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数日が経過した。


小宮家の応接間には、あの時と寸分違わぬ光景が横たわっていた。

床の間の白百合は瑞々しい蕾へと差し替えられ、卓上の湯呑みも以前と同じ位置に据えられている。

小宮の威厳を象徴する龍の精もまた、定位置にわだかまったまま微動だにしない。


その一切の変動を拒絶するような空間の中で、ふいに、龍が片側の瞼を鋭く跳ね上げる。

それが予兆となり、重いふすまがくぐもった音を立てて開いた。


「……戻りました」

「お疲れ様」

京太郎のねぎらう言葉もそこそこに受け取り、小宮家の当主・静は、

息子の正面へといそいそと腰を下ろした。


京太郎の目元は、隠しようもなく赤く腫れ上がっている。気取られたくはなかったが、

この距離で誤魔化せるはずもない。だが母は、その痛々しい痕跡に一切触れようとはしなかった。

氷のように澄んだ視線が一度だけ息子の顔を掠め、すぐさま手元へと落とされる。

その徹底した沈黙こそが、過酷な退魔の道を歩む母から息子へ向けられる、

精一杯の不器用なやさしさなのだと京太郎は理解していた。


「……五家の緊急会合は、『叢』計画の継続を互いに確認し合うだけの、報告会に終始しました。三家からは特別の被害報告は上がっていません」

着座と同時、静は猶予を与えず、会合の結果を話しはじめた。


「叢の運用方針にも、これといった変更はありません。ですが……私はその足で、轟の陣営と改めて膝を突き合わせてきました」

静の目が、まっすぐに京太郎を射抜く。

「反三世院を目的とした共闘体制――それを小宮と轟の間に結ぶ、正式な盟約へと昇華させました」


京太郎は、用意された湯呑みから立ち上る湯気をただ見つめ、決して手は伸ばさなかった。

「……あの爺さんは、どうしてる」

「堪えておられます」

静の声から、感情がすっと引いた。引いたのではない。意図的に遠ざけたのだ。


「数少ない跡継ぎ候補を、あのような形で失った。今はご自身でも抑えのきかぬ状態にあると、

お見受けしました」

京太郎は、あの老翁の姿を思い浮かべた。葬儀の場で巌のように座していた、

あの拳。あの目。あれがさらに深く沈んだ先に、何があるのか。想像することさえ憚られた。


「ですが、時は待ちません」

静の声が、再び硬質なものに戻る。

「轟家は、叢に送る次の候補を立てねばならない。しかし明夜斎殿には、もはやご自身で人選をなさる気力が残っていなかった」

静は一度言葉を切り、次の一語を慎重に置いた。

「話は、修春おさはる氏が引き継いでくださいました。修斗君の叔父にあたる方です。何人かの名を挙げていただき、後の選定は小宮に委ねると――そう仰いました。それだけでした」



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