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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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生ポーション作成

 さて、夕食まで時間があるのでポーションを作ることにした。

 通常は薬草を乾燥させてから作り、最後に魔素注入するが、その時に使用する錬金台が無い。錬金台は複数の魔法陣が仕込まれていて、いろいろと便利な魔法が使えるようになっている。温め。冷却。注水。蒸発(乾燥)。攪拌。沈殿。魔素注入。これがあればポーションを作るのに苦労はしない。魔法陣なので、魔法が使えなくても魔力を魔法陣に流し込めば魔法が発動する。または魔力が無くても魔石を使っても魔力を流し込める。

 ちなみに4000Cr。高くて買えなかった。

 なので魔素注入が不要な生ポーションを作る。

 しかしこれ飲むと苦いし傷にかけると激痛がするので売れない。

 自分用だ。


 昨日のしなびた薬草をすり鉢ですりつぶす。

 一日経っているので半生ポーションになるのかな。まあどうでもいいや。

 ドロドロになるまですりつぶしたらビーカーに入れる。

 魔法で水を追加。

 さらに魔法で温める。沸騰しないかなり熱い温度を維持して10分間、軽くかき混ぜながら。

 後は冷えるまで放置。

 夕食前に上澄みをポーション瓶に移し替えて完成だ。

 出来れば水分を飛ばして濃縮したいが錬金台が無いし魔法も知らない。

 色は半透明な薄い青色。

 効果は普通のポーションの1/10くらいだろうか。

 コンコン。

「はい」

「お姉さん、ご飯にしませんか?」

 ちょうどいいタイミングでマリーが来たようだ。

 二人して階下に降りるとみんな揃っていた。

 そこにちょうどスープが配膳される。

「お前さんたちには、特別サービスだ」

 目の前のスープ皿を見ると目が合った。いや目玉があった。

 これ食べるのか!

「おっ、柔らかくておいしー」

 見るとジークの皿には目玉がない。

 これはもう食べたって事かな。

「お姉さん、食べないんですか?」

 そういってマリーも目玉を(すく)って食べていた。

「うん、おいしいー」

 めっちゃ笑顔だった。

 まずはスープを一口。

 うん、おいしい。きっとウサギさんの骨から出汁を取ったに違いない。

 そして目玉を掬う。

 これは、食べ物。

 これは、食べ物。

 これは、食べ物。

 目を閉じてパクリ。

 ・・・柔らかくて思ったよりおいしかった。

 他にも肉片がたくさん入っている。

 今日のスープは他のお客さんにも好評のようだった。


 夕食後ジークが部屋に来た。

 その後ろからマリーが、そして、他のメンツもぞろぞろと。

 狭い部屋がぎゅうぎゅうになった。

 みんな興味あるよね。仕方ない。

 ジークを床に座らせて自分も向かい合わせに腰を下ろした。

 窓は開いているが夕暮れ時なので暗くなっていた。

 昨日は思わずランタンを借りてしまったが、今日は借りていない。

 光源の魔法を使えることを思い出したから。

 光球を手の平に出現させる。

「おおっ」

 周りから声が聞こえたが自分の心の中でも同じ感想だった。

 しかしこのままでは眩しいので頭の上まで移動させる。

 明るさはランタン程度。治療をするならもう少し明るいほうがいい。

 蛍光灯くらいの明るさまで光量を増加させる。

「うわーっ」

 光球を凝視していたみんなは(まぶ)しすぎたのか目を押さえている。

 ふふっ。

 俺はもちろん目を逸らしていた。

 すると魔力をグングン持ってかれる感じがした。

 笑っている場合ではない。このままではちょっとまずそうだ。

 光球は光量を増した時から暖かさを感じるようになっていた。

 エレーナの基礎イメージは太陽なのかもしれない。

 まあ普通はそうだよね。

 もしくは、火とか。

 熱は不要なのでイメージを変える。

 光だけ、光だけ、光だけ。

 LEDランプ、LEDランプ、LEDランプ。

 電磁波、電磁波、電磁波。

 ちょっと難しい。

 冷たい太陽、冷たい太陽、冷たい太陽。

 もうあきらめて熱を閉じ込める。

 キタっ!

