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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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2回戦     【鞍掛秀俊視点】

●鞍掛秀俊


2回戦の相手は、私立甘利高等学校。

甘利はシード校だけあって、侮れない。


「それじゃあ、頑張ってね。鞍掛くん」


千々和先生に背中を叩かれ激励される。


「え?どういうことですか?ピッチャーは静真……」


甲府の球場についてから、衝撃的な事実を知らされた。

今日の試合も、俺がピッチャーをやる?どういうことだ?


「今日の試合では、オレはキャッチャーを務めます。しっかり、リードしますんで、任せてください」

「いや、いや、いや、そういうことじゃなくてだな」


静真の笑顔に釣られて、つい頷きそうになったがおかしいだろう。


「もう、メンバー表はだしたから。今更、変えられないからな。覚悟決めろ」

「なんで、キャプテンの俺が知らないうちに、そんなことになってんだ?」


和泉、いっしょに今日の試合の打順や守備を決めただろう?あれはどうなったんだ?

佃がオレの肩に手を置く。


「甘利の主力が怪我で出られなくなったって聞いてさ」


それはオレも聞いてる。


「2回戦で静真が投げると、この先、大事な時に球数制限になっちまう可能性があるからさ。なるべく、温存したほうがいいんじゃないかって、和泉と話し合ってな」


佃が積極的に話し合いに参加してくれるのは、いいことだよ。

でもさ、キャプテンの俺も話し合いに入れろよ。


「2回戦で負けたら、次がないってことわかってるか?」

「1回戦での奮闘ぶりなら行けるだろう。静真も賛同してくれたし」


……佃、俺の賛同は?


「いや、だって、相手はシード校ぅ」


静真をなるだけ温存したいというのは、俺だって賛成だ。先のことを考えたら、1球でも投げる回数を減らしたい。

でも、俺が投げて負けたら、そこで終わりなんだけど!

甘利高は守備型の高川高とは比べ物にならないほど、OPS(出塁率+長打率)の高いチーム。そんなチーム相手に、オレの球が通用するわけないだろぉ。

和泉に訴えかけるが、笑顔を張り付けたまま表情を変えない。


「大丈夫。秋の大会で活躍したスラッガーが出場できないなら、甘利の攻撃力は駄々下がり。鞍掛でもいけるって」

「静真の負担を減らすには、この試合、鞍掛が投げるしかないんだよ」


佃と和泉が畳みかけるように言いくるめようとしてきやがる……

静真の名前を出すのは卑怯だろ。


「大丈夫です。オレを信じてください。打たれないリードをして見せます。それに、打たれても、後ろには7人の味方がおるんです。簡単に点はやりません」


静真の自信に満ちた目で見つめられると弱い。

静真のリード。後ろには7人の味方か。……確かに、俺だけの力なら無理でも、静真のリードがあれば……

打たれはしても、守備さえしっかりしてくれていれば、なんとか……


「……そうだな。一人でやるわけじゃないんだよな。打たれても、みんなが守ってくれる」

「おう、任せろよ。しっかり守るからさ」


佃が胸をトンと叩くと、後輩たちも同意を示してくれる。

頼もしくなったもんだなぁ。1年前とは違うんだよな。


「大地だってルール、しっかり覚えたものな。もう、守備も任せて安心だよな」


常永との練習試合の時は、ルールもわからなかった大地だけど、今は。


「ルール?なんのじゃ?」


大地が怪訝な顔で、俺を見てくる。

いや、なんのって……


「……静真ぁ?大地が……」


お兄ちゃん、大地は大丈夫なんだよな?ルールを教えたんだよな?


「打たれんよう投げればええんです」


ん?静真?


「静真ぁ、言ってること変わったよな?まさか、大地にまだルールを教えてな……」

「打たれんよう投げればええんです。さあ、投球確認しましょう」


静真が目を合わさない。


「まあ、ピンチになったら静真と交代していいからさ。頼んだぞ。キャプテン」

「目指せ!ノーヒットノーラン!」


グラウンドに出ていく部員たち全員、俺と目を合わさない。

さっきまでの頼もしさは、どこ行ったんだよ。


「ワシに任せればええ」


俺の肩を叩いて、颯爽とグランドに出ていく大地の背中は頼もしく見えるけど……

大地が唯一の不安なんだけどぉ。




全国高校野球選手権 山梨大会 2回戦

県立北仙丈・帯那連合 対 甘利高等学校


何とか、勝利。



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