11
男は嘘を信じなかった。
ジャケットに隠していた銃を取り出し、迷いなく銃口を向ける。
放たれた二発の銃弾は容赦なく体を貫き、滴り落ちる赤々とした血が足元を染めていった。
◇◇◇
「犬守!」
高橋さんは営業部のフロアに入ってくるなり俺を呼び、自分のデスクへと向かった。
(今度はなんだ。)
駆け足でその後を追い、椅子にドカッと座りふんぞり返る高橋さんの前に立つ。
「俺、明日から1週間出張だから、代わりにこれやっといて。」
高橋さんは宙に表示させたパソコン画面に手を置き、俺に向けて素早くスライドさせた。
(会議で何か決まったのか?)
同じく宙に画面を表示させ、送られてきた電子書類に目を通す。
(はあ!?)
書類には【継続取引停止及び契約解除】と書かれている。
承認欄には課長のサインもあった。
「高橋さん!この会社、ずっと高橋さんが担当だった顧客じゃないですか!俺に言われても困りますよ!」
(通常なら、継続取引停止が決まった取引先には営業の担当が直接話しにいく。
担当でもない営業一人だけで行くなんてことはない。しかも、契約の解除となれば尚更だ。)
「出張は半年前から決まってたことだしー
まして主張に代わりの誰かが行くのは無理だしー
急に打ち切り決まったんだからしょうがないしー」
(だからなんで俺なんだよ!)
全く悪びれていない態度にも心底腹がたった。
「なら、出張から戻って来てかー」
公太の話を高橋が割って遮った。
「そこに書いてあるだろ?"至急対応案件"って。帰ってきてからじゃ遅いのー」
(至急対応案件…
この顧客何したんだよ!)
【継続取引停止】になるのは契約事項違反をした会社が殆んどだが、同時に【契約解除】ましてや【至急対応】とまではならない。
それ相応のことをしないと"トリプル案件"とはならないのだが…
「至急対応が必要なのは分かりました。でも、担当に代わって行くなら、こう言う場合役職付いてる人ですよね?何やったか知りませんけど、流石に先方も納得しないんじゃないですか?」
「そこんとこは大丈夫だ。先方さんそういうことは気にしないから。それに、こういう経験もしといた方がお前の為だと思うわけ。滅多に経験出来ないよーこういうのー
本当俺って部下思いだよなー
ってことで、よろしくー」
(よろしくって…)
「じゃあ、俺今日はもう上がるからーお疲れー」
唖然とする俺を残し、高橋さんは帰って行った。
「嘘だろ…」




