするんだよ。その指摘を受けた武見君が、ありふれた金属……銀をありふれたって言って良いのかな。それを使って、効率的に魔道具を作ることに成功したんだよ。
魔獣の魔石に比べて、銀だったら入手が容易なんだよ。だからなんだけど、素材の量産規模が増えてくれたんだ。そして魔道具に付与する術式も、武見君が改良したので、翼人とかハイエルフとか、闇エルフも出来るようになったんだ。だから増産ペースが上がってくれたんだよ。
「医療用魔道具の治験ですが、実績が順調に積み上がっています。本山名誉教授との連携で、幹細胞を使った人工臓器の形成にも成功しています。この人工臓器を使用することで、移植に頼らない治療方法が確立する見込みとなっています。また神経系の障害に関しても、幹細胞と組み合わせた治療に目処が立っています」
神経系って、御衣黄さんのやってる無駄な努力のことなんだよ。ただ御衣黄さんにとっては無駄な努力なんだけど、高度治療の面ではもの凄い進歩になっていたりするんだ。このお陰で、脊椎損傷で立てなくなった人とかの治療に目処が付いてくれたんだ。後は、ALSで良いのかな。そちらの治療にも光明が見えてきているんだよ。
EDの治療……それは、おまけと言って良いかな。
「こちらの成果に関しては、忙しすぎて論文作成に手が回らなくなっています。その辺り、本山名誉教授相談させて頂いているところです。結論が出次第、大量の論文が発表されることになるかと思います」
意外に反応が薄いって、言って良いのかな。多分だけど、記者さんたちの頭も飽和していると思うんだよ。俺? 俺の場合は飽和じゃなくて溢れていると言わせて貰うよ。
「魔道具を用いた治療ですが、魔法都市特区に設立される病院で提供されることが決まっています。ただ保険診療とはなりませんので、それなりの負担をお願いすることとなります。現在山縣理事が、厚労省と費用負担のスキームの調整に入っています。その調整が成功した場合、かなり費用面でのハードルが下がることになると思われます。沢山お手紙をいただいていた件に対して、これでIMO研究所として回答を示せたのかと考えております」
あれ、忘れていなかったんですね。俺も忘れていませんよ。だって、全部のお手紙に目を通したんだからね。本当に、切実な思いが綴られていたんだよ。後は費用なんだけど、組織が維持できれば良いかなと思っている程度なんだよ。
病院経営が大変と言うのは理解しているつもりだよ。うん、市民病院が苦労していたのを見ているんだ。
「最後に新たな異世界との交流について、ですが。前回の報告で、始まりの世界について報告させていただきました。その後のことですが、皆さんが予想された通り諸星所長が5つめの王座に就くことになりました。王位を退かれたギャランさんですが、婚活と称して頻繁に研究を訪問されておいでです」
俺のことは、だぁれも驚いてくれないんだよな。事実として淡々と受け止めてくれていると言えば良いのか、もう呆れられることもなくなってしまったんだよ。
どちらかと言えば、ギャランさんが『婚活』している方に注目が集まってるね。ただ個人的問題なので、研究所としてはこれ以上説明しないことにしているんだ。
それでも少しざわついたので、立木さんが落ち着くのを待ってくれた。そして落ち着いたところで、『One more thing』って、有名な企業家の言葉だよね。
「交流自体を始めてはいませんが、別の世界の女性を一人保護しています。クレスタさん、こちらに来てくれるかな?」
演壇にクレスタさんが転移。これは、魔道具を使った転移になってるね。しかしクレスタさん、こうして見るとしっかり美女をしているよな。年齢は18って……もの凄く落ち着いているからもっと年上に見えるんだよ。
「彼女の名前は、クレスタ・キネマ。テアトル王国公爵家の長女であられたそうです。王太子殿下の婚約者だったのですが……そうですね、異世界物的に言うのなら悪役令嬢でしょうか。処刑されそうになったのを、女神ルクシオが保護し、こちらの世界に連れてきました」
