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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第二章 王都への旅路

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初めての馬車旅

ここまでのあらすじ


辺境の街に転生後、底辺の冒険者達と交流を持ちながらお金を稼いでいただけの主人公。

酒を飲んだ勢いで作ってしまった腕相撲協会や、猿・巨人討伐で死にそうになりながらも大金を稼ぐが、いつのまにやら有名人となってしまう。

冒険者ランクも勝手にどんどん上がっていき、ついには最速でCランクへ。

そんな失敗を帳消しにすべく、安全な仕事と、快適な生活環境を求めて、魔道具の勉強をしに王都へと旅立った。


 馬車の車列は、川沿いの道をゆっくりすすむ。

 今は、行商のポールさんと一緒に御者席に座らせてもらっている。そして馬車の四方をチーム暁の4人が徒歩で固めるといった形だ。

 雲一つ無い青い空。木漏(こも)れ日の降り注ぐ道。鳥のさえずり。旅としては最高のコンディションなのだが・・・・・・それにしてもお尻が痛い。荷馬車にはサスペンションなど無く、車輪にはゴムタイヤも付いていない。路面の凹凸(おうとつ)が全てダイレクトにお尻に伝わってくる。そして馬車は車高が高い。少しの路面の傾きで、御者席は盛大に左右に揺れる。そのため車輪が小石を踏んだだけで、突き上げと横揺れが同時に来るのだ。また御者席は前輪より前の位置となっている。前輪で小石を踏むと、後輪が支点となり、作用点である御者席は前輪以上に上下する。こんなおまけまであるとはね。

 加えてこのエルフの体は華奢(きゃしゃ)で、お尻の肉もあまり付いていない。隣の恰幅(かっぷく)のいいポールさんとは違うのだよ。そろそろ限界になってきた。

 馬車は2時間に1回程度、馬のために休憩となるが、次の休憩で下ろしてもらおう。『(あかつき)』の持つマジックバックをポールさんに貸し出しているため、この馬車には積載量に少し余裕がある。そのため乗せてもらえたのだけど、はっきり言って歩いた方がいい。

 前を行く馬車には(がら)の悪い冒険者が4人乗っている。こいつらは商人も含めて王都の方から来たらしく新参者だ。この商隊の中でも知っている人はいないようだ。隊列の一番後ろを指示されたのに、無理矢理中央付近に割り込んでくるほどモラルも低い。いくら隊列の真ん中の方が安全とはいえ限度というものがある。


 前の馬車は何か荷物を満載しているようだが、護衛の冒険者は全て馬車に乗っている。よほど軽い物でも積んでいるのだろうか?なんて見ていると馬車の後ろに腰掛けている冒険者が嫌らしいじっとりとした視線を向けてくる。ほんといい加減にしてほしい。

 半日ほど行くと、道は勾配(こうばい)を増してくる。自分は後から馬車を押していた。馬2頭でこの馬車を引いているのだが、それは2馬力。原付バイクですら6馬力くらい出ているのに。そりゃ荷物を載せた馬車なんて引いていたら坂道は大変だろう。

『暁』のみんなは平均で40レベルくらいあるので、単純計算で普通の人間の16倍くらい力があるという事。馬より馬力がありそうだ。その4人が馬車に軽く手を掛けて押しているだけなのだが、馬車はスイスイ進むので自分は押している振りだけで十分だったりする。

 ちなみに、足下には非常に気を使った。なにせ馬のウンコが落ちている事がある。それもホヤホヤの湯気が立っているようなものが。大体の馬車が2頭立てなので、(わだち)のちょうど真ん中ならその確率は低いようだ。しかし、馬車のすぐ後ろで押していると前が見えないから本当に怖い。まだ馬車の車列の中間だからましだけど、最後尾なら遭遇率は2倍だ。ウンが付いたらどう考えてもアンラッキーだよ。


 馬車の車列は、峠道に入る直前にある広場で停止した。ここで一泊するらしい。

 荷馬車を中心に、円形に広がりそれぞれに焚き火をし、食事を取る。馬車の荷物は盗まれないように布をかぶせた後、ロープで縛ってある。他にも幌馬車の場合は入り口を塞いだりしている。冒険者ギルドの馬車に至っては金属の(びょう)まで打ち付けてある完全な箱で、まるで金庫のようにガードが堅い。中には高性能マジックバッグを満載しているものと思われた。