 さらに、紫外線不要、紫外線不要、紫外線不要。赤外線も不要。

 これは効果があったのか微妙だな。

 まあいいや、これならこの光量を維持できる。

「さて、足見せてねー」

 ジークの怪我したほうの足を引っ張る。

 患部は赤く腫れていた。

 軽く押さえてみる。

「いてっ!」

 ジークの顔がゆがむ。

 これは中を消毒しておいたほうがいいかも。

 今日購入した新品の桶を足の下に置く。

 次に魔法で水をかけよく洗う。

 そして解体ナイフを取り出した。

「えっ、えっ、それどうするの!?」

 ジークは慌てだした。

「とげが残っているかもしれないし、少し切開して傷口を洗うよー」

 ジークの顔が青ざめていく。

「痛いけど我慢して。みんな、足と体をしっかり押さえててー」

 最初、顔を見合わせていた男どもがうなずいたかと思うとジークに群がりがっしり抑えつけた。マリーはリューの後ろから見ている。

「ちょっ、ちょっと待って」

 いつまでも待たされそうなので待たなかった。

 サクッ。躊躇ちゅうちょなく切り開く。

「ギャー!!!!」

 自分でも驚いているが、昨日、今日と解体を経験して、こういう事に抵抗が無くなったようだ。ポーションですぐ治せると思うと多少大きく開いてもきちんと処置したほうがいいと思うし。

 みんなしっかりジークを押さえてくれている。特に体の大きいジョンは足首をしっかり固定してびくともしない。

 水で血を洗い流すとやっぱりとげの先端が少し残っていた。ピンセットがあればよかったのだけれどそんな物は無い。

 ナイフでえぐるように取り除いてしっかり洗う。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

 そしてポーションを取り出す。

「次、痛いから暴れないでね」

「えっ、今のより痛いの!ちょっと、ちょっと待って」

 ジークは涙目になっていた。

「このポーションは即席で作ったものだから、ちょっと痛いの。はい、男の子なんだから、このくらい我慢しなさい」

 ポーションを振りかけてから傷口を素早く閉じる。そして、そのままポーションをかけ続けた。

「ギャー!!!!」

 一本では治りきらなかったので続けて2本目も使い切った。

 傷口はきれいにふさがっていた。

「はい、完了。他に怪我している人いない?」

 全員無言でブンブン首を振る。

 その時ドアがたたかれた。

 ドンドン!

「ちょっといいか」

 マスターの声がした。

「はいどうぞー」

 返事をしたらすぐに扉が開いた。

「なんだこりゃあ」

 狭い部屋に6人もひしめき合っている状態を見てマスターが驚く。でもそれ以上に驚いていたのは光源魔法の明るさだったのだが、それには誰も気付かない。

「今、怪我の治療をしていたんですよ」

「あぁ、まぁ、それならいいんだが。あまり大声を出さないように頼む。お客や近所が心配するからよ」

「すみません。気を付けます」

 窓開けっぱなしだったのは失敗だった。何度も悲鳴が聞こえれば不安になるよね。

 マスターの陰から給仕の女の人もちらりと覗いていた。

 本当にすみません。

 その後みんなぞろぞろ部屋を出ていった。

 ジークはまだ放心状態のようだったが。


 ポーションの実験は成功した。

 なんて言ったら怒られそうだが。

 あの程度の効果でも使い物になることが分かった。

 というより意外と効果が高かった。

 なんで?

 あの薬草、グレートボアの血にまみれていたから?

