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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
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19話 「オーガ・ライジング」

『ソーくん!後々の事も考えなきゃダメだよ。使いすぎたらクールタイムはさまなきゃいけないんだからね。』


そこですか…。いや、もっと「スゴイ!」とか「カッコイイ!」とかそんな感じのコメントは無いのでしょうか?


「む。すまない、どれほどの威力があるのかワクワクしてしまったのだ。私としたことが…」


まあ男の子だもんね!仕方ないよ。うん、仕方ない。

そういえば、元は黒っぽい肌だったはずだがキュベレ姉さんの修正とやらによって今は青白さがある。病的な感じにも見受けられるが…表情豊かなおかげか不健康そうには見えないな。

ウナは常に眠たそうであまり表情が変わらなかったので兄妹と言えども違いが大きい。


さて、戦いにおいて相手の準備を待っていたらそれだけ不利だもんね。

こちらは準備して万全なんだからなお更。

ただの一振りで全滅は流石に…


「流石に消費MP200超えだからね空間全体を焼き尽くすほどとは…」


すげー。一般人ってMP100あるかどうかで、イルマも300代後半…

200をぽんと消費できる時点でかなりの保有量だよな…


「いや、実は余り余裕が無い。生前?500は有に有ったが今はアンデットだからね。

最大で300あるかどうかのようだ…だから、次は威力を調節しないとな。」


調節が利くなら安心か…いや、それにしてもアンデットでもMP300有るってそれだけでも十分脅威な気がする。彼の相手をしなくて良かったと心底思う。ありがとうウナ、キミのお兄さんと遇ったときに敵じゃなくて。いや、あの時丁度休憩室の様子を見るように言ってくれたキュベレ姉さんのおかげでもあるか…


『ささ、行きましょう。燃えたからといっても倒したことにより発生した魔素はリューくんのダンジョンにちゃんと蓄積されたからね。それに次の階はイルマちゃんやロッカちゃんの分体が黒いスライムみたいなのに攻撃された場所だからね…注意しとかなきゃ。』


