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キラーハウス狂騒曲  作者: 日暮晶
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第21話 黒原虹華の決断


 ――会議の結果、題材は以前のイベント『コミックラフト』と同じく、『ブラッディ・フール』という、吸血鬼にまつわる現代異能バトル系ライトノベルになった。

 満場一致で決まったのにはちょっと驚いたけど、それだけみんなが好きということなんだろう。……まあ、実際面白いし。ひねくれ者の私としては、素直にそれを口に出すことはあまりないけど。

 が、順調に意見がまとまったのもそこまで――誰にフォーカスを当てた作品を描くかで、会議は中々の盛況を見せた。

「やっぱサラサだろって! メインヒロインの茜なんかどこのサークルでもやってるじゃねえか!」

「いや、『シャイニーリング』に勝ちに行くなら、絶対メインヒロインにするべきだと思いますよ! なんだかんだメインですからね!」

「勝ちに行くなら乳がデカい方に決まってるだろ! 無い乳メインヒロインを据えるよりも表紙の破壊力が格段に違うぞ!?」

 前回のイベントでもフォーカスを当てていた、二面性のある巨乳サブヒロインを推すヘッドと、王道にツンデレ気味のメインヒロインを押す中峰さんの主張。

「……あたしは、樹奈なんかがいいと思うけどなー……」

「霧ちゃんは素直だねぇ~。わたし、推しは未華子ちゃん~」

 霧は幼馴染のサブヒロイン。ときわさんは夢のために頑張ってる日常面でのサブヒロインを推している。……霧、分かりやすいなぁ。と、にまにましてたら睨まれた。

「僕は……セカンドがいいです」

 夕くんが挙げたのは、主人公と戦闘時にコンビを組んでいる相方的存在だ。本名は明かされず、組織から与えられたコードネームでしか呼ばれないため、『セカンド』。いわゆる『おっぱいのついたイケメン』というやつだが――

「セカンドって……それ、サブヒロインですらないじゃん」

「だ、だからこそですよ! 意外性があって面白いと思うんです!」

 中峯さんからの指摘にも、夕くんは怯まない。

 セカンドは、主人公に取って女扱いというよりは戦友扱いで、ヒロインたちとは一つ別のステージにいるタイプの登場人物だ。女性登場人物は全部主人公のサブヒロインになることも珍しくないが、これだけ主人公の近くにいてサブヒロイン扱いされないキャラも珍しいだろう。

 要するに、男らしい女キャラなのである。夕くんが好きそうだ。

 ……しかしまぁ。

「ぜんっぜんまとまりませんね……前の会議もこんなだったんですか?」

 中峯さんに訊ねると、苦笑しながら彼は言う。

「まぁね……前回は、最終的にヘッド権限でサラサに決まったんだ。まあ、余裕をもって取り組みたいっていうのもあったから、早めに決めようってことでね」

「……なるほど」

 ――もしかしたら。

 前にここの同人誌を読ませてもらった時の違和感は、そのあたりにあるのかもしれない。

 私は意を決して立ち上がる。

「ん、黒原どこいくんだ? お前も推しキャラ言っていけよ」

 ヘッドが目ざとく私に声をかけるが、私は嘘をつく。

「あー、ちょっと電話が来ちゃったのでちゃちゃっと出てきます」

「おう。帰ってきたら会議の続きだぜ」

 アパートの一室を出て、財布から一枚の名刺を取り出す。

 ……あまり自分から関わりたい人物ではないけれど、背に腹は代えられない。

 今の喧々諤々の状況を経て前回の同人誌が出来上がったのならば……二の舞は避ける必要がある。

 前にここの同人誌を読ませてもらったときには、僅かに感じた違和感の正体を捉えることは出来なかったけど――『コミックラフト』終了後、『シャイニーリング』の同人誌を読ませてもらって、何となくその正体が掴めた気がした。

 ウチの同人誌は、フォーカスの当たるヒロインが一人しかいないのに、奇妙にまとまりがなかった気がしたのだ。それは恐らく、プロットの段階で各々の意見が――推しキャラの性格などが――多少なりとも反映されてしまっていたから。つまり、みんなヘッドの決定に仕方なく従っていただけで、少しは不満を持っていたのだ。違和感が些細な程度に収まっていたのが、今となっては奇跡のようにも思える。

 逆に『シャイニーリング』の同人誌には、そういうものが一切なかった。キャラはメインヒロインと主人公のみで、原作にはあり得ないシーンながらも、「ああ、こう言うセリフを言いそうだな」と思わされた。

 恐らく、向こうは真に満場一致であの同人誌を作り上げたのだろう。逆にうちはどうだ、一人として同じキャラを推す人間がいない。ハーレム系ラノベを題材にすることの宿命と言えるかもしれないが――

……それでは、『シャイニーリング』には勝つことは出来ない。このままいけば敗北は必至。

 ならば当然、アドバイスを受ける必要がある――それがたとえ、商売敵であってもだ。

 電話番号を入力し、耳に当てる。数回のコール音のあと、歓喜に満ちた声が耳元で轟いた。

『あぁっ、こんな素晴らしい日が来るなんて! わたくしに何か御用ですか!? 写真ですか!? 写真のご用命ですか!? 写真のご用命ですね今すぐ会いましょう!』

 うるっせぇな、という感想を飲み下して、早急に用件に入る。

「違う――と言いたいところだけど、場合によってはそれも許可するわ」

『…………っ!?』

 電話の向こうで、息を呑む声。

「代わりといっちゃなんだけど、少し相談に乗ってほしいことがあるわけ――今、大丈夫?」

『水臭いことを仰らないでください! わたくしと虹華さんの仲ではありませんか!』

「あんたとそんな深い仲になった覚えはないけど――今だけは感謝するわ」

『構いませんよ! して、相談とはなんですか? なんでも仰ってください!』

 ……電話の相手は、『コミックラフト』で縁の繋がった魚の目フェチ。

『シャイニーリング』所属、青海椎!



さぁ、盛り上がってまいりました。

自分、こういう展開大好きなんですよ(自給自足)

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