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そこからの記憶は、断片的だった。

京太郎の意識は、時間の流れから切り離されていた。場面と場面の間を繋ぐはずの脈絡が欠落し、

ただ、奔流のようなイメージの欠片だけが、順序を失って押し寄せてくる。

脳が現実を一度に処理することを拒み、フィルムを鋏で刻むように、場面だけを切り取っているのだ。


――修斗の葬儀の場。

それは、現代の日本人が知るいかなる葬儀とも似ていなかった。

仏式の読経もなく、神葬祭の祝詞とも異なる。陰陽の一門に受け継がれてきた弔いの式は、

より古い、より土着的な層に根を下ろしていた。アニミズムの原型が、

儀礼の端々に剥き出しのまま残っている。


祭壇を飾るのは菊ではなかった。名も知れぬ山野の草花が、束ねられもせず、

根から引き抜かれたままの姿で、土のついた茎ごと祭壇の上に横たえられている。

香は焚かれていない。代わりに、生木の丸太が会場の四隅で燻っていた。樹皮が焦げる匂いが、

煙とともに重く低く天井に淀み、参列者たちの髪や衣服に容赦なく染みついていく。


その煙の下に、轟明夜斎が座していた。

巌のように。


あの激しやすい老翁が、微動だにしない。背筋は板を呑んだように真っ直ぐで、

膝の上に置かれた両の拳は、骨が白く浮き出るほど固く握り締められていた。指の関節がひとつずつ数えられる。あの拳はもう何時間もあのままなのだと、京太郎にはなぜかわかった。

怒りなのか、悲しみなのか。おそらくその両方がとうに溶け合い、区別のつかないマグマとなって、

老いた身体の奥底に封じ込められている。


老翁の目は、一点を見据えて動かない。祭壇でもなく、遺影でもなく、煙の向こうでもない、

この部屋のどこにも存在しない一点を、ただ見ている。その視線の先にあるものが何なのか、

京太郎には見えなかった。見えなくてよかったと思った。


――参列者たちの声。

押し殺した囁きが、そこかしこから湧いている。京太郎の耳は、

それを拾いたくないのに拾ってしまう。鼓膜に貼りついた虫のように、振り払えない。


『……呪詛殺しだそうだ』

『三世院が、ついに牙を剥いたか』

『いや、轟の家中の争いだろう。修斗様では、あの家は背負えぬと――内から手を回した者がいる』

『……叢行きを苦にして、自ら命を絶ったともっぱらの噂だ』

『まさか。あの気性の若者が』

『遺書はないそうだが――』

声が重なり、混じり、やがて個々の言葉が意味を失って、ひとつの低いざわめきに溶けていく。

京太郎はその渦の中に立ち尽くしていた。


どの囁きも、修斗の死を自分たちの物語の中に回収しようとしている。

呪詛。暗殺。権力闘争。自死。四つの説が、四つの方角から差し出されて、

そのどれもが、差し出した者にとって都合のいい形に整えられていた。


修斗という人間は、その筋書きの中ではただの駒の名前になっている。



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