第10話『強豪・聖セレナ女学園来訪』
その日、放課後のグラウンドに高貴な風が吹いた。
「聖セレナ女学園が、練習試合を申し込んできたって!?」
顧問の一言に、部室がどよめく。
聖セレナ。地区ベスト4常連。
完璧なパスワークと守備連携で“白き戦術貴族”と称される強豪だ。
「これは……本物の“支配”を見せられるわね」
カリンは、静かに目を細めた。
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試合当日。
現れた相手チームは、全員が白いリボンで髪をまとめ、どこか宝塚じみた統一感を放っていた。
その中央に立つのは──
「姫城セレス。聖セレナの司令塔よ」
長い黒髪を流し、キリッと整った眉、瞳は冷たい氷のように澄んでいる。
彼女が指一本を上げると、それだけで味方が動き出す。
「まるで……軍隊」
ヒナが呟く。だが、カリンはゾクッとするような快感を覚えていた。
(私と同じ。いや、それ以上に“支配”を極めた存在)
試合開始。
セレスは声を荒げることなく、指示だけで展開を作る。
右に出せ。止まれ。預けて前に走れ。
全員が完璧に従い、ボールはまるで意志を持ったかのように動く。
「支配って、あそこまで冷たくなるの……?」
ミオが圧倒されながらつぶやく。
ヒナも歯を食いしばるが、カリンだけは逆に燃えていた。
「……見せてあげる。私はあなたと違う、“女王”のやり方を!」
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後半、試合は1-2。追いつくにはあと1点が必要。
カリンは仲間の目をひとつひとつ見て、声を張る。
「落ち着いて。私たちは命令じゃなく、互いを信じるチームよ!」
ボールが回る。ヒナから、ミオへ、ナギサへ、そして──カリンへ!
「今よ!」
彼女のパスからヒナが飛び出す。ワンタッチでミオへ戻し、最後はヒールでゴール前へ落とす──
シュート!
──外れた。ポスト直撃。歓声とため息が入り交じる。
そして、ホイッスル。
1-2で敗北。
「惜しかった……!」
「でも、私たち、通用してた!」
部員たちは悔しさの中に、確かな手応えを感じていた。
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試合後。
セレスがカリンに近づいてくる。
「君の支配、悪くなかったよ」
「……皮肉かしら?」
「違うわ。ただ、私にはできない方法だった。あんなにも“仲間”を信じて戦えるなんて」
セレスはひとつだけ笑って、そのまま踵を返した。
完璧な姿勢で、背中を見せる。
「ふん……完璧主義者め。だけど、嫌いじゃない」
カリンはゆっくりと空を見上げた。
「支配じゃない。“導く女王”──私は、そうありたい」
照り返す夕日が、彼女の横顔を照らしていた。




