SS:レイモンド
Side story
最近は、おもしろいエルフと仕事をしている。
当初は面倒な仕事を押しつけられたものだと思っていたが、蓋を開けてみて驚いた。
集客のアイデアが次々と飛び出し、実行され、大会は大成功を収めた。私が采配して失敗するはずも無いのだがな。
このエルフはとにかく目立つ。そして見た目には弱そうに見えるところが重要だ。おかげで良からぬ事を考える連中が次々と現れるのだ。最初は護衛を張り付かせようかと思ったが、良いアイデアが頭に浮かぶ。こいつは囮に使えると。
本当に弱いならそんな考えに至ることは無いが、こいつは冒険者ギルドに登録した時点でグレートボアを単独討伐できる腕があったと聞いている。
そして、密かに雇っていた人間を張り付かせたところ、出るわ出るわウジのように湧き出てくるゴミ虫共が。すべて綺麗に掃除させてもらった。憲兵共になど任せておいたら、せっかく捉えても金を握らされて無罪放免もあり得る。
しかし、あまりにも大会が成功しすぎたせいで、領主代行様から苦情が入ってしまった。そんなときにもレベル制限による大会開催を提案してきた。他にも、左手での大会とか、団体戦などと言う提案まで出てくる。これだけあれば、毎週開催しても単調な試合にはならずに済むだろう。
そして、賭けの方法についても。やはりどちらが勝つのかというのは分かりやすいが、賭け金の倍率が低くなりがちだ。そのため払い戻し率も高く設定せねばならず利益が出にくい。そういう話を振った瞬間に、優勝と準優勝のどちらも当てるかけ方とかを提案してきた。そして、その場合に絶対に当たらない組み合わせをお客が指定してきた場合の対処法等までをもすらすらと答えていく。
このエルフ、アイデアが尽きることは無いのか。森で暮らしていたエルフという情報しか無いが、明らかに高等な教育を受けている。
この前も最後の大会後の雑談で、巨人の骨格標本などと言い始めた。いい客寄せになると。そのアイデアに食いついたのは冒険者ギルドも同様だった。ヘクターめ、骨を一本単位で売るより儲かると踏んだのだろう。なにせ巨大なダンジョン種の骨が全身揃う事など前代未聞なのだ。商業ギルドとしてもなんとしてでも確保したかったのだが、所有者が冒険者ギルドなので今回は引くしか無かったのが残念だ。肋骨の一本は既にそのエルフに売却済みだったようだが、その場で買い戻しの交渉をしていた。やつらも強欲だな。
話は前後するが、このエルフは王都に行くので会長の職を降りると突然に言い始めた。やっと大会が軌道に乗ったところで辞めるだと。全く信じられない。これだけの儲け話を、それも自ら築いてきた地位を投げ捨てるとは。後釜をどうすればよいのか。あからさまに商業キルドの人間を入れてしまうと、エルフを追い出したように見えてしまい非常に外聞が悪い。
傀儡になりそうで従順な、それでいて馬鹿では無く、腕っ節の強さも必要ときたら・・・、頭が痛くなった。
その直後、王都のギルド本部に提出した報告書の返事が来た。大会成功の功績が認められ、全国規模の大会にするべく、本部で腕を振るえとのこと。ゴミ掃除も終わり商売のしやすくなった街で、更なる飛躍を遂げようと思っていた所ではあったが、中央で働けるというのであれば願ってもないチャンスだ。それに、エルフが王都に行くと言うなら尚更に都合が良い。
そのことを相談すると、エルフは名誉会長という職に収まるというアイデアを出してきた。名前だけはトップに残るが、実質は何も権限が無い名誉職だと。ははっ、素晴らしい。マデリンの組織はマデリン支部という事になり、王都に腕相撲協会の本部を置く。上の組織にある程度監督権を持たせておけば、マデリン支部長の権限は抑えられるので、人選の自由がきくようになる。そして後任には、木こりギルドのバーナードを推薦してきた。これには全く異論は無い。第三回大会で優勝し実績も十分。性格も実直、組織のトップの経験があり、指導力も問題が無い。顔として頭に据え、実務を商業ギルドで取り仕切れば、今まで通りに運営できるだろう。
エルフは本部の組織や人選等、全てを任せると言ってきた。これは信頼されている証なのか、全く興味が無いのか分からないが好都合なのでその話を受けた。
名誉職で一切の権限を持たないとしても、多少のお金は出しておこう。お金は人を縛るのだよ。そしてその方が、何かあったときに相談しやすいし、縁が切れることも無い。有能な人間を手放すつもりは無い。アナベラも王都に連れて行く。
そして現在、雇っている暗部だが、これは一考を要する。こちらでの生活もあるし、ここほど王都では好き勝手出来るとは思えないしな。
このまま順調に出世すれば、いずれは商業ギルドのトップも見えてくることだろう。
未来は明るい。




