帰ってきた俺-1
村の特産は異世界です
・帰ってきた俺-1
俺の名前は諸星孝明。今年27になる男だ。25の歳に市会議員になり、有望な若手として名前を売りまくっていた。そして今年あると言われる衆議院選挙を経て、晴れて国政へ躍り出る予定だ。ゆくゆくは最年少総理大臣になると期待……期待していたのは俺なのだが、今となってはそれも儚い夢となってしまった。何があったのかと言うとだ、街宣中にアホな奴に後ろから刺されてしまったのだ。
まあ、政治家を目指す以上、誰かに恨まれるのは宿命だと思っている。恒星のように強い光を放てば放つほど、深い闇ができるのはお約束のようなものなのだ。熱狂的な支援者を得ると言うことは、裏を返せば強烈なアンチを生むことにも繋がっている。だから命を狙われるのも、有名税だと考えているところもある。そんな俺諸星孝明、享年27歳と1ヶ月の男である。いいか、俺の名前は諸星孝明だからな。も・ろ・ぼ・し……だからな。諸星弾でも諸星あたるでも構わないが、俺が諸星と言うのを間違えるんじゃないぞ。
「これ、お前聞いているのか」
何故俺が名前に拘ったかと言うと、そこには辛く悲しい理由と言うものが存在している。ちなみに市会議員などしていると、常に有権者に顔を売っておく必要がある。そのためには、朝早くから駅前に立ってへこへこする必要があるし、会社員の帰宅時間にも駅前に立って『お帰りなさい』と愛想を振りまく必要もある。
婦人会にも顔を出していじられる必要もあるし、老人会に顔を出してフレンドリーさを演出する必要もある。勿論若者に対して、格好の良いところを見せておくのも重要だ。そうやって地道な努力の元、俺は『諸星孝明』と言う名前を浸透させてきたのだ。この世界、とにかく名前を覚えて貰えてナンボなのだ。悪名は無名に勝る。それぐらいのことは、選挙を見ていればわかることだ。
「我を無視してはならぬのだぞ」
そうやって努力を続けてきた俺なのに、最後の瞬間は血涙ものだった。俺の主義主張が気に入らない。将来の敵を今のうちに排除しておく必要がある。その考えならば、道半ばで倒れたとしても仕方が無いと諦めることが出来るだろう。それだけ俺のことが評価されたのだから、むしろ名誉と言っても良いのかもしれない。
だがなんだ、『オカラ、死ね』ってのは、俺の名前は諸星孝明だぞ。そもそも『オカラ』ってのは誰だ? そこは、『諸星死ね!』じゃないとおかしいだろう。これでは、俺はなんのために死ぬことになるのだ? 責任者は誰だ、俺はやり直しを要求する。
「あーっ、そのことについて説明があるのだがな」
なぜ俺がこんな馬鹿な話をしているのかと言うと、目を開いたら何もない世界がそこにあったからだ。仏教的世界観を持ち出すのなら、ここに現れるのは三途の川でなければおかしいはずだ。さもなければ、天使が俺の魂を連れに来てくれないとダメだろう。
改めて俺は主張したい、『責任者出てこい』と。
「その責任者がいるのに、先ほどから無視しているのは誰なのだ?」
無視をしているわけじゃない、現実逃避というものをしているだけだ。なぜ現実逃避をしているのかというと、俺に声を掛けた存在が問題なのだ。
ちなみにその存在は、白いローブのようなものを着た女だった。その女がすこぶる付きの美人と言うのは、状況をややこしくすることはあっても、解決に導いてくれるものでは無いだろう。ちなみにその女は、長い金色の髪に鼻筋の通った美しい顔をしていた。背も高からず低からず、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ、見た目だけで言えば非の打ち所がないと言っても良いのかもしれない。
「訳のわからない状態に追いやられたのだ。現実逃避をしてどこが悪い」
「その説明をしてやると言っているのだから、無視をするのはどうかと思うぞ」
「なるほど、どのような説明をしてくれると言うのだ? 聞いてやるから言って見ろ」
「お前、私に向かって敬意が足りていないのではないか?」
ふんすと胸を張ってくれたので、目の毒とも思える膨らみが強調された。いや、本当に美味しそう……と言うのは良いのだが。
「お前が何者かわからないのに、どう敬意を払えと言うのだ」
ふんと鼻で笑ってやったら、当たり前だがその女は怖い顔をしてくれた。ただヒステリックなばばあ……もとい、大声で詰め寄ってくださるご婦人方に比べれば、迫力はまだしも鬱陶しさと言うのか、『相手にしたくない』と言う感情は湧いてこなかった。やはり、美しいと言うのは正義と言うことか。
