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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
20/44

18話 「ソールの実力」

「んっ!(ガーオル!)」


ベルリが嬉しそうに声を上げる。

あれ?

窓から覗くと、ヘルハウンドリーダーだ。鱗犬ではない。

そして、周りの景色が…全く違う。


『早いわね~。リューくんがこの会議室に来てから代わりに行動してもらってたわけだけど…。』


キュベレ姉さんの言葉に、ベルリは顔を綻ばせて…


「わ【省く】


(そりゃーはえーよ!なんてったって『二撃のガーオル』って呼ばれててな、

理由は相手の魔物が攻撃しようとしたら、すでに二回は攻撃を与え終わっている位早い、と言われてたからなんだぞ。

アタイのハンター仲間で、自慢の弟なんだぞ!)」


凄い興奮の仕方だな、目がキラキラしてる。さぞや自慢の弟だったのだろう。

そうか、ベルリもハンターだったのか。


(よしてくれよベルの姉貴。今じゃ足の速いただの犬っころだ。)


謙遜だな。てか今更ながら気になることが…


「なあ、その立派な弟君もそうだが…みんな歳はいくつだったんだ?」


「ワンッ(アタイは18だよ。)」


(オレは16だ。)


「私は、20だ、ちなみにウナは13だよ。」


『レディに歳は聞くものじゃありません。と言いますか…把握し切れませんね。いつ神になったのかも、流石に覚えてませんし…。文献も残ってないでしょう。』


「ちなみに俺は17」と俺も言っておく。

てか、ガーオルは俺の腕に噛み付いてきた仲間思いのヘルハウンドリーダーの名前だな。

ゲレスとは違い熱いヤツだったな。

ベルリはもう少し年が上かと思ったんだが、大人っぽい見た目に、子供の心と言ったとこだな。

それにしてもソールさんは二十歳とまではよかったのだが、その後に続いたウナの年齢には驚きだ。十代いってたんだな…あ、ゴブリンの姿だったからか。

休憩室で眠る姿のほうを思い出せばまあ中学生と言われても小柄なほうだねって言えるくらいか…。

キュベレ姉さんに関しては、まあカミナの事もあるし一概に言えないだろう。

む…。ベルリが「わ~(年下か~)♪」って、俺が年下なのがそんなによかったのか?


「ちなみにガーオル君だったか、こちらの話は把握してたりするのかな?」


俺がそう聞いてみると…


(おう、ある程度は聞かせてもらった。今じゃそこにいる騎士様にも怒りはねーよ。元から疑問が多かったが、邪神だなんだと言われちゃ頭がついていけないがな…。後、ガーオルでいいぜ。)


ふむ。姉貴と違い冷静な部分は持ち合わせていた。だが、仲間意識はやっぱり強そうだ…だからだろうか、群れ成すヘルハウンドになったのだろう。


「俺の事はどうだ?」


(ん?ああ、アンタに関しちゃ感謝してるよ。魔物でいるうちは考えや行動に縛りがあったみたいだからな。てか、あの時の変なリザードマンでいいんだよな?)


「ああ、その変なリザードマンでいいと思うぞ。」


(ベル姉貴のこと、たのんだ。)


ゴホッゴホッとベルリが咳き込んでいるようだ。ん?だが、ガーオルといえば女にする発言が…


(オレはな、姉貴が幸せになってくれればそれでいいんだ。魔物の姿じゃ幸せになれねえから、あの時は姉貴の心を壊れさせないために色々言っちまっただけだ。深い意味は無い。それに、血のつながりが無くても弟であり続けたいしな…。)


ズズッと今度は鼻を啜る音が…感情的になりやすいんだな。


「そうか。…頼まれた。」


今度は「ハウッ!ワンッ!」て、驚きの声を上げているな。

別に何かするわけでもないんだが…


「それとマッピングと宝箱の回収ありがとう。ご苦労様。

キュベレ姉さん、それで分体と本体のチェンジについてだが…

後、ソールさんの召喚とかも…」


(へへっ、ハンターやってた頃も足の速さが売りだったからな。

兄貴に褒められるとなんだかすげーうれしーぜ!)


