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プロローグ① ターマハラからの伝言

「こんにちは。私は『ナミカ』と申します。」


長い黒髪を背中に流した若い女性が、静かにそう名乗った。

年若く見えるその姿とは裏腹に、その佇まいには不思議な落ち着きと気品があった。


ナミカは静かにお辞儀をし、語り続けた。


「これから、我らが母性ターマハラの辿ってきた歴史を、簡単にお話しさせていただければと思います。

少々退屈かもしれませんが、どうか、ほんのひとときお付き合いくださいませ」


そう言うと、再度お辞儀をし、微笑みを浮かべて天を仰ぐ。


「──あぁ……ターマハラの主祭神よ……

我に、人類の歴史を語る機会をお与えください」


そう言って正面を向くと、ナミカは静かに、しかし凛とした表情で語り始めた。


——————


宇宙は、混沌から始まりました。

その時、時間も空間も、まだ区別されてはいませんでした。


ある瞬間、相転移が起こり、宇宙の対称性は崩れました。

そこから時間と空間が生まれ、重力が誕生したのです。


高密度・高温の状態から、宇宙は急激に膨張し、やがて冷え始めました。

星々が形成され、銀河が生まれ、生命を宿す星が誕生していきました。


その生成の過程の中で、

我々が住まう星──「ターマハラ」が生まれたのです。


我々の母なる大地、ターマハラ。

ターマハラ……あぁ、なんと愛おしい星でしょうか。


人類が誕生してから、約一千万年。

その間に、数多の文明が興り、国家が生まれ、そして滅びていきました。

栄えた国もあれば、歴史の闇に消えた国もあります。


約二万年前。

人類最初の統一王朝──「ワ」が誕生しました。


「ワ」の成立により、長きにわたる平和の時代が訪れました。

……しかし、約一万年前、「ワ」の国は分裂し、分裂王国時代を迎えます。


やがて、分裂王国の中から、

先進的な技術、経済、そして軍事力において秀でた五つの王国が現れました。


この時代を、五大王国時代と呼びます。

五大王国の王族は、かつての「ワ」の王族の血を引いていたと言われています。


五大王国時代、科学技術は大いに発達し、

餓死や病死の割合は激減しました。


その結果、人口は爆発的に増加していきます。

それは、次なる困難の序章でもありました。


食料危機、不法移民、環境汚染、所得格差──

様々な問題が発生し、民衆の不満は高まり、

世界は次第に混乱していきました。


「第一次五大王国戦争」。


約六五〇〇年前の出来事です。

核兵器が使用された世界大戦が勃発しました。


その結果、当時の人口の七割以上が失われたと言われ、

勝利者なきまま、戦争は終結します。


しかし、「第一次」と名付けられている通り、

五大王国戦争は、そこで終わりませんでした。


この戦争による被害は甚大で、

完全に復興するには、数千年の歳月を要しました。


復興後も各国は次なる戦争に備え、

核兵器への対抗策を強化し、

さらには核に代わる新たな兵器の開発に心血を注いでいきます。


そこで生まれた兵器は、二つ。

ウイルス兵器、そして人工知能兵器です。


ウイルス兵器に感染した者は、やがて死に至り、

さらに人への感染を誘発します。


人工知能兵器は、人間を模倣した思考処理を組み込んだ機械兵器です。


これらの兵器を用いた戦争が小規模に頻発し、

世界は次第に疲弊していきました。


長く、暗い時代が到来します。


ウイルス感染への恐怖。

いつ、どこで人工知能兵器に狙われるか分からない恐怖。


その恐怖は増幅され、

やがて、次なる大戦へと人類を押し進めていきました。


約二千年前。

「第二次五大王国戦争」が始まります。


五大王国のうち、二つの王国が連合した「二国連合」と、

三つの王国が連合した「三国連合」との戦いでした。


この戦争で、人類は人口の約八割を失ったと言われています。

現在に至るまで、その傷跡は完全には癒えていません。


この戦争を契機に、人類は遺伝子最適化技術を用い、

自らの遺伝子を「優勢」なものへと最適化していきました。


その過程で不要とされた遺伝子は排除され、

より健康で、より優秀な個体となるよう、遺伝子は組み替えられていきます。


また、人類の生殖にも大きな転換がもたらされました。

従来の男女の交配による生殖は廃され、