「ところで、俺は死んだと思って間違いないのだな?」
「胸部刺傷による失血死と言うのがあなたの死因です」
「やはり、あそこで刺されたのが原因と言うことか。と言うことは、ここは死後の世界と言う奴で良いのか」
「死んでから来たと言う意味であれば、死後の世界と言うのは間違っていません。ところで、そろそろ私に敬意を払ってくれても良いとは思いませんか?」
「三途の川の奪衣婆を敬えと言うのか? まあ、見た目はババアではないのだろうが」
「こんなところに、仏教的宗教観を持ち出さないでください。この格好を見て、奪衣婆に見えますか? 見えませんよね」
「だとしたら、お前は何者なのだ? よもや、女神様とか言わないだろうな」
「いえ、女神とは言いませんよ。こらあなた、なぜがっかりしているのです」
ちっ、目聡い奴だな。
「だったらなんだ。天使とか言うのか? その割に、羽がないようだが」
「天使などと言う矮小な存在ではありません。そうですね。私は唯一至高な存在なのです。ですので、『性別』などと言う矮小な区別は存在しないのです」
そうですねと考えた女は、『絶対神でしょうか』と自分の存在を説明した。
「ゼッタイシンってのはなんだ?」
「この世界において、唯一至高の存在と言うことになります。星の数ほどの世界を統べる存在と言えば理解出来ますか?」
「星の数ほどの世界を統べるって、まさかお前一人でか? どう考えても無理だと思うのだがな」
眉につばを付ける真似をしてやったら、失礼なと憤慨してくれた。
「いや、こうしている時間を考えたら、どう考えても辻褄が合わないだろう」
「誰が、私一人でと言いました。ピラミッドで良いですか、私を頂点に管理組織を構成しています。その頂点に立つものが、この私なのですよ。どうです、平伏したくなりましたか?」
「いや、全然。ところで、お前をなんて呼べば良いのだ」
いや、どうして至高にして無二の存在が、地面を蹴って悔しがってくれるのだ。いくらなんでも、軽すぎると思うのだが。
「唯一無二の存在ですので、名前と言う記号を付ける必要はありません。せいぜい『神様』とでも呼んでくれれば結構です。さもなければ、『至高にして唯一無二の尊いお方』でも構いません」
「それが、すでに記号になっていないか?」
やはり、ゼッタイシンと言われても納得できるはずが無い。ただ、突っ込んでも埒があかないのは確かだろう。
「ところで、どうして女の姿をしているのだ?」
「この姿、のことですか。あなたの前に姿を見せるための便宜上の姿でしかありませんよ。私は世界であり、そして無でもあるんです。男でもあり、女でもある。そしてどちらでもないと言うのが私なのです」
「それで、なぜ女なのだ?」
「あなたの妄想を具現化しました」
「失礼な。俺はそんな妄想を抱いたことはないぞ。そもそも俺は、金髪美女への煩悩はない」
これも突っ込んでも意味が無いのだろう。話をしていて、色々と嘘を吐いているのを感じてしまったのだ。
「それで質問なのだが、死んだはずの俺がどうしてお前の前にいるのだ。奪衣婆でないと言うのなら、死んだ奴一人一人の前に現れることはないよな」
「そ、それはですね」
少し口ごもったところを見ると、何か疚しいことがあるようだ。
「その、ですね。少し手違いがあったと上申された、からなのですが。ですので、トップである私が直々に説明に現れたと言うことです」
「星の数ほどある世界で、ピラミッドの頂点にいるお前がか?」
「私の気が向いたから、とでも考えてくれれば良いです」
「アカウンタビリティを考えたら、炎上しそうな説明だな。俺の世界だったら、寄って集ってボコボコにされているぞ」
だがまあいい、それならそれで俺にも要求することがある。
「細かな事情は忘れよう。その代わりと言ってはなんだが、一つ要求がある」
「生き返らせろと言うのなら出来ませんよ」
予想されたことなのだろう、俺が要求を口にするより先に被せてきてくれた。
「被せるなよ」
「被せましたよ。ちなみにですね、あなたは勘違いヤローに間違えて殺された間抜けとして報道されています。選挙期間でもないので、大きな騒ぎにもならなかったようです。すでに荼毘に付されているので、今更生き返ったりすると色々と矛盾が起きてしまうのです」
