夏の終わりに
暑さも落ち着いてきて、朝晩は少し涼しくなってきた。冬坂と楽しい思い出を作った夏。
それも、もう終わりだ。
今日は8月20日。
冬坂とこの夏、最後の思い出を作る日だ。
俺は少し緊張していた。
買ったばかりの風通しのよい服を着て、意気揚々と夏祭り会場に来たが、こんなことは初めてで、高揚感と不安が入り混じっている。
待ち合わせ時間に少し遅れて、冬坂がやって来た。
「....遅れてごめん。浴衣に手間取っちゃって」
冬坂は紺地に淡い朝顔の柄が入った浴衣を着ていて、髪を少しだけ上げていた。
とても素敵だった。
「そ、それじゃ行こうか....」
俺たちは二人並んで歩き出した。
下駄の音が石畳にカランと響く。
焼きそばの匂い、りんご飴の赤、遠くから聞こえる太鼓の音。
俺は次第に夏祭りの雰囲気に呑まれていった。
「何か食べる?」
俺は冬坂の綺麗なうなじに目をやっていて、応えるのが遅れた。
「だっ、大丈夫。まだお腹空いてないや....」
「じゃあ、私かき氷食べようかな」
そう言って歩き出すと、冬坂の手が俺の手にほんの少し触れた。
気のせい、だよな?
かき氷を買うと、俺たちは、ベンチに腰を下ろした。
「夏も終わりだねー」
「....うん」
俺たちはその後、無言でしばらく一緒にいた。
すると、上空に大きな花火が上がった。
赤や青、綺麗な色の花火が次々に上がり、それはまるで夢のような光景だった。
花火を見つめる冬坂はとても美しかった。
「ねぇ、夏木。アルバイトしようよ」
「え!?、いきなり何?このシチュエーションで」
「お金貯めて、色んな所行って、たくさん夢みたいなことするの」
夏木の瞳に涙が浮かぶ。
「....いいよ!それ、やろう必ず」
「うん....」
こうして、俺たちの夢のような夏は終わった。
夢で繋がった冬坂と俺。
けれども、俺はもう夢の中だけを見てはいない。
おわり
最後までお読みいただきありがとうございました。
世界と少しでも繋がりたい、という思いで小説を書きました。
また書きますので、よろしくお願いします。