 その辺はまた検証が必要だな。

 とにかく使えるのでまた作っておくことにしよう。


 桶の中には赤紫色の水が溜まっている。

 宿の二階に水場はない。

 窓から捨てたい衝動に駆られる。

 雨が降っていたらやってしまったかも。

 面倒くさいが井戸のところまで行くか。

 しかし、廊下は真っ暗。

 となると、この魔法の光球を持っていく必要があるのだが、これを移動させるのには少し面倒くさい。移動する方向や速度を意識する必要があるのだ。

 ドローンを操作しながら廊下を歩いて階段を上り下りするようなイメージだろうか。

 慣れれば問題ないのだろうが多くの人は、ランタンの中とか、瓶の中とか、杖の先とかに光球を固定する。

 光球は熱いので指先に出すとやけどする。

 今のこの光球は熱いはずだ。

 熱と赤外線をバリアのようなもので包み込んで逃がさないようにしている感じ。

 放出される熱量よりバリアを作る方が魔法としての消費エネルギーが小さいのだろう。

 面白いね。

 魔法にもエネルギー保存の法則が成り立つのかもしれない。

 だとしたら魔法も科学だ。なんちゃって。

 結局ナイフの先に光球をくっつけた。正確にはナイフの先端にバリアの外縁部分をくっつけた。そして光量も調節。


 桶を洗いに行き、ついでに水も汲んでくる。

 魔法で温めればお湯になる。

 さて体でも拭こうかと思ったところで気が付いた。

 窓開けっぱなしだった・・・。

 危ない、危ない。

 今日は靴下ではなくタオルで体を拭ける。

 お風呂とまではいかなくてもシャワーのある生活がしたい。

 当面の目標はそれかな。

 さて昨日は体を拭いただけ。

 頭がかゆいので洗いたいのだが、桶一つ室内で、というのは難しい。

 とは言っても洗うんだけどね。

 さてここで、ビーカーの中にはポーションを作った残りがある。そのかなり濁った部分を桶に投入。さすがに沈殿物までは入れないが。

 これで髪を洗うと傷んだ髪が復活するのだ。飲まないから苦くもないし。傷もないから痛くもない。

 上着を脱ぎ上半身裸になり、長い髪の毛の先からお湯に沈めていく。

 そこに、

 コンコン。

 このタイミングでノックの音!

 あ、鍵かけていなかったかも。なんかこの先の展開読める。昨日と同じ・・・。

「お姉さん・・・!?」

 ガチャという扉を開ける音とマリーの声はほぼ同時。

 冷静に後ろを向いている事を確認する。あせって動かない。これは学習済みだ。いや鍵を掛けることを学習しろって。

「ごめんなさいっ!」

 マリーは慌てて扉を閉めた。

「こちらこそごめんね~、また鍵をかけ忘れちゃった」

「また後にします!」

 どたどたと部屋に戻っていくらしい足音が聞こえた。

 しかし、今、二人分の足音がしたような・・・。

 ま、いっか。

 後ろ向いてたし背中が見えたくらいでしょ。

 濡れた髪を軽く絞って鍵を掛けに行く。

 雫がポタポタ垂れているが、この際これは気にしないことにする。

 さて今日の市場にはシャンプーは売っていなかった。エレーナも含めてみんな頻繁に頭を洗うことはしないようだ。石鹸も高級品の部類らしい。で、買ってきたのが粘土。これをお湯で溶かしながら頭皮のあたりをもみ込むようにする。そして桶に頭をつけながらよく洗い落とす。んー、意外にもさっぱりした。

 次は体を拭こうかと思ったが桶の中は泥水だった・・・。

 これ窓から投げ捨てたい。

 しかし、それはぐっと我慢。

 濡れた髪をタオルでくるんで上着を着なおす。

 また井戸のところまで行って、桶を洗い、水を汲んできた。もちろんビーカーもきれいにしてきた。

 今度は忘れずに鍵を掛けてから体を拭いた。

 あーさっぱり。

 昨日、磨けていない歯を磨く。

 買ってきた木の枝の端を()み、ささくれた繊維でこする。

 まっすぐな棒だから歯の裏とか磨きにくくてしょうがない。

 そして、ささくれが歯に挟まった。

 どうするんだこれ。

 つまようじほしい。

 糸ようじでもいい。

 今日買った糸は太くて使い物にならない。

 スパイダーシルクは細いのだが、伸縮性が邪魔で使えない。

 結局とても苦労しながら木の枝で掻き出した。

 口をすすぐのにコップが欲しい。

 しかし、買い忘れたのでビーカーで代用。水は魔法で出す。

 いいアイデアだと思ったがこの口に含んだ水はどうするんだ。

 木の繊維だらけで桶に吐いたら洗濯できなくなるじゃん!