「だから、復活させることは出来ないと言うのだな」
一応死んだのだから、生き返ることが出来ないと言われても落胆することはない。せいぜいやはりそうかと思ったぐらいだ。
「ならば別の質問だ。わざわざあんたのような偉い神様が現れたのには説明以上の意味があるのか?」
「い、一応ですね、元通りの復活は無理でも、何らかの救済策は必要なのかなと。その救済策の説明をするために来たと言うことです。かなりの特例措置なので、わざわざ私が現れたと思ってください。謝罪としては最上級? と受け取って頂ければ結構です」
「ところで、最初の頃と口調が変わっていないか?」
俺に呼びかけたときには、明らかに男口調だったのだ。それなのに、今は見た目相応の言葉遣いをしている。
「それは、形態の影響を受けたとでも思ってください。それで、救済の方法ですけど、元の世界とは別に、とっても大らかな世界があるんです。その世界に転移して、新しい生活を送って貰うことにしました」
「転移? 生まれ変わるとか言うのではないのか?」
「転生ではなく転移ですね。あなたの今の姿を少しだけいじって……いじらなくても大丈夫そうですね。5歳ぐらい若返えらせれば十分でしょう。その姿で、新しい世界で生きて貰うと言うことです。そんなに睨んでも何も出ませんよ」
「俺には、それが救済策とは思えないのだがな」
「若返ると言う特典を差し上げるのですよ。十分に救済策になっているはずです」
ふんすと胸を張ってくれたので、とても立派なものが目立ってくれた。どうして手も出せない相手が、こんなにおいしそうな体をしているのだ。それはそれで、とても理不尽と言うのか、罰を与えられている気がしてしまう。
「それからですね、ただ別の世界に放り出す真似はいたしません。特別に、あなたには恩恵を差し上げます」
「恩恵ってのはなんだ? 運が良くなるとか、病気をしにくいとか言う奴か? ちなみに元の体は、健康優良児だったのだがな。運の方は……勘違いヤローに刺されたのだから良くないのだろうな」
「幸運で良ければ授けるのは簡単ですよ。でもあなたには、もっと良い恩恵を差し上げます!」
「もっと良いものと言うのは?」
「もっと良いものは良いものですよ。元々あなたが持っていたものでもあるのですけど、超越と命令の恩恵と言うものです」
どやぁと胸を張るのを見せられると、むかついてしまうのは不思議なことではないだろう。
「意味がわからん。ちゃんとわかるように説明しろ」
「本当に敬意に欠ける人ですね。良いですか、超越と言うのは自分の周りのすべてを超えると言うものです。ちなみに対象は、生き物に限定されません。物理現象を含めて超越することの出来るものです。これで、ナイフで刺されても死ぬことはありません。それどころか、ナイフが刺さることもありませんからね」
「それはそれで凄いのだが、ナイフが刺さらないのでは手術もできないんじゃないのか?」
「手術をすることになる原因も超越できます。ですから、手術の心配は必要ありません」
もう一度どやぁと胸を張った女は、「次に」と指を立ててくれた。
「命令と言うのは、あらゆるものに命令をして言うことを聞かせることが出来ると言うものです。これも生き物に限定されずに、世界に存在するすべてに対して命令することが出来ます。極端な話、物理現象にも干渉することが出来ます。人の心だって操ることが出来ますよ」
「独裁者が感涙にむせびそうな恩恵だな。だがな、俺はそう言ったズルは好きじゃないんだよ」
「あなたの本性が善と言うのはわかっていたんです。小心者と言っても良いのかも知れませんね。だから乱用しないと思い、特別な恩恵を与えることにいたしました。多分ですけど、新しい世界では役に立つと思いますよ」
「一応褒められたと思って良いのだな。小心者と言うのが気になるが……」
「褒めたわけではありません。私は、ただ事実を口にしただけです」
「ま、まあ、悪い気はしないのだが……ところで服従なのだが、世界に存在するすべてと言ったよな。だったらお前にも通用するのか?」
「私にも命令が通用するか、ですか? 唯一無二の至高の存在である私にですか?」
そこで口元を押さえて笑った女は、これ以上無いほどはっきりと否定してくれた。
「絶対に有り得ませんね。ちなみにその質問の意図は、私にイヤらしいことをさせようとでも考えたのですか?」
「別に、イヤらしいことをするためではないのだが。能力の確認として、普通のことを聞いただけだと思うぞ」
