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最強スキル「リア充爆発しろ」 〜元社畜魔王は、幸薄勇者を倒せない〜  作者: 絵夢


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04.ポンコツメイド爆誕!!

魔王城の大食堂に、妙な音が響いていた。


すすり泣きだ。


「……うぅ……美味しい……本当に美味しいです……」


リリが、山盛りの炊き立てのご飯を前に、ぼろぼろ泣いていた。


その様子を、俺とザルドスとカミラの三人で眺めている。


正直、ちょっと引いている。


「おい。泣きながら食うな。米がしょっぱくなるだろ」


「だ、だって……!」


リリは茶碗を抱きしめたまま、ぶんぶん首を振る。


「借金が出来てからは、こんなちゃんとしたご飯久しぶりで……」


そのまま、がつがつと口に詰め込む。


頬がパンパンに膨れて、もはや何かの小動物だ。


「……魔王様。あれ、本当に勇者ですか?」


カミラが呆れたように言う。


「餌付けされたリスにしか見えませんが」


「……さすがに同情するな」


ザルドスがぼそりと呟いた。


「こんな勇者は見たことがない」


俺はため息をついた。


「ほらっ、食ったらしっかり働いてもらうぞ」


「は、はいっ!」


リリが涙目のまま顔を上げる。


「何でもします! 働かせてください!」


(……本当に大丈夫か、こいつ…)





翌日から、リリは城で働くことになった。


……なったのだが。


問題が一つあった。


何を着ても、何をしても、妙に目のやり場に困る。


しかも、本人にその自覚がない。


さらに、とてつもなく仕事が出来ない。


これが一番厄介だった。




朝。


調理場に行くと、リリが大鍋をかき混ぜていた。


ゆったりした白いTシャツに、大きめのエプロン。


よほど熱いのか、袖を肩まで捲り上げている。


「ちゃんと働いている様だな」


「あ、魔王様!」


振り向きながら、こちらに手を振る。


その動きで、たわわな果実が大きく揺れる。


捲り上げた袖から横が丸見えだ。


(……………)


「さっき、お塩とお砂糖間違えちゃって全部作り直しって言われちゃいました」


顔に何かの肉片をつけながら、必死に鍋を混ぜ続ける。


「……おい、全部って何百人分あると思ってんだ…」


「次は気をつけます!!」


その後、料理長からリリの移動を懇願された。





昼。


庭では、リリが草むしりをしていた。


オーバーオールに、シンプルなTシャツ。


一見普通だが、動くたびに首元が少し緩む。


「……はぁ……この草、全然抜けない……」


前屈みになって引っ張る。


その拍子に、ちらっと胸元が見える。


本人は全く気づいた様子がない。


「まるで私の借金みたいにしつこいです……」


「こいつっ!…こいつっ!…」


泥だらけで、汗だくで、必死に草をむしっている。


「凄い気迫だな。今度は大丈夫そうだな」


「はい!今度こそちゃんとやり遂げます」


リリがこちらを見上げる。


(……なんだこの感じ)


(この幸薄そうな奴が頑張ってる感じ。なんだか見てると妙な感覚が芽生えてくる…)


妙な考えがよぎり、振り払うかの様に俺はその場を去った。


そしてその後、庭師からリリの移動を懇願された。


庭の植栽も全て抜き切ってしまったらしい。






夕方。


城内の廊下で、リリがモップをかけていた。


メイド服姿だ。


幸薄顔だからか、とてつもなく似合っている。


というか、好みだ。


「……よいしょっ、よいしょっ……」


妙に気合いの入った掛け声。


「どうだちゃんと働けているか?」


「……魔王様」


メイド長が申し訳なさそうに言う。


「先ほどから、魔王様か気に入ってらっしゃった装飾を3つ破壊しています」


「…ま、まあ、いずれは壊れるものだ。多めに見てやれ」


その時だった。


モップを振り上げた拍子に――


引っかかった。


お気に入りの像。


その手に持たれた槍の先に、スカートの裾が。


「あっ――」


ビリッ!!


