鼻が効く妹
俺は自室で寛いでいた。
ドンドン、と乱暴なノックが鳴った。
「はぁ〜い!」
俺は返事した。
扉が開いて、妹が顔を出した。
「兄貴ぃ〜……って、なんか匂う!!兄貴、誰か入れた?」
「いや、入れてないけど……」
声も震え、視線も不自然な程彷徨った。
「嘘臭ぁい。声も震えてるし、視線も彷徨いすぎ……白状しなさぁい!!」
大股で俺の元に歩いてきて、額と額をぶつけてきた。
頭突きだった。
「痛てぇー……凪に話すことじゃ——」
「私に話さず、誰と話すっていうんだ兄貴ぃっ!?」
「……恋人だよ」
「こ、コイビトぅ……兄貴に恋人がいたの!?ママ達には報告したの?」
「してないしてない!!別れるかもしれないし……」
自分で言っていて情けない。
「へ、へぇ〜兄貴が恋人いるなんてねぇ……」
妹が動揺しながら、胸の下で両腕を組んで佇む。
「なんで恋人がいたなんて分かった?」
「知らない匂いがまだあったからに決まってんじゃん」
「俺には匂いなんてしないぞ」
「兄貴の鼻は詰まってんじゃないの!!」
「鼻は詰まってねぇじゃん!!」
「……出来るの?」
「なにが?」
「だぁーかぁーらぁー恋人の振りだよっ!」
「俺しか出来ないのか?」
「そうだよ!!」
「分かったよ、やるよ」
「そ、そう……ありがと」
妹は部屋から出て行った。
制服を着たままだった。
頭突きを喰らった額をさすりながら、ため息を漏らす。
俺は鼻を動かし、残っているという恋人の残り香を嗅ごうとしたが、俺には匂わなかった。