空間を見渡し終わると舞っていたはずの灰も消えていた。宝箱関連は無く、奥の方に次の階への階段があるだけだった。

階段の前でソールと顔を見合わせ頷きあうと慎重に降りる…

先ほどの階と同じようにまた一本道の通路だ。

進んでいくと今までとは比べ物にならないほどの空間が待っていた…




「コロッセオ!?」



そう。円形闘技場である。

見渡せば観客席もある。だが、異質である…観客席には動かない角の生えた赤銅色の魔物?たちが大量に所々転がっているのだ…闘技場内には何もいないのに…


『オーガだわ。いえ、その前にこの場所が何でこの様な造りに…』


あいつらがオーガか、イメージと違わないな。

日本で言うところの鬼に近いね。

ん?確かここは元はセーフゾーンだったわけか…


『お~い蜘蛛、じゃなくてロッカちゃーんどこかな~』


キュベレ姉さんが元眷属を呼ぶ声が響く、彼女の声はこのダンジョンにいる魔物には聞こえないから連絡しやすいな~と思っていると…


「こっこで~すよ。こっこ!ここ~!」


おや、斜め後ろから…

うん、壁のレリーフの一部みたいにめり込んでますね。「阿修羅の浮き彫り」って言われたら信じてしまいそうだ。


『何が起きたのかな?』


レリーフ状態のロッカさんに近づくと呆れ声でそう問いかけた。


「非常に残念なお知らせです。加護持ちがこのタイミングで…」


キュベレ姉さんが息を呑むのを感じられた。姿は相変わらず見えないのにね。

加護持ち…それはもしかして…


『あの子がいるのね…今まで感じることができなかったけど確かに加護を持つ存在がリューくんとロッカちゃん以外に近くに…』


やはりか、開放されていない魂の中でも彼女が加護を与え、このダンジョンに向かわせた存在…



「ハーハッハッハ!ツエーヤツはいねーか!つえーやつは、いねーのかっ!」



なんだろう、笑い声は別として聴いたことがあるフレーズだ。

そうだ、悪い子に対して声かけするナマハゲだったかな。

声のほうに顔を向けると、青いな…

他のオーガが赤銅色に対して唯一、体が青い。

髪も他の焦げ茶色のやつらと違い黒だ、そういえば転生者だったっけ。

格好は腰に巻いている布のみで、右腕だけ籠手をはめている。

かなりの品なのか威圧感を感じられるほどだ。


反対側に見えている通路から現れたのだろう、ゆっくりとだが近づいてくる。


「ホウ?面白そうだな…。特にイヌウウウウウッ!」


ソールと俺を見比べると籠手をはめている右手で俺を指差しながら叫ぶ。

喋り方はとても流暢だ。更に近づいたおかげでわかるがほぼ人の姿とかわらない。カラダが青いのと黒い角が二本おでこから生えている以外は…


『あの子には幸せな家庭を築き挙げる未来が待っていたはずなのに…』


悲しそうな声が傍から聞こえてきた…


『おねがい、開放してあげて。もとよりわたしが彼をこの地につかわせてしまったことが原因だとは承知しているわ…』


そうは言うものの、実際地上は彼のおかげで活性化したダンジョンによる被害を全くといっていいほど受けなかったのだろう。英雄と呼ばれるほどの事をやってのけた人物だ、人選は間違ってはいなかったのだろう。


魔物の闘争本能を湧き立たせるこの出口無きダンジョンの仕組みは最悪だな。今は何より彼が貰ったダンジョン内における加護が失われていないと言うのも厄介だ。


「そんじゃーいきますかっ!そこの阿修羅ねーちゃんみたいにまともな戦いしてくれよ。

オーガじゃ一発KOで面白味が無かったからさ!」


俺に向かって一直線に駆け出す。

そこに空かさずソールが割り込み、剣を構えて袈裟斬りを放つが肩に触れるかと思った瞬間火花が散る。籠手による防御、魔力を開放し炎を剣に纏わせるが、左拳で今度は剣そのものを殴り軌道をずらす。空いたソールの腹部に右の拳がめり込む。


ソールは「ぐうっ」と小さく呻くと体勢を崩し前屈みに、そこに回し蹴りが襲い掛かりこめかみを強打した。そのまま錐揉み回転しながら転げ飛ぶ。


その一連の動作に間髪いれずに俺は牙に炎を纏わせオーガに飛びかかる。

だが巨躯に隠れた拳が飛び出す。

「がっ」と声が出てしまった。いいヤツを顎にもらったようだ…

体が宙に浮いたところを踵落とし、衝撃と共に身体が跳ねた所に掌低打ちが横っ腹に決まる。

俺は勢いを殺せず観客席に突っ込む。


ど、どうやら他のオーガがクッションになったようだが…こりゃ厳しいな。


「どーした?まだまだだろーぅ!こんなもんジャーねーはずだ、アンタも加護持ちならなあアアァ!」


俺が加護を持っているのには気づいたようだ。どうりで嬉しそうなわけだ。表情を見ているだけなら部活動に燃えているスポーツ青年といったところだもんな。


どうする、どうしよう…このままでは立ち上がってもサンドバックみたいなもんだ、飽きるまでは殴られ続けるだろう。ソールが無事かどうかも気になる…強い武器や防具があればどうにかなったりしねーかな。


≪何を言う。若人よ…君は多くの可能性を持っているではないか。私のように武器さえ握る事に恐怖し震えることしかできなかった老害などではない。≫


この声は、まさか…ヴォルキンさん!?


≪名前を知っているとは光栄だよ。いや、ゴルトから聞いたのかな?私みたいな妙なオークがいただろう、そいつの名前だ。≫


巌のおっちゃんだな…。俺に多くの可能性とは?


≪なに、私にも声は聞こえていたんだよ。さて、私の最後の言葉を覚えているかね?≫


覚えているよ、そのゴルトのおっちゃんは大笑いだったが…

次はオーガでキメたいんだよな?


≪フフフ…では今君のそばにあるのはオーガだろう?

何かね…年甲斐も無く気が高ぶってくるよ。

このダンジョンのせいでオークの姿の時も戦うことを強要されている感じがあってね、あの時は制御するために鍛えていたが…今はね、純粋に戦いたいのだよ。

身につけた己の肉体技術で!磨き上げた技で!

