中学 【不動静真視点】
●不動 静真 中2
大地が春から中学生になった。
そうはいっても、地元の公立中学じゃけえ、顔ぶれは小学生の時と変わらんからのう。大地に変化はない。
変わったことといえば、湖のほとりにある中学の校舎は気に入ったようで、放課後、辰海とぶらついていたりしてるくらいじゃのう。
生徒数の少ない学校じゃけえ、のんびりしとる。
「静真く~ん!」
クラスメイトが、廊下の端で手を振っている。
「弟さんが~!」
大地が来てからは、のんびりはできんようじゃのう。
×○×○×○×
職員室に行くと、気まずそうな大地と目が合う。
「兄ちゃん、なんで来るんじゃ。男同士のごろまきじゃ。けりは自分たちでつける」
「そういうわけにもいかんのじゃ。相手、怪我したんじゃろ?」
大地の喧嘩相手の金囲に視線を向けると、やはり気まずそうに顔を背ける。
「怪我なんぞさせとらん。ちぃーっと撫でたらアオヂになった程度のことじゃ」
「そうなんか?」
「……そうだよ」
ぶっきらぼうだが金囲はオレには態度悪くないんじゃけどのう。大地と相性が悪いんかのう。しょっちゅう喧嘩しとる。
「先生ぇ!警察!警察を呼んでぇ!もう、今日という今日は許しません!!」
金囲の横で声を張り上げているのは、おなじみの金囲の母親じゃ。
「ええ年して、親に泣きつかんと尻もぬぐえんのか。なさけないのぅ」
大地の蔑みの言葉に、金囲の顔が赤くなる。
「来るんじゃねえって言ってんだろ!とっとと帰れよ!男の喧嘩にしゃしゃり出てくんな!」
「玲央ちゃん!?何でそんなこと言うのぉ!玲央ちゃんのためにぃ」
子離れできん母親じゃのう。
過保護な母親といると、金囲のような男はうっぷんが溜まっていくじゃろうな。それで大地に当たるのは筋違いじゃけどのう。
「まあまあ、金囲くんのお母さん。先に手を出したのは金囲くんたちということもありますし、今回は、喧嘩両成敗ということで」
中学の教師も事なかれ主義みたいじゃのう。
大事にせんでくれたほうが助かるけど、金囲の母親が問題じゃ。
~☀~
軽い説教だけで解放され、職員室を出る。
今回は警察沙汰になることもなく穏便にすんだが、これから先も、そうとは限らない。
大地に釘を刺しとかんとのう。
「中学生になると、小学生の時のように世間は甘くしてくれんけえ、むやみに手ぇ出したらあかんぞ。自分を守る時以外は、相手の挑発に乗らんようにな」
「……わかっとる。……次は足使うけえ」
余計な付け足しがあるの。
「大地、本当にわかっとるんか?」
「……わかっとる」
困ったもんじゃのう。
中学生になって、大地も背が伸びて、少しは大人になってきたように思っとったんじゃけど。
大地は変わらんが、でも……
「金囲が母親に楯突いたのには驚いたのう。反抗期に入ったんか?中学生じゃものなあ」
「かねい?」
大地、喧嘩相手の名前、覚えとらんのか……
興味がない者は覚えんからのう。大地の目に金囲は映っとらんのじゃろう。
大地は金囲に興味ないけえ、金囲が落ち着いてくれたら揉め事もなくなるんじゃけどのう。
反抗期の間は難しいか。
……反抗期か。大地もそのうち……
「大地もそろそろ反抗期になるんかのう」
覚悟せんとなぁ。
「安心してええ。ワシはずっと反抗して生きとる」
なんで大地は得意気なんじゃ。
「なにを安心したらええんかわからんが、それもそうじゃのう」
生まれてこの方、大地が大人しくしとったことなんぞないのう。
反抗期関係なく、揉め事は終わらん言うことじゃろうか……
「大地ー!静真兄ーちゃん!」
校舎を出たところで、辰海の声が響き渡る。
久慈もおる。待たせてしまったようじゃのう。
「岩ちゃんと小布ちゃんもいるから、3on3やろー」
岩泉先輩と小布施先輩もおるんか。
試してみたいことあったけえ、丁度ええのう。
大地はまだ12才じゃけえ、“ゴールデンエイジ”ではあるけどのう。そろそろ13~15歳の“ポストゴールデンエイジ”用のトレーニングも取り入れたい思うとったとこじゃ。
ゴールデンエイジで身に付けた能力をさらに磨き上げる。実践で。
それには、身体能力の高い岩泉先輩と小布施先輩を交えた動きというのが、ええ練習になる。
「静真がなんか企んでる顔してるぞ」
オレと目が合った小布施先輩が揶揄う。
「怖えぇ。静真対オレたちでチーム組むか?」
岩泉先輩まで、乗っからんでも。
「いくらなんでも、冗談が過ぎます」
大地も辰海もええ動きするようになってきたけえ、6人の力の差が縮んできとるからのう。もう、オレが入ったほうが勝ついうことも難しくなっとる。
みんな成長しとるんじゃなぁ。
「静真が笑みを浮かべてるぞ!」
「怖えぇぇ」
……先輩たち、遠慮はいらなそうじゃのぅ。
「さあ、やりましょうか」




