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優しさ

ガシ、ギシ。

廊下が軋む。手すりは所々壊れている。

「キーファ、2階って言ってたけど」

ラギアは一歩一歩廊下を歩く。そのたびに2階中に軋んだ音が響く。

ギッ、ギギィ、ギシ。


「とりあえず、ここかな」

5つの部屋のうちの1つ。

ゆっくりとドアノブを回すが、そこは、緑の壁紙の部屋だった。

「…違う。キーファは、ピンクって言ってた」

部屋から出ようとしたそのとき。

「あぅあ…ぐぶ…」

後ろから苦しげな声が聞こえる。

「たす、けーて…あぐう…」

その声は幼い声だった。でもここには生きている人間はいないはず。

自分しか、生きていないはずなのだ。


そのままドアを開けると、「裏切り者ぉぉぉぉぉぉ!!」と叫ぶ声が聞こえた。

それも後ろから。

ラギアは急いでドアを閉めたが、ドン、ドンとドアを叩かれる。

「あけろよ!お前のせいだ、お前が悪いんだ!」

一体何のことかわからない。しかしドアを叩く音は強くなってきている。

今は、逃げなくちゃ。


ダァン!という音がして、ドアが外れた。

そこには誰もいなかった。






ダァン…

部屋の外から聞こえた音。

ラギアは、びくりと身体を震わせる。

一か八か逃げだし、そして、ピンクの壁紙の部屋に入れたまでは良かった。

キーファを探そうと思ったが…。

あの音を聞いて、咄嗟にクローゼットの中に身を潜めたのだ。

裏切り者と言ったあの声は、絶対にラギアを追いかけてくるだろう。

そうでなきゃドアを壊すわけが無い。


ギシギシギシギシギシ

すごいスピードで外の廊下を歩く音が聞こえる。

「どこだ、裏切り者」

自分の目の前で聞こえた声。

いつのまに部屋に入ったのだろうか。

恐怖という闇が彼女を包む。

心臓の鼓動が外にいる何かに聞こえてしまっているのではないか?

もしかしたら、機会を狙っていて自分を襲うのではないか?

そんなことを考えてしまう。

「…いない」

その声が聞こえたとき。ラギアはゆっくりと、静かにクローゼットをあけた。

でも。

「ははは、見つけたよ」

声の主がいた。


幼い声だというのに、それは大男だった。

恐怖に一瞬怯んだがすぐに駆け出した。

「待て、逃がさない!」

男の手をすり抜けて部屋の奥に逃げ出す。

走り出したそのとき、グッ、と足を引っ張られる。

「え…キャァァァア!!」

そのまま落ちていく感覚が、ラギアを襲った。


ドサ、という音がして、目を開けた。

「痛くない?」

優しそうな声。キーファだ。

「キーファ…?」

「うん。僕だよ。……男の声が聞こえたから何かと思ったんだ。

そしたらおねぇちゃんがいて、思わず足を掴んで引っ張っちゃった。

ごめん、怪我してない?足とか、挫いてない?」

「大丈夫だけど、ここは?」

きょろきょろと辺りを見回す。

小さな子供なら難なく入れそうな空間だ。

「ここはね、ルファイアの子供たちの隠れ場所なんだ。かくれんぼをしても、

親に怒られてもここに隠れれば見つからないんだ。

でもピンクの部屋からしか入れなくて。よかったね、僕がここにいて。

ここにいなかったら、おねぇちゃん死んでたんじゃないかな?」

笑顔で言われる。

相変わらず怖いことを平気でいう子だと思った。


「……あんなのがいるなんて思ってなかった。

これじゃあかくれんぼできないね」

「え?でも…」

「いいよ、僕、久しぶりに楽しかったから。

おねぇちゃん、ちゃんと僕を見つけてくれたもん。

だからおねぇちゃんの勝ちだよ。ほら、喜んでよ」


キーファの言いたいことがわかった。

ラギアを単なる遊び相手としてではなく、純粋に姉のように思っている。

だからあんな奴に殺されてはならない。

大切な、姉だからと。

キーファなりの優しさ。

「じゃあ、約束果たさないとね」


暗闇の中、キーファは動き出した。

「おねぇちゃん、こっちきて。出口、こっちなんだ」

「え、あ、うん」

まだ目がなれない。

ゴツッ

「痛ッ」

頭をぶつけた。

「おねぇちゃん?こっちこっち。そこは壁だよ」

キーファを追っているつもりだったが、どうやら壁に向かっていたらしい。

クイクイ、服を引っ張られながら進む。

「もう、おねぇちゃんは」

そう笑われながらも、不思議と怒る気にはならなかった。

どこか懐かしい、前から知っているように思えた。


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