 窓の外に吐き出したい・・・。

 ビーカーに残っていた水を桶に全てうつして、ビーカーに水を吐き出した。

 手の中に魔法で水を出して口をすすぎビーカーに・・・これを繰り返す。

 次は洗濯。

 着ていた服は洗いたいが桶一つで洗うのは大きすぎる。

 裸で井戸を使うわけにもいかないので、革の服が手に入るまで我慢することにした。

 下着を洗い部屋にひもをひっかけて部屋干しする。

 残った水は面倒でも井戸のところまで洗いに行く。明日の朝まで放っておくのは気持ち悪いので。裸ではまずいから今日買ったトランクス、そして、少し汗のにおいが残る服をもう一度着て。

 あー、なんかもう疲れた。

 でもポーションは作っておかないと。

 薬草をすりつぶしていたら、

 コンコン。

 ノックの音が。

「お姉さん、今大丈夫ですか?」

 マリーは学習しているようだ。

 自分は・・・、鍵かけていなかったかも。

「どうぞ~」

 返事を待ってマリーが入ってきた。

「ジークがお礼を言いたいって」

 後ろにはうつむいて少し顔の赤いジークが続いて入ってこようとしていた。

 しかし次の瞬間、部屋を見回したマリーの瞳がカッと見開かれる。

 ん、なんだ?