「でしたら、勘違いしないように説明しますね。超越でも私を超えることは出来ませんし、命令でも私を服従させることは出来ません。まあ下位世界の管理者程度になら通用するとは思いますけどね」
まあ、それぐらいの安全弁が必要なのは認めておこう。だったら安心して、俺はゼッタイシン様に命じていいわけだ。
「だったら、試してみても良いか?」
「命じても良いですけど、私には通用しませんよ」
では遠慮無く。色々と追求するのは、冗談を言ってからにしておこう。それから断っておくが、煩悩を晴らすためじゃないのだからな。
「裸になって、俺に奉仕しろ」
繰り返すが、煩悩を晴らすためじゃないんだからな。
「やっぱり、私に嫌らしいことがしたかったのですね。そのあたり、流石は童貞ヤローと言うことですか。残念ながら、私には効きませんよ……ん?」
そう言って、女は両手を後ろに回して首の留め具を外した。するりとローブが滑り落ち、とても綺麗な裸体が俺の目にさらされた。不思議に思ったのは、下着が俺の知っているタイプのものと言うことだ。
「えっ」
「えっ?」
「おい、なぜローブを解くんだ! 下着を脱ぐんじゃない! こ、こら、冗談なんだから裸になって迫ってくるなっ!」
「別に、私は迫っているつもりはないのですけど?」
「裸になってにじり寄ってくるのは、普通迫ってくると言うのだ。だからぁっ、効かないんじゃないのか!」
言っていることとしていることが違って居るぞ。それからだ、俺のズボンを下げようとするんじゃない。わ、わかった、今の命令は取り消す。服を着て、説明を続けてくれ……どうして、残念そうな顔をするのだ?
「言動は形態の影響を受けると説明しましたよね。あなたの命令は、私の体に火を付けてくれたんです」
だから絶対に逃がしません。口付けで命令を封じられた俺は、女に対する新たな命令を発することは出来なかった。まさか脱童貞の相手が、神様になるとは考えてもいなかったのだが。
ただ神様と言うのを忘れれば、美人でスタイルも良いのだから文句どころか感謝しないといけないのだろう。だから俺は、相手が神様と言うのを心の棚にしまい込むことにした。そのなんだ、大変結構でしたと感謝いたします。振り返ってみると、随分と無茶な要求までしてしまったようだ……初めてなのに。
事が終われば、賢者タイムと言うことになる。ただなぁ、どうしてゼッタイシン様が俺に甘えてくれるんだ。こらこら、指で俺の胸を撫でるんじゃない。
「責任を取ってくれますか?」
「なぜ、責任と言う話になるのだ!」
どちらかと言えば、俺が食われたと言って良いはずだ。最後に押し倒したのは、ゼッタイシン様の方だよな。
「あなたは、与えた恩恵を使って私を辱めてくれました。あんなはしたないことまで……本当に辱めてくれたんですよ。だからその責任と言っているのです」
「む、むしろ積極的だったよな。それに、俺の命令は通用しないのではなかったか?」
「事実を事実として認める必要がありますよ。あなたは、私に対して性的な命令をしました。それだけでも大罪なのに、私の性別を固定すると言う大それたことまでしたのです。純粋無垢、高貴で真っ白なキャンパスを血で汚した罪を理解していますか?」
「命令が効かないと言ったのはお前のはずだ」
「お前ではありません。名前を呼んでください」
なぜそこで色っぽい視線を向けてくれる。それに、名前と言う記号は必要無いと言ったよな。
「それはそれ。私を女にしたのはあなたです。ですから、あなたには私を名前で呼ぶ名誉を差し上げます。さあ、私を美しい名前で呼んでください」
そう言って起き上がったゼッタイシン様は、綺麗さと同時にイヤラシさを備えていた。その辺り、情事の名残が体に残っていたからだろう。しかも俺の手には、綺麗な胸の感触までしっかり残っていた。
「美しい名前と言われてもだな……どうして俺が名前を付けないといけないんだ?」
「往生際が悪いですね。名前を付けてくれないと、先に進めませんからね」
「そう言われてもだな……だったら、コスモクロアでも良いか?」
「コスモクロア……緑色をした貴石ですね。まあまあの名前だと思いますよ、ええ悪くないですね」
そこでゼッタイシン様、今はコスモクロアと言った方が良いのだろうか。両手をクロスするように胸に当て、瞳を閉じて少し俯いた。なんか、体から光が発せられなかったか?