嫌な音が響いた。


布が裂ける。


後ろ側が、ぱっくりと破けた。


そして、像がリリに向かって倒れてくる。


「ドォォォォォォォォン!!」


リリは卒なくそれを避け、恐る恐るゆっくり振り返っ りながら言った。


「……あの…ごめんなさい」


俺は額を押さえた。


「……お前な」


「す、すみませんすみませんすみません!」


「わざとじゃないんです!許してください!クビだけはなんとか!」


高速土下座をするリリに、俺は深くため息をついた。


(……やっぱりダメか…)


メイド長と目が合う。


これまでにない程の無言の圧力を感じる。これがメイド長の必殺スキル【無言の圧力】か…。


(わかったよ…)


「わかった!わかったから」





翌日。


俺はリリを呼び出した。


「……おい、リリ」


「はいっ!」


すぐに駆け寄ってくる。


どことなく、あざとさを感じる…。




「く、クビですか……?」


「違……っ!」


「嫌です! せめてあと一杯だけご飯を……!」


しがみついてくる。


そして俺の腕を、この世のものとは思えない柔らかさが包み込む。


(……わざとだ…絶対にわざとだ)


意識するな。


「落ち着け」


無理やり引き離す。


「クビじゃない。転属だ」


「……転属?」


「ああ」


俺は、用意していたものと違う服を投げた。


「今日から、お前は俺が管理する」


「……魔王様が?」


場内の外れにある家畜の世話をさせようと思ったが、何故か趣味で集めているメイド服を渡してしまった。


「ああ。お前が仕事をした先々は苦情が溢れる。元はと言えば、俺が勝手に餌付けしてしまった責任もあるからな」

などと口から出まかせがどんどん出てくる。


「魔王様!」

リリの潤んだ瞳がパッと明るくなる。


「ありがとうございます!」


リリは気にする様子もなく、

受け取ったメイド服にすぐ着替えようとする。


が、俺は止めない!

俺は俺の為にリリを手元に置いているのだ!


役得を感じながら、少し恥ずかしそうに着替えるリリを堂々と見る。


【…………】


(ん?何かよからぬ気配が)


リリが背中にあるシャツのボタンに手をかけ、一つ二つと外していく。

「ん、届かない」


「すみません。魔王様、後ろのボタン外すの手伝って頂けませんか?」


「ああ」


俺は役得を噛み締めながらリリのボタンに手を伸ばす。


その瞬間。


【警告:心拍数の上昇を確認。対象との間に『故意の接触』が発生中】 【現在、リア充度……0.1ポイントを検知。微弱な爆発を開始します】

「……は? 待て、嘘だろ。またなのか!?」


ボンッ!!


俺とリリの間でピンク色の爆発が起きた。


「うわぁぁぁっ」

「はぅぅぅぅっ」


流石元勇者だけあって背中は無傷だ。

だが、着ていた服は跡形も無くなっている。



「ちまちま脱がすのが手間だったからな。俺のそばで働くとはこう言う事だ。爆発ぐらい耐えてもらはねば困る」

俺はスキルの事故を誤魔化す為また適当な事を言う。


「はい!魔王様!」


そしてリリは何事も無かった様に渡されたメイド服に着替える。



だがその頃、リリは別のことを考えていた。

(魔王様付きメイド……つまり、専属……)


メイド服を見つめる。


(ご飯も安定……住む場所も安定……)


小さく拳を握った。


(魔王様も初心で扱いやすい)

(これ、もしかして勝ちでは?)

(よーし。これから頑張って魔王様ゲットだぜ!)


「……頑張ります」




リリは着替えたばかりのメイド服の裾をぎゅっと握った。


その目は、さっきまでより少しだけ強かった。


俺はため息をつく。


(……面倒なやつを手元に置いたな)


その時だった。


パチッ。


胸の奥で、嫌な感覚が弾けた。


「……おい、待て」


【微弱なリア充反応を検知】


「なんでだよ」


リリが不思議そうに首を傾げる。


「魔王様?」


「近づくな」


「え?」


一歩、距離が縮まる。


パチパチッ。


「来るなって言ってるだろ!!」


ボンッ!!


小さな爆発が起きた。


「きゃあっ!?」


どうやら、こいつと一緒にいる限り、俺の平穏は終わりらしい。

お読みいただきありがとうございます!

これから魔王と勇者の日々が始まります!

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