しかし、物怖じをしない人だな。だから『悪役令嬢』って言うのが、なんかピッタリくるんだよ。
「彼女は、現在お客様としてIMO研究所でお迎えしています。将来の身の振り方ですが、現在相談させていただいています。なお暫定的にですが、私の秘書としてこの世界のことを勉強していただいています」
あれっ、ちょっとイラッとした空気が伝わってきたぞ。小谷さん、その辺り何かあるのかな? SNSで『立木タヒね』がバズっている。そりゃあ、エリシオンさんとかセフィーロさんとかの実績があるからなぁ。
でもクレスタさんの場合、受け持ちは俺なんだよ。いや、別に協定を結んでいるわけじゃないんだけどね。でもさ、クレスタさんの表情を見る限り、『タヒね』って言われるようなことはないと思うんだよ。慶子さんなんて、娘みたいに接しているぐらいだしね。いや、エリシオンさんとかインテグラも娘扱いになってるけどさ。
「王妃として国を導いていく教育を受けてこられたそうです。色々とお話をさせていただいたのですが、とても柔軟な考えをされた優秀な方と言うのが私の受けた印象です。ですので、特区の検討委員会……あの年寄の集まりなのですけど、そこにも参加して貰おうと思っています」
意外なところから、立木さんの後継者が現れたって所かな。なんだい小谷さん、SNSの反応が変わったのかな? うん、『あそこは可哀想』って意見が滝のように流れているんだ。それ以外に、『特区で働きたい』って意見が増えている。
なんかなぁ、みんな欲望に忠実って言って良いのかな。
それで質問、質問ねぇ……
「EUトノカンケイハドウナッテイマスカ」
って、うちに聞くことかな。
「どうもこうもないのですが。IMO研究所は職員数も限られた小さな研究所なのです。国家の集合体に対して、働きかけるような余力なんてどこにも無いと言うのが答えになります」
「モロボシシヘノメンカイイライガモンゼンバライヲウケタトキイテイル」
「その件ですが、どうやら私の留守を狙ってくれたようですね。その時点で、会う必要がないと思いませんか? ですので、特区の方に交通整理をして貰いました。門前払いを食らったのは、その結果だとご理解いただけると幸いです」
ああっ、留守を狙ったってはっきり言っちゃったよ。その時点で会う価値がないって、確かにその通りなんだよね。しかも藤康さんなんて、俺が鼻をほじる時間よりも無駄だなんて言ってくれるぐらいだし。後からサマリを見せて貰ったんだけど、本当に会う必要のないものばっかりだったんだよ。
「大学、及び付属の中高に対する募集はいつから始まるのですか?」
「そちらは、年明け早々と言うのがお答えになります。募集要項については、12月の中を目処に発表させていただきます。それからなのですが、突っ込みを受ける前に特例を受ける学生についてご報告いたします。まず中学生ですが、敷島杏香の入学が決まっています。同じく敷島大悟は、高校への入学が決まっています。そして大学の方ですが、隣にいるクレスタ・キネマ、帰還者である杣木謙吾、同行者のエクステラ・ルースクリス、ニロ・ロッテンに研究員として加わって貰うことになっています」
「看護学校を設立されると伺っていますが、そちらはどうなっているのでしょうか?」
「医療関係に関しては、山縣理事が受け持ってくれています。ただ医師、看護師の人数に問題があるので、病院はスモールスタートになるのかと思います」
そりゃあ、いきなり1千床の病院が立ち上がるのって無理があるよな。そこで働く人の住居だって、一朝一夕に準備が出来るものじゃないし。だから、泣く泣くスモールスタートと言うことになるんだよ。ただ白鹿村と大谷村が乗り気なので、住居に関しては解決が早そうなんだけどね。
「ダイガクトコウコウニ、EUケンノガクセイハニュウガクデキマスカ?」
「審査が多少厳しくなる程度ですね。門戸を閉じたつもりはありませんよ」
審査が思いっきり厳しいって言うのはどうなんだろう。思いっきりじゃない、多少と言ってくれますか。でもですよ、審査にラズライティシア様とかエリシオンさん、フローリアンさんやパナメーラまで関わってくるんですよね。それって、どう見ても普通の審査じゃありませんよね。
