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サッカーなんて、ただの調教よ  作者: やしゅまる


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20/21

第19話『導く支配、共鳴の女王たち』


ハーフタイム。静寂のロッカールームに、息を呑むような緊張が満ちていた。


カリンは立ったまま、誰の目も見ずに言った。


「……私は、間違っていたわ」


ミオが顔を上げる。ヒナも、少し驚いたように眉を動かす。


「命令で勝てると思ってた。“私についてきなさい”って言えば、皆が動くと……でも違った」


彼女はゆっくりと、チームメイトたちを見渡す。


「私の“支配”は、ただの独りよがりだった。だけど──」


拳を強く握り、声に熱を乗せる。


「皆を信じて、動かす。命令じゃなく、信頼で導く。それが……今の私の支配よ!」


ミオがニカッと笑う。「それだよカリン様!」


ヒナは静かにうなずいた。「なら、行こう。“共鳴”で勝つんだ」


──後半、キックオフ。


聖セレナの機械的なパスワークが、また静かに試合を掌握しようとする。

だが、前半と違ったのは──カリンたちが“動じない”ことだった。


「ヒナ、左から裏! ミオ、引きつけて落として!」


カリンの声は、もはや命令ではなく“流れを促す風”だった。

選手たちが自主的に判断し、信じて動く。

そして──聖セレナの精密な機構に、“感情”というノイズが入り始める。


(なぜ、対応できない……?)


セレスの脳裏に、わずかな疑念が走る。

パスが一つ、ズレた。


──その隙を突く。


ヒナが中盤でボールを奪う。

一瞬の間に、ピッチが開く。


「ミオ、行きなさい!」


ヒナの縦パス、ミオのターン。

だがすぐに囲まれ、戻す。そこに──


「信じてるわ、私に!」


カリンが走り込む。


受けたボール、ゴールまで約25メートル。

セレスが思わず身構える。あの距離からは──


だがカリンは、真っ直ぐにボールを蹴り上げた。


「聞こえてるんでしょう、氷の女王──」


スパァンッ!


炸裂するミドルシュート。

鋭く、重く、美しく、放物線を描く。


「この球体豚野郎ォォオオ!!」


最後の絶叫がスタジアムに響いた。


──ゴール左上、突き刺さる。


一瞬の静寂。

次いで、歓声。爆発。


「カリン様ーーーっ!!」


ミオが抱きつき、ヒナが拳を掲げる。


カリンは、膝をついたセレスの前に立った。


セレスは、静かに立ち上がる。初めて、頬に汗ではない“色”が滲んでいた。


「……あなたの支配。悪く、なかったわ」


「あなたの制御も、見事だったわ」


二人の女王が、初めて対等に向き合い、微笑んだ。


──導く支配が、氷を溶かした。

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