「私の階梯が一つ上がりました。私の与えた恩恵も、それに伴って高位のものへとバージョンアップされました」
「階梯が一つ上がったって……ゼッタイシンの上があるのか?」
「上がなくても、階梯と言うものはあるのですよ。私自身、さらなる高みに登ったのを感じたのです」
そこまで言ったコスモクロアは、残念ですと恨めしそうに俺の顔を見た。
「そのせいで、少し忙しくなります。そのうち迎えに行きますから、それまで予定通り遊んできてください。いえ、押しかけていくのも楽しそうですね」
「絶対至高の存在の割に、俗っぽく思えるのは俺の気のせいなのか?」
「間違いなく気のせいだと思いますよ。では、楽しんできてくださいね」
ばいばいとコスモクロアが手を振ったところで、俺の視界は暗転した。そして気がついたときには、なぜか深い森の中に居た。どうやら、新しい世界とやらに送られたようだ。しかしなんだ、この文明の香りのしない世界と言うのは。しかも、回りからは剣呑な雰囲気がビンビンと伝わってくるぞ。おい、そこに現れたウサギ……で良いんだよな。どうして俺を見て、スタンピングをしているのだ。しかもわらわらと集まってきているじゃないか。素人の俺でも、殺る気がビンビンと感じられるのはどうしてだ。
どうやら俺の送られた新しい世界とやらは、お世辞にも穏やかな心地の良い世界ではないようだ。ぽかぽかと日だまりのような世界と言うより、弱肉強食を絵に描いたワイルドな世界としか思えない。なんとか殺る気満々のウサギの襲撃は回避したのだが、その次には子供としか思えない鹿まで突進してきてくれたのだ。
殺る気満々の野生動物から逃れたら、今度は人間の子供のような奴の襲撃を受けた。やけに肌色の悪い奴が、武器を持って襲ってきたのだ。
「遊ぶにしては、剣呑すぎないか、これは」
子供の人型だけかと思ったら、俺よりもでかい奴まで襲ってきたじゃないか。地方巡業で見た関取よりでかい化け物は、棍棒のようなものを振り回して俺を殺しに来てくれた。
「君は、オークや小鬼に好かれているのかな」
天の助けと言えば良いのか、青色の髪をした女性が助けてくれた。俺より背は低いのだが、女性としてはかなり長身の部類に入る人である。長い耳をしているところを見ると、指輪物語だったか、そのエルフと考えて良いのだろうか。全体的には細めだが出るところはしっかり出ている、緑色の瞳をしたとびっきりの美人である。それから補足しておくが、俺好みの足をしていた。なんでだろう、もの凄くそそられるんだよな。
「随分と君は余裕があるのだね。まあ、悪くはないね」
ああ、俺もようやく『遊び』を理解出来た気がする。こんな女性と巡り会えるのなら、この世界に送り込まれたのは悪くはないと思えたのだ。
さて『命令』ではなく『超越』の恩恵でも使ってみるか。それを発動させれば、これぐらいの襲撃などものの数ではないはずだ。
落ちていたボロい剣を拾って、俺は慣れないチャンバラへと挑んだのである。
初めまして陸亀です。それから、名前を英語にしないように。
導入は、まあ、こんなものなのでしょうね。ちなみにこれ、舞台は異世界じゃありません。ありませんが、異世界は関わってきます。生暖かく見守っていただければ幸いだったりします。




