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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第二章

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元尾白中学校   【桜宮八尋視点】


●桜宮八尋 高1



野村と揉めているところに、誰かが声をかけてきた。声のしたほうに視線を移して硬直してしまう。

そこにいたのは、背の高い若い男。ジャージ姿からでもわかる筋肉の厚み。手をポケットに入れ上から見下ろしてくる威圧的なポーズ。どう見てもただもんじゃない。


「……いやぁ、オレたち、そういう人種じゃないんで」

「暴力はちょっと……」


見るからに暴力で解決を図るタイプの大男。

本能が逆らうなと警告してくる。

オレの陰に隠れるように移動した野村が、大男を避けるように大回りして逃げていく。


「オレは辞めるからな!お前みたいな女癖の悪い奴とやってられっかっ!」

「勝手にすりゃあいいだろ!」


捨て台詞はしっかり言っていくんだな。誰も頼んで入ってもらったわけじゃねえのに。面倒くせえ奴。


「もう、ええんかのう?」

「え?ああ……」


なぜか、大男は去っていかない。


「道を尋ねたいんじゃ。ここらに廃校になった中学があるはずなんじゃがのう。野球部が練習しとる。知らんか?」


なんだ、道を尋ねたかっただけか。


「元尾白中学校のことだろ?野球部の見学をしたかったのか。だったら、オレもそっちに行くからついて来いよ」


ヤカラ系じゃなくスポーツマンか。脅かすなよ。


「なんじゃ、あんちゃんも野球部か?」


この男の目はふしあなだな。


「いや、どう見ても違うだろ。オレは旧校舎のほうの利用者。音研部だよ」


ギターケースを見せつける。


「ほうかぁ、あんちゃんはミュージシャンか」

「いや、ミュージシャンじゃなく、ただの音楽好き。ギター弾いたりはするけど、聴くほうが専門だな」


聴いてるだけじゃ物足りなくなって楽器を弾いたりもしてるけど。典型的な下手の横好きって奴だ。

少し歩くと、Y字路に差し掛かる。


「そっちじゃなく、こっちの道」

「……木しかないのう」


元尾白中学校は雑木林に囲まれた辺鄙なところにあるから、初見だと迷うんだよな。


「どこ出身?移住組だよな?その方言」


あまり聞いたことのない西日本の方言。ここらは移住者が多い地域だけど、西日本からっていうのは珍しい。


「広島じゃ。ガキん時に住んどっただけじゃけぇ。もう、ほとんど広島なまりは残っちょらんがのう」

「いや、がっつり残ってる」


その風体で広島弁は似合いすぎて怖えよ。


「あんちゃんは?地元か?」

「あ?オレ?オレも移住組。東京からだよ。んでもって、高校1年、名前は、桜宮八尋」

「洒落とんのぅ」


なにがだ?名前か?東京か?

まあ、深く考えるようなことじゃないか。


「で?あんたは?」

「不動大地。中3じゃ」


ん?……中3?中3!?


「中坊かよ!年下かよ!」


無駄に緊張しちまったじゃねえか。

よく見りゃあ、体つきに似合わない童顔。中坊の顔つきじゃねえか。中坊のくせに威圧感ありすぎなんだよ。


「中学生がなんでこんなとこにいんの?」


廃校になって5年は経っている元中学校に、現役中学生が用事があるとも思えない。


「兄ちゃんに呼ばれたんじゃ」

「兄ちゃん?」


廃校に兄ちゃんがいるってことか?


「ああ、野球部に兄ちゃんがいんのか」

「ほうじゃ」


本当にただの中坊なんだな。兄ちゃんとか言ってると、子供に見えてくる。



緩やかな坂道を登り終えると、旧尾白中学校が見えてくる。小さな校舎と、最低限の設備しかない校庭。その校庭で野球部が練習している。


「寂しいところじゃのう」

「ああ、日常的に利用してんの、野球部と音研部くらいだからな」


廃校になった中学校は、現在、北仙丈校が利用している。主に利用してるのは野球部で、今年から音研部も利用できるようになったけど、ほとんどそれ以外の者は近づかない。なにせ、辺鄙なところにあるからな。部外者が来ることはほとんどない。


「どれが兄ちゃんだ?」

「球投げとるのが。兄ちゃんじゃ」


みんな球投げてるけどな。

マウンドでやたら豪快な球を投げてる選手がいるけど、そいつのことだろうか?


「あのピッチャーが兄ちゃん?」

「ほうじゃ」


なるほどな。遠目でも比較的体格のいい選手だとわかる。こいつの兄ちゃんなら、そうなるよな。


「大地!」


大地を見つけた兄ちゃんがマウンドから降りて、こっちにやってくる。


「じゃあな、オレはもう行くわ」

「道案内、助かったけえ、だんだんじゃぁ」

「お?おう、貸しにしとくな」


だんだん?



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