窓から見える尻尾がすごい勢いで振られている…


『はいは~い。ソーくんの準備も大丈夫だよ~。

出かたは簡単、出口を作るのよ。まあ、今の会議室は四方が壁でしょ。

一箇所だけ窓があってそこから外界とダンジョン内を映すことができるわけだけど…

窓がある壁とは違う壁に出入り口用の扉を配置すればいいのよ。

簡単でしょ?』


これって俺の中でおきてる事なんだよな。自分の体がダンジョンと言われても相変わらずピンとこない。どこか他人事な感じなのがなんとも…

さてとイメージ、イメージ…

お、おおっ光の扉って感じだが窓のある正面の壁、その右側の壁に出入り口っぽいモノができた。


「すごいな。ここがリューイ君の中で、ダンジョンなのが驚きの連続だよ。」


できた扉を見てソールが感嘆の声を上げる。大丈夫、俺も驚きの連続です。

さてさて、ここから出れば本体と分体のチェンジができるわけだな…その前に

ベルリの前まで移動する…まあまあな背の高さだな160半ばと言ったところだ。

ヒールとかブーツ履いたら同じくらいの背に見えそうだ。

その頭に手を置き…燃えるような赤髪をくしゃくしゃっとしながら撫でた。

ああ、その顔はとても幸せそうだった…。


(よかったな姉貴。俺も頭撫でてもらいてーなぁ。

母さんに撫でてもらったこと思い出すぜ…)


寂しそうな声色だった…。母親ね、もう会えないわけだもんな…

くっ、まだまだ撫でていたくなってきた。

所々はねているくせっ毛だが、手触りはフワフワしていて柔らかい。


「…。そろそろ行かないか?」


あ、すいません。ソールさんって…

俺がベルリから離れると代わりに近づき…その頭を撫でた。


「こ、これは。いいものだ…。」


『(「…。」)』


「うううっ!わんわんわんっ!(ええい!さっさといかねーのカヨッ!)」


あ、怒った…










ちなみに、扉はスライド式の自動ドアでした。そこにみんな驚いていた。

俺自身、会議室の扉が自動ドアとか凄くネ?って言ってしまった。



光る出口を進むと外のダンジョンに景色が変わった。

お、鱗犬に戻ってる。

ソールさんのほうは…何と言いますか。


最初の頃は全体的に白っぽい鎧で、腹部の乾いた血、スプラッタに溢れていた。そして鞘は無く、右手に握る抜き身のバスターソード。盾等は所持していなかった…


今の姿は、白っぽい鎧ではあるが、赤と黒のラインが所々に入っている。

兜は無いが、全身鎧だ。

背にはちゃんと鞘があり、今は剣を抜き仕上がりを見ている所だ。

ちなみにバスターソードとは…

「片手剣」と「両手剣」の間の剣と言われ、切ることも突くこともできる剣である。

お得だね!



だが、家でTVゲームしてる時にカミナにそう言ったら…実際は中途半端だとか、使い勝手が悪いとか、扱うには専用の訓練を受け、扱い方を身に付ける必要が…とかブツブツ言ってたっけ。

それなら、扱える人が凄いんだなって言ったら…「物好きよね」って…



脱線してしまった…


剣自体は黒っぽいのだが、その両面に赤いラインが二本はしっている。その赤いラインがまるで血管のように思えてくる。躍動すらしそうで生命力すら感じる。

それを扱うソールさんの表情もまた真剣さが段違いだ。


「これがダンジョン内における生成武器か…見事としか言いようがないな。元の剣もそれなりの一振りだったが今のコイツは数段違いだ…。ダンジョンに入り浸るハンターの気持ちもわかるな。売るのも自分の武器にするのもアリだ。」


そうなのか…。確かに、こんな感じに生成された武器や防具、アイテムはさぞ高くなるだろう。へたすれば一財産だ。効果つきの武器なんて反則過ぎるよな。


「へへっ、そうだろ?オレはそんなすげー武器は見たことねーが防具やアイテムはそれなりに見つけたことがあるぜ!その日の晩は酒場で肉食い放題だったぜ!!死体漁りって呼ぶヤツもいるが、オレらはオレらでプライドだってあるさ…。汚れ仕事と思われようともな、世の中には必要としてくれているやつらだってイッパイいるんだ。騎士様はそう易々と小さな集落や村なんかに派遣なんてされねーだろ?見向きもされねーやつらが頼りにだってしてくれるんだ!母さんがな、無い胸を一生懸命張りながらいつもそう言ってたんだ。」


