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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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勝てる相手    【甲武信学園監督 視点】

●甲武信学園 監督



「今日の相手は、県立の連合チーム?よくここまで、残ったな」


ろくに監督も部員もいない県立高校の野球部が、2回戦でシード校を破るのは、そうないことだ。


「甘利が負けたのか?甘利はどうしちまったんだ?」

「主力が怪我で出場できなかった見てえだな」

「県立に負けるほど、弱体化してんのか。情けねえなあ」


部員全員が、甘利が上がってくると思っていたようだな。まさか、シードの甘利が、県立の連合に負けるとは誰も思わない。

主力が怪我で出場できなかったというのが利いたのだろう。

県内トップ3に入るような強豪校でもない限り、人材豊富というわけにはいかない。シード校とはいえ、甘利は県内でそこそこ強いという程度だ。主力が抜けた穴を埋められるほど選手層は厚くない。主力が抜けてしまえば、そこらの一般校より少しうまい程度になり下がる。

集まりすぎているんだ。上位の強豪校に、うまい連中が。

うちでさえ、選手集めは一苦労だからな。全国で通用するレベルに達しているのは、せいぜい9人ほど。ギリギリで戦力を維持している状態だ。


「運よく勝ち上がってきた連合ちゃんには悪いけど、軽くひねらせてもらうかなぁ」


すっかりリラックスしちまったな。うちの連中。

相手が県立の連合で、さして強くないとなると、やる気も起きないのは仕方ないが。



うちが先攻。北仙丈・帯那連合が守備につく。


「あれが向こうのピッチャーか」


なかなかにガタイがいい。なるほど、甘利の攻撃を抑えられるくらいのピッチャーはいるわけか。


「こりゃまた、イケメン」

「野球やるより、モデルとかのほうが向いてんじゃねえか?」

「顔採用ってやつ?」


準備投球に入る相手投手に、からかい半分のヤジを飛ばす部員たちに、呆れてタメ息が出る。

まったく、身体は鍛えられても、中身はまだまだガキだ。

礼節に厳しかったのも昔の話。今は表面だけ取り繕っているにすぎない。

今の子供は、あまり厳しくしすぎると逃げるし、すぐにハラスメントだの言いだす。この程度のことで叱っていては、部を維持していけない。自分が若い時には、なんて考えても意味がない。

幸い聞こえてないらしく、相手投手は気にした様子もなく、準備投球をはじめ……


「っ?!」


なんだ?あのピッチャー……

スピードが……


「……ぉ、思ったより速いな」

「まあ、甘利に勝ったくらいだ、少しはやるか……」


ベンチがざわついてしまっている。

少しはやるなんてもんじゃない。あのフォーム。あれは……

まずいな。選手の意識を変えさせなくては。


「準々決勝だ。弱いチームなど、残っているはずないだろう。甲子園に行きたいなら、侮らずにベストを尽くせ」


選手たちの動揺を打ち消すように、手を叩いて意識を拡散させ、ざわつきを消す。

連合チームということで、見くびっていたのは、俺もだったな。あれほどの投手がいるなど想定外だ。


「深澤、頼んだぞ」


キャプテンの深澤の顔を見たら、こわばった顔つきのまま微動だにせず相手投手を見つめている。思った以上に動揺しているな。先ほどまでの余裕はなくなっている。

深澤には、冷静になってもらわんと。うちの支柱であり、攻撃の要。

深澤の肩に手を置き、落ち着かせるように少し力を入れ掴む。


「深澤、お前なら打てる。落ち着いていけ」

「はい!打ちます。こんなところで、終わるつもりはありません!」


深澤は意図を汲んでくれたらしい。他の部員に聞こえるように大きな声で返事をしてくれた。

深澤なら大丈夫だ。フィジカルだけでなく、メンタルも強い。

あのピッチャーから点を取らなければ勝てないのだから、打ってもらわないことにはな。

……不動静真、聞いたこともない名前だが……

あんな伏兵がいたとは。

一番バッターがボックスに立つと、サイレンが鳴り響く。

試合が始まった。


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