プロローグ
プロローグ
「ねぇ、君死ぬの?」
ビルの十二階屋上で落ちるか落ちないかの状態で端っこに立つ少年に、十メートルぐらい離れている場所から、ツインテール少女が問う。
冷たい風が吹き荒れる十月。
少年は驚きを隠せない表情をしている。少女がいつからそこにいたのか気付かなかったからだ。だが、それも数秒で少女がいようがいなかろうがどうでもよかった。少年は飛び降りる為に来たのではないからだ。
「死ぬ気はある。でも、死ねない」
「どうして?」
なぜか微笑みながら少女は言う。
「飛び降りる勇気がないからかな。死の恐怖ってやつに負けて、ただ辛い人生を送ってるだけのダメ人間だな」
寂しげで遠い目をして空を仰ぐ。
「辛いの?」
少しづつ笑顔で、少年に近づく。
「あぁ、とても。いじめってやつだよ。毎日毎日殴る蹴る、物にイタズラされて休みでも呼び出されてパシリにされる」
「この世界は嫌?」
「あぁ、地獄としか思えないし嫌いだね」
「よし! じゃ、飛び降りよう!」
右手をグーにして真っ直ぐ伸ばし、今すぐゴー、と言わんばかりの行動をしている。
「えっ? いや、だからそれが怖くて出来ないのに」
「私が手伝ってあげるよ!」
「は?」
意味が良くわからない、といった表情で、少しマヌケにも見える。
「この世界は嫌なんでしょ?」
「あぁ、だからって死後の世界には行けないって」
「大丈夫! 死なないし、とても君にとってはいい世界に連れて行ってあげる!」
言ってる意味が全然まったく少年は分からなかった。理解できないし、どう会話していいのかすら怪しくなってきている。
「連れて行けるものならやってみろ」
「いいの!」
バンザイをしながらピョンピョン飛び全身で喜びを表している。
五メートル離れたところから少女は全速力で少年に向かって走ってくる。
冗談で話していると思った少年は動揺を隠せない。どうしていいのかも分からずただオロオロしていたら、少女は目の前にいて体当たりで少年にアタック。
宙に舞う少年。
少女も後に並んで宙に舞う。
少年はこの時死を悟った。こんな可愛い女の子と一緒なら悔いはないと目を瞑ろうとしたとき。
「じゃ、私の住む世界に行くよ!」
落下しながら、少年の右手を少女は両手で掴む。
目を瞑ろうとしたが一気に目が開く。だが、すぐに気を失い闇の中に行った。