それも弟子と戦えるとは嬉しいねえ、手合わせはしたことがあったが…こうも本気でやりたいとはおもわなんだ。さあ、纏って戦ってみてはくれないかね?≫


なるほど、てかわざとナイフの投擲を受け、反撃もせず制御してのけたと…やっぱ只者じゃなかったのか。てか、弟子って…そりゃー燃えるなァ!

ああ、その思いごと纏わせてもらうぜ。爺さん、こんなに早く叶うとはなぁ


≪纏って魅せてくれ!技なら付け焼刃とは言わせぬぞ!存分に戦い抜いてみよ!≫




言葉はもう要らなかった。

青オーガの攻撃のおかげで身体が崩れ始め魔素が漂っていたのが幸いした。

魔素を操作し近場のオーガに触れ、吸収していく、一部としていく、構築していく、形にしていく。

マッスルオークを主体とし、オーガで形作る…

期待してろよ?青オーガ
















◆『拳闘』のジュンター (純太郎)


気付けば周りはオーガだらけだった。

皆が戦うことを求めていた。

だからひたすら拳を振るった、それが唯一だった。

半数以上を場外へと殴り飛ばした辺りで異物がいるような感覚…ありゃ蜘蛛か、人のようにも見える。

なんていうのかな~ああ、社会の教科書に載ってたような気がするぞ。そうだ、阿修羅だ…


「こりゃすごいですね…先ほど分体がやられた場所と全然違うじゃないですか。ダンジョンマスターが動かしましたね。」


ん?ダンジョンマスターだと…こいつは何か知っているのか?いや、綺麗な声したねーちゃんか。

おれは、声をかけた。

だが、言いたい事は言えず…その口は戦えと発した。

思考が染まる…戦え、戦えと。


「まさか…そんな。このタイミングでアナタなのですか…。この場にイルマちゃんがいないのも嫌な予感がしてきますね。ワタクシ、急がなければ…」


おれの横は通らず、大きく迂回し距離を置く、そして俺の後方の通路へと駆け出した。

近くにいるオーガを掴むとおれは通路のほうへ投げた、行かせてもいいのでは?と思っているのに身体が言う事を利かない。


逃げんじゃねーよ。そう言うと俺は駆け出し左の拳を振るう、ねーちゃんはその一撃を四本の手を用いて威力を殺すと残りの二本で手首を掴みおれを投げた。

すげーな!ほせー腕してんのに…はは、楽しいぜ…ああ、楽しもうぜえええ





攻防が続くがねーちゃんのスタミナが持たなかったようだな…

もうちょいで次の階行けたのになぁあ!

籠手に魔力を乗せたストレートパンチを叩き込む、六本の腕全てで防御の姿勢をとったが重量の乗った一撃に吹き飛ばされ勢い良く壁にめり込む…


気付いたら他のオーガは一体も残っていなかった。楽しみすぎたか…


おや、阿修羅のねーちゃんの傍に人?と犬?がいつの間にか近づいていた。

はは、こりゃ楽しめるんじゃねーか。特に犬、加護を持っているようだ。


さてと始めますか…










まだだ、まだ物足りない。騎士さんよ起き上がっていろんな技見せてくれよ?

そう思いながら起きあがらない騎士に近づこうとしたとき…

ゾワリ と冷たい感覚を覚える。こいつはつえーぞ?

俺は嬉しくなり、強者のほうを向いた…

ナンダアイツ?さっきの犬なのか…周りに転がるオーガが消えていき、犬の姿も消えた。

は、消えたダト?ナニが…え、なんだこの気配、懐かしいなぁっ!



「ジュンタアアアアアァ!!!」

「師匠うううううううっ!!!」



急に叫びながら現れたそいつに対して俺も叫び返す。

師匠、あんたがこのダンジョンから戻ってこねえって話を聞いたのがことの始まりだったな。

ギルドのやつらもパーティーメンバーも首を横に振ったが俺はどうしても行きたかった、そんなときに試練の女神様が俺に加護くれたんだっけなあぁ。

結果は雑魚をひたすら屠って、奥で出てきたでけーボスと相討ち。


情けねー話しだ。

それからどれほどの時を経たのか、先ほど目覚めたばかりだが…このようなこともあるんだな。

今の俺の事、止めてくれねーか?

もう自分の意思では止めれそうにネーんだ。

全力で頼む。


師の姿を纏いし者よ。





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