すべて政府が人口を管理し、必要な数の人類を供給する体制へと移行します。


さらに、感情の抑制処理も施されました。


こうして、今の人類社会が形作られていったのです。


そして、勝利した「二国連合」を基礎として、

新たな統一国家が誕生しました。


その統一国家こそが、

現在、我々が属する国家──「ヤマト」です。


統一国家「ヤマト」の建国をもって、

「ヤマト暦」が始まります。


ターマハラ最初の統一国「ワ」は、

大きな「和」となり、「ヤマト」として再び蘇ったのです。


その後、技術はさらに飛躍し、宇宙移民が開始され、

現在では五つの「世界」が存在しています。


一つ目の世界は、母星「ターマハラ」。

二つ目の世界は、ターマハラ内惑星「カムツキ」。

三つ目の世界は、ターマハラ外惑星「タカギ」。

四つ目の世界は、惑星「ヤミ」。

そして五つ目の世界は、惑星「ヨミ」。


しかし、ヤマト暦一一一八年。

「ヤミ」と「ヨミ」は軍事同盟──

「ヨモツクニ同盟」──を結成し、

ターマハラ、カムツキ、タカギの「ターマハラ同盟」

に対して独立宣言を行いました。


これにより、第一次世界戦争が勃発します。


戦争は三八五年間に及び、

ヤマト暦一五〇三年、戦争は終結。


「ヤミ」と「ヨミ」はターマハラ連合に勝利し、

独立を果たしました。


そして戦争終結後、

新たに開発された兵器の一つとして

「生体鎧」が登場します。


生体鎧とは、搭乗者と完全に同一の遺伝情報を組み込まれた

生物機械兵器であり、

搭乗者の脳と神経結合することで、

自身の意思のままに操ることが可能となります。


生体鎧は、身体能力をあらゆる面で強化し、

宇宙空間での行動も可能とし、

戦闘においては圧倒的な性能を発揮します。


また、生体鎧には人工知能も組み込まれており、

様々な補助機能の恩恵を受けることができます。


現代の戦争において、

生体鎧は欠かすことのできない存在となっています。


——————


一旦ここまで語り終えると、ナミカは深く一礼し、

やがて顔を上げ、静かに告げた。


「ここまでお聞きくださり、ありがとうございました。

ご清聴に、心より感謝申し上げます」


「第一次世界戦争が起こる手前までの歴史を簡単にご紹介しましたが、

皆さんは、どのように感じられたでしょうか?」


「人類は、本当に多くの戦争を経験してきました……」


「戦争が終わっても、次なる戦争が待ち受けています。

この螺旋を断ち切ることは、容易ではないかもしれません……」


「ですが私は、人類にとって本当に何が幸せなのかを、考え続けてきました」


「人間性を失ってまで戦争を続けることに、

果たして意味があるのでしょうか」


「人間は、人工知能でも、機械でもありません。

感情を持っています。

それは、長い歴史の中で培われてきた、大切なもののはずです」


「それを忘れてしまったら……本当に、終わってしまう」


「だからこそ、この感情を、もう一度皆さんに知っていただきたい。

そう思い、この伝言を残しました」


「この記録を見ている皆さんに、

もう一度、考えていただきたいのです」


「私は信じています。

信じる心を持てることも、人間の在り方だと」


「……忘れたくはありません」


「すみません。少し感情が高ぶってしまいましたね。

話を戻させていただきます」


「第一次世界戦争終結から五五〇年後、

さらに大きな戦争が、人類を待ち受けています」


「第二次世界戦争……」


「この戦争で、人類はどのような結末を迎えるのでしょうか」


「もしご興味がございましたら、

これから続くターマハラの歴史を、ぜひお読みくださいませ」


深々と一礼し、

ナミカの伝言は、静かに終わりを告げた──。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

本作は、神話的要素とSF的要素を織り交ぜた物語として構想しています。


今回は、物語の世界観を中心に描いたプロローグとなります。


次回は「プロローグ② 開戦」となります。


物語のテンポを抑えすぎることなく、

よりドラスティックに展開させていく予定です。


引き続き、お付き合いいただけましたら幸いです。

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