一緒に帰ろう
「じゃ、頼んだぞ」
教室の中、夏木はワックス掛けをやっていた。
冷房はついていないため、汗だくだ。
お昼に飲み残した水を飲んで、暑さを凌ごうとしている。
夏木は少し悲しくなった。
すると
「夏木!一緒に帰ろ」
隣のクラスから冬坂が来た。冬坂もワックス掛けをしていたのだろう、セーラー服が汗で滲んでいる。
「おっ....おう」
冬坂は教室を見渡し
「おう、じゃねぇ。なに一人でやってだ!」
夏木は笑いながら
「みんな、どこかに行っちゃって」
「ばっくれかよ!クズどもが」
冬坂はモップを手に取ると、ワックス掛けをし始めた。
夏木の瞳にうっすら涙が浮かぶ。
「ありがとう....ありがとう」
その後二人は黙々とワックス掛けをした。
ワックス掛けが終わり、二人は窓の近くで水を飲みながら涼んでいた。
冬坂がおもむろに話し始めた。
「ねぇ、なんて夢日記なんて書いてるの?」
夏木は少し考える。
「まあ、楽しみだから」
「ふ〜ん」
「俺さ、ずっと楽しみが無くてさ、みんなと同じ様にスマホゲーやったり音楽聴いたりしたけど、全然楽しめなくて」
「そんで?」
「ある日、朝起きた時、あ!夢って楽しいなって思って。それから」
冬坂は夕日に染まった空を見上げながら
「....ふ〜ん。いいじゃん」
涼しい風が二人の間を吹き抜けた。
「帰ろ。一緒に」
夏木は思い出した。イオンにある放置自転車を無料でもらう予定だったのだ。
「冬坂ごめん!今日は自転車もらうことになってて!また明日」
そう言い残すと夏木はかけ足で教室を出て行った。
「自転車?....バカ....」