「予めお断りしておきますが、先だっての菅谷総理襲撃関係者の入学は拒否します」
「ソレハドノハンイマデイッテイマスカ」
「そうですね、5代程度遡って見ましょうか。それ以外でも、直近50年間で交流があった場合は不可とします」
それって、実はかなりの網を掛けたことになるんだよね。特に王族とか貴族関係なんて、ほぼ全滅になると思うんだよ。でもさ、『菅谷総理襲撃』なんて事件を理由にしてくれただろう。だから、文句を付けることが出来ないんだよ。
ちなみにこれは、友池さんたちの提案なんだよ。外交をやってると、底意地の悪い奴らが沢山いるそうだよ。特に今回排除したEU関係にね。だから、これも自業自得と言うことになるんだって。
「カンジャノウケイレニカンシテハドウデスカ」
「他の患者の安全を考慮して受け入れることになるかと思います。病院でテロを起こされたら最悪ですからね」
まるで仕組んだような質問……って、実はネタばらしもして貰っているんだ。この辺りの質問は、友池さんたちがアリシア首相と協議をした結果なんだよ。
一つ思うんだけど、質問が少なくなってきている気がするんだ。やっぱり、みんなの興味が特区に向いているからかな。あっちで色々とやっているから、IMO研究所の注目度が下がっている……ちょっと違う気もするんだが。あっちの方が扱いやすいと言うのが理由なんだろうね。どんだけ怖がられているんだ! って今更ながら思ってしまうよ。
さてさて、明後日から12月か。12月と言えば……特に何もないんだな。まあ、クリスマスとか年末恒例聖地巡礼とかもあるっちゃあるんだけどな。
それで立木さん。今年の忘年会はどうなっているんです? 去年と同様エンターテインメント部門で行うことになっている。それって、俺がハブられるって言っていますか?
「セレスさんとルーテシアさんの家族枠でなら参加できますよ」
だったら良い……って、どこかおかしくありませんか? 俺って、IMO研究所で一番偉い人のはずだよね。それなのに、どうして家族枠以外に参加方法がないんですか?
「昨年は、おかしの世界探索がありましたからね。今年は、今のところ何もない……と良いんですけど。何もなければですが、諸星さんの出席は予定に入っていますよ」
確かに、去年は翼人の問題でおかしの国に行っていたんだったな。そうか、別にハブられたわけじゃなかったんだ……なんか色々とあった気もするけど、きっと気のせいに違いないっ!
それで、今年はどこに行くんですか? 出来れば、暖かいところが良いのかなぁ、なんて思っていたりするんですよ。
「つまり、寒い地域だとパスされると言うことですか?」
ひょっとして、北海道とか言いませんよね。いえいえ、寒いところだってどんとこいと言わせていただきますです。はい。雪でも何でもどんとこいですっ! それで、どこに行くんですかっ、ワクワク。
「鴻池さんが、別府で会場を確保してくれましたよ。利用するのがわかっているので、結構な売り込みがあったようです。今回使用する会場は、500名が着席できる広さがあるそうですよ。まあ、うちの場合は立食になるんですけどね」
つまり、暖かいところと言うことですね。それで別府と言えば、やっぱり温泉ですよねぇっ! 了解です。忘年会を楽しみにさせていただきますです、はいっ!
「実は、エンターテインメント部門限定と言う訳じゃないんです。ですので、IMO研究所忘年会だと理解していただけると幸いです。ただなぁ、やけにフットワークの軽い首脳陣が心配と言えば心配なんですよね。それから関係者なんですけど、どこまで招待したものか。大学の関係もあるので、人数が増える恐れがあるんですよ」
スポンサーに日本政府とか外務省とか付いていませんよね。ええ、伊勢志摩で懲りているんですよ。そうですか、鴻池さんに任せているんですよね。だとしたら、覚悟が必要ってことですか。そうかぁ、覚悟が必要なんですね。
悪役令嬢の方が大抵有能なんですよね