最初辺りは自慢話だったが、途中からは泣き出しそうになりながら母親の話をしだす。いや、無い胸とかかなりキツイ一言だが…。その母親はと聞くと


「オレの本当の母さんは顔もしらねーんだ。育ての親ってヤツだよ…ハンターでな、オレや姉貴は孤児だったが拾ってもらって、生き方や戦闘技術、知恵をくれたんだ…暖かい飯と一緒に。でも、急にいなくなっちまった。他のやつらが言うには魔物に食われたとか…だがそう言われただけでな、全く実感がなかった。遺品の一つもなかったんだぜ?」


辛そうだな…親の死に目に会えないのはどの世でも堪えるか…。

会議室の椅子に座り、俯く茶色い髪の少年。

背丈はそこまで高くなさそうだ、160はどうにかと言ったところだな。

ただ、言わせてもらおう…褌とTシャツってのはどうなんだ?書かれている文字に関しては

「猫派」って、猫いるのか…。いや、犬だっただろうキミ…。

さぞや不服だったのか?


「今後や今までの詳しい話はそこの泣いてる姉貴さんがまともに喋れるようになってからまたしよう。俺らの仲間がその反省中状態を解く鍵を握っているかもしれないしな。俺の探している子とも合流したい。そして何よりキミたちをこのダンジョンで殺し合いさせ続けたダンジョンマスターをどうにかしないとな…」


皆無言で頷く。


『さて、行きましょうか?ソーくんの剣がどれほどになったのか知りたいわ。リューくんのダンジョン内で生成した武器ですもの威力も期待できるかも?』


ソールと共に頷くと階段を下りる…

下の階に着くが、一本道のようだ。今までとは何かが違うようだ…

代わり映えせず、ずっと突き進む。

凄いな…これほどの移動においてソールの足音が全くしない。

それどころかフルアーマーなのにガチャガチャと擦れる音すらしない。

怖いな…

あの時も俺の背後に音も無く近づき声をかけてきたな。


『それはね~種族特性かも?まあ、今まで確認されてない種だから…怖いわね~』


それじゃあストーカに近くないか?


『本人のためにもその発言は控えたほうがいいわよ…まあ、ストーカーの意味合いが違うかもしれないけど。』


頭の中で会話しながら進む。犬の姿だから視線が低いな…

おや、広い空間に出たが何もいな…


「地面だ、地面から骨?が出てきてるな…。」


ソールが剣を抜き構える。

同じくらいのタイミングで足音が聞こえてくる…

空間の奥から人骨?いや、スケルトンか、堂々とした佇まいでこちらに近づいてくる。

あれがボスか…リーダーだろうか…

その後ろを補佐のようなスケルトンたちが走りながら近づいてきた。

そして横に並び立つと…



いや、この光景はどうかと思うぞ!



右の一体がバックラー(盾)でボスの股間を隠し、左のもう一体が胸元を幅広の鞘で隠す。

当の本人は、腰に手を置き仁王立ちしている…女性なのか?

だが骨だ、どのみち見えない気がするんだよ。


カタッカタッっとこれは何かを喋っているのだろうかわからない…

ボスは右手をゆっくりと持ち上げると勢い良く振り降ろした。

それが合図だったのか埋まっていた骨、いやスケルトンか。そいつらが這い出てくる。

まるでホラー映画のワンシーンだな。


「貴様らの準備を待っている暇は無い!私には大事な使命がある!残念だが、灰になってもらおう!!!」


その声と共に、ソールはバスターソードを横に一閃。

剣は放出された彼の魔力を紅蓮の炎に変え、全てを飲み込んだ。










そして、そこに地獄絵図が広がった。






灰が舞い散る様を呆然としながら眺めた…

ボスもリーダもそして、普通のスケルトンも関係なかった。

ただ一方的に炎の海に飲み込まれるだけだった…




炎が消えた後には何も残らなかった…



ボスの大事な部分を隠そうとしていたバックラーも鞘も…



見当たらなかった。



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