 冒険者達は毛布にくるまって寝ているだけの連中もいれば、『暁』のようにテントを持参しているものもいる。

「では、今日の割り当ては、最初がルイスとモーガン、夜中がオレ、明け方にスティーブとリューで」

 夜ご飯は、堅いパンとちょっとしたスープ。食べながらアーサーが夜の警備の順番を告げる。

「魔物だけじゃ無く、荷馬車もしっかり見張ってくれよ」


 この時期は昼が長い。まだ少し明るいがテントに潜り込む。テントは二つあり、小さい方を一人で使わせてもらった。桶もあったので、借りてテントの中で体を拭く。そして、これだけ人数がいると面倒くさいのが用足しだ。男は簡単でいいかもしれないけど。近くの木の陰で済ますのだが、薪を拾うため林に入ってくる人も多いので、魔力感知に全神経を集中しながら素早く済ます。スパイダーシルクのスパッツを穿くようになったので、以前より遅くなってしまったが、コートがあるのでグルリと体の周りを囲えば安心感がある。汚さないように気をつけなければならないが。

 テントの中で、革鎧を着たままコートに包まり寝る。毛皮のコートがあって良かった。


「交代の時間だよ」

 夜中、アーサーにそっと起こされた。

 テントの外にはまだ星空が広がっていた。

 焚き火を囲みながらコートに包まり薪をくべる。

 虫の音が聞こえるが、この時期はまだ弱々しい。

 スティーブと一緒だが、普通に話すとテントの中にまで聞こえてしまう。近くに他の冒険者もいるし、話す内容は気をつける必要があるだろう。とは言っても話す事なんて無いんだけどね。コミュニケーション能力が高い方じゃ無いし。お酒でも入れば別だけど。

 気まずい雰囲気ではあるのだが、別に恋人同士という訳でもないし、気にしないことにした。そういうスキルは無駄に高いのだ。

 しんみりと焚き火をしていると、一人キャンプを思い出した。

 こういうときは何か美味しい物でも作ればいいのかもしれないが、食材も調理器具も何も無い。

 暇だ・・・・・・、よし、防御魔法の練習でもしよう。

 目の前に見えない魔法の小さな盾を出しては、形を手で確認する。終わったら魔力感知で周囲を警戒してから、また防御魔法でなんらかの形を作る。正方形、長方形、球、半球、弓形等。小さく弱い盾なら魔力もそんなに消費しないので何度でも練習できた。

「何やってんだ?」

 スティーブが聞いてきた。

 空中に両手を出してパントマイムのような事をしていれば、誰でも気になる。

「魔法の練習」

 集中していたので、ぶっきらぼうに答えた。

「なんの?」

「防御魔法」

「へぇ、防御魔法も無詠唱か」

 魔力感知のタイミングになったので、練習を一時的にやめる。

「詠唱なんてしていたら、咄嗟の時に使えないじゃん」

「ちげえねぇ」

「それに、詠唱は学校で勉強する予定だし」

「そう言えばそうだったな」

 また、しばらく沈黙が場を支配した。

 そのとき魔力感知に反応があったので注視していると、前の馬車を護衛していた柄の悪い冒険者が林の中から帰ってくるところだった。トイレだったのかな?

「そう言えば、前の馬車はずいぶんひどかったですよね」

 ちょうど思い出したので、声を潜めて聞いてみる。

「ああ、あれな。たまにいるんだよ」

「それだけ?」

「まともな人間ばかりじゃ無いから気を付けろって事だ。俺達がいかに品行方正だか分かるだろ」

「・・・まぁ、確かに」

「だから、学校卒業したら暁に入らないか?」

「同時に冒険者も卒業します」

「あははっ、やっぱりダメかぁ。まあ、気が変わったらいつでも言ってくれ。金がなくなったからとか、レベル上げでも、理由は何でもいいからさ」

「気が変わったらね」

 変わる事は無いと思う。お金も巨人のおかげで29万Cr以上あるし。現代の感覚で2900万円あれば卒業してからもしばらく遊んで暮らせるのでは?

 マデリンでは最終的に、魔力草採集、腕相撲大会、魔素注入のバイトを週に1回、炭酸追加のバイトを毎日、という生活パターンでぶっちゃけ一ヶ月10万Cr程稼げた計算だ。巨人が現れなければ、そのままダラダラと生きていたかもしれない。


 明け方近くになると、スティーブは昨日の残りのスープを温めだした。自分は周りが起き始める前に用を足してくる。面倒な事だが。

 朝食のメニューは昨日の夜と同じ。スープはポールさんも含め6人分できっちり空になった。さすが何でも器用にこなすスティーブだ。



短いですが第二章開始です。

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