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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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55/73

役目     【鞍掛秀俊視点】

●鞍掛秀俊キャプテン


試合終了


県立北仙丈・帯那連合 6-2 県立高川高等学校



「よっしゃー!1回戦突破!!」


ベンチに戻る前に、みんなが俺の背中を叩いていく。


「鞍掛キャプテン!おつかれさまー!」

「やったな!勝利投手!!」

「キャプテンの好投のおかげだな。これなら2回戦も鞍掛がピッチャーで行けるな!」


ねぎらってくれるのはうれしいが、佃の冗談は笑えない。


「勘弁しろよぉ。静真のアドバイスでなんとかなっただけで、ヒヤヒヤもんだったんだから」


何度もピンチになったこと覚えてるだろう?

あれだけ打たれて、点が2点だけっていうのは、守備と運のおかげ。

マウンドの上で、何度、逃げたくなったことか。


「勝てたのは、みんなのおかげだよ」


打たれても後ろに任せれば大丈夫と思えたから、投げ続けられた。


「ほうじゃ、感謝することじゃあ」

「大地ぃ、全打席、空振りだったのに偉そうだぞ」


久慈が呆れたように、大地の背を叩く。

大地はどんな時でも大地だよなぁ。ほっとするというか。緊張感がなくなるというか。


「うわっ!雨が降ってきた!」


芦崎の声に釣られて、空を見上げる。どんよりとした灰色の雲が、空一面に広がっている。

ぽつりと顔に雨粒が当たった。


「みんな、雨に濡れないようにねぇ。風邪をひいたら次の試合に響いちゃうからぁ」


ベンチから呼びかける千々和先生のもとに、駆け足で向かう。


「試合後でよかったぁ。タイミングよすぎねえ?」

「ヤマノカミサマが雨降らすの待ってくれてたのかもな」


本格的に振り出した空を見上げながら、1年たちがかわいいこと言ってるな。


「メルヘンに生きとるのう」


一人だけかわいくないこと言ってるのもいるな。


「みなさーん、クールダウンとストレッチ、忘れずに!特にキャプテン!投球後のクールダウンは念入りに!」

「おう、念入りにやります」


マネージャーに言われる前に、やらなくちゃいけなかったな。キャプテンがお手本にならなければ。

クールダウンにキャッチボールは、……雨が降ってるから、無理か。

さっきまで試合をしていたグランドは、雨で色が変わっている。

誰もいなくなった球場は、静かだな。土埃と雨の匂いが混ざって……。夏の匂いだ。


「勝ったんだなぁ。オレが投げて」


……なんか、こう、湧き上がってくるものがあるな。なんだろう?充実感?達成感?

俺なんかが投球練習しても、たいしてうまくなることないし、無駄に思えることもあったけど……

無駄じゃなかったんだな。

俺は投手としての役目を果たせた。次につなぐことができた。

1年の時も、2年の時も、一回戦負けだったけど、今年は次にいけるんだ。

次の試合がある。次の試合が。

次の試合では、静真が投手として投げることになるだろう。

静真につなげることができた。役目は果たせた。


「……キャプテ~ン、クールダウン一人でできないなら手伝いましょうかぁ?」

「え?出来るよ。できる。すぐにはじめるよ」


マネージャー、目ざといな。

浸ってる場合じゃないか。クールダウンをやらなくちゃな。俺たちには、次があるんだから。



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