 素早く振り向くとジークを部屋の外に突き飛ばした。

「いてっ、何すんだよ!」

「ちょっと待ってて!」

 マリーは勢いよくドアを閉めてから歩み寄ってきた。

 そして小声で

「お姉さん、下着。干しっぱなしですよ!」

 ん~?干してあるのは、靴下と、タオルと、ああ、ふんどしの事か。

「あ、忘れてた」

 というかこれ見ても興奮しないだろ。

 ジークはこれを見ても紐のついた布としか感じないと思うが。

 マリーは少し赤い顔だ。意識の問題か。

「もう、気を付けてください。森の中の一人暮らしじゃないんですよ」

「ごめん、ごめん」

 苦笑いで返す。

 ふんどしはポケットにつっ込んだ。

 マリーはまだ何か言いたそうな顔をしていたがあきらめたようで、ため息をついてからジークを呼んだ。

「あの、怪我を治療してくれてありがとうございます。さっき、お礼を言えてなかったから・・・」

 ジークはまだうつむいて、もごもごとお礼を言っていた。なんかジークらしくない。

「どういたしまして」

 マリーはまたしてもため息をついている。

 そんなにため息をついていたら幸せ逃げちゃうぞ。

「ところで、それは何をやっているんですか?」

 マリーは作業中のすり鉢に気が付いたようだ。

「また、なんちゃってポーションを作っているところ。最低一つは持ち歩いていないと、下着をつけ忘れた時みたいに、なんか不安なんだよね」

「お姉さん。たとえが悪い・・・」

 マリーが半目だ。

「ふふっ、ごめんなさい」

 そうです、ちょっとジークをからかってみました。

「作るところを見ててもいいですか?」

「どうぞ」

「ジークは早く帰んなさいよ。もう用はないでしょ」

 マリーは未だにうつむいているジークに声をかける。

「え、いや、俺もちょっと見たいなぁって・・・」

 ジークはやっと顔を上げたが、目が合うとすっと視線を逸らす。

 まだ男の子だね。かわいいもんだ。これで中身が40過ぎのおっさんだと知られた日にはそのショックは計り知れない事だろう。誰にも打ち明けるつもりはないが。

「つまらないと思うけど、見ていって」

 そして薬草をすりつぶす作業を再開した。

「意外と、簡単そうですね」

「そうね。魔力を込めたりしなければ、難しい作業ではないかもね。ただ、効果は弱いし、傷口にかけると痛いし、飲むととても苦い」

「それでも傷口がふさがるなら使えますよね」

「そうね。だけどもう一つ。魔力が散ってしまうから、それを何とかしないと」

「どのくらいもつんですか?」

「一週間でだいたい効果半減」

「ふーん、じゃ、そのくらいで定期的に作り直せばいいのね」

 マリーは作る気満々だな。

 出来上がった薬草のペーストをビーカーに入れ、注水、そして、温める。

「それは何をしているんですか?」

「有効成分を抽出しているの」

「???」

「治療に効く汁だけを、水に溶かして取り出すの」

「ああ、そうなんですね」

「・・・」

「・・・」

 沈黙が続く。

「それ、どのくらいやっているんですか?」

「十分くらいかな」

「どのくらいの温度ですか?」

 そういえばこの世界で温度の単位は聞いたことがなかった。エレーナの知識にもない。

「結構熱くて沸騰しない温度。これは、経験から学んでいくしかないかも。あまり熱くすると成分が変質するし、冷たいと抽出時間がかかるし、ポーションの日持ちが悪くなる」

「へぇ。難しいんですね」

 かき混ぜながら温度維持して10分くらい。時計は、ある。が、高価で貴族くらいしか持っていない。なので10分は経験と勘だ。

「よし完成。後はこのまま朝まで放っておく」

 ビーカーに何か蓋をしたい。しかし、何もないのでポーチを乗せた。

「わたしも作ってみようかな」

「そうね、水も魔法で作らないといけないし、後は温める魔法も覚えないと」

「水は魔法じゃなきゃダメなんですか?」

「普通の水だと成分の抽出があまりできないし、温めはランタンのような火を使ってもいいけど毎回一定の温度を保つのが難しいかも。魔法だと、慣れればイメージした温度を維持できるから」

「ふーん、そうなんですね」


 マリーの方を見ると少し赤い顔をしていた。

 ふむ、そういえば雨戸を閉めていたんだった。狭い部屋に3人もいて、さらにポーションも作っていると、少し空気が(よど)んでいるような気がした。今日の昼間はけっこう暖かな陽気だった。

「ちょっと換気しようかな」

 雨戸を開ける。

 そこには街中の暗闇があった。

 街灯なんかもない。窓ガラスから明かりが漏れることもない。暗い街並み。

 ところどころにランタンの暗い明りが見えている。

 もしかしてこの明るい部屋はかなり目立っているんじゃなかろうか。

 まぁいいや。

 そして何気なく右のポケットに手をつっ込む。そこには、きれいな方のぼろきれが入っているので取り出して作業の終わった机を拭いた。

 すると、ポケットからアノ布がこぼれ落ちた。

 それを見ていたマリーとジーク。

 何かお礼がしたかったジークはマリーより素早くその布を取り上げた。

「あの、これ落としましたよ」

 あ、これやっちまった状況かもしれないが黙っていれば大丈夫。

 ジークは笑顔だ。分かっていない。

 しかし落とし物を取ろうとしてジークに先を越されてしまったマリーは黙っていなかった。ジークの手から布を素早く奪い取る。

「何やってんのよ、この変態!返しなさい、お姉さんのパンツ!」

 あーぁ、ばらしちゃったよ。

 そのジークと目が合った。

 ジークはとたんに赤くなり目を逸らした。

 自分の顔も熱くなってきたのが体感でわかる。

 これ、どーしてくれんの~!

 いや、悪いのは落とした自分なんだけれども。

 気まずい雰囲気の静寂がつづく。

 実際は短い間なのだが長く感じた。

 こりゃもう笑ってごまかすしかないか。

「あはははは。ごめんなさいね。ジークもマリーもありがとう」

 そう言ってマリーから丸まったアノ布を返してもらった。

「ほら、ジーク行くわよ」

 マリーはジークを突き飛ばすように部屋を出ていく。

「あの、おれ・・・」

「じゃ、ありがとうございました。また明日」

 ジークは何かを言いたそうにしていたが、マリーは強引に扉を閉めた。

 ふう。

 なんだこれ。

 異世界にきて何やってんだろ。

 深いため息をついてベッドにあおむけに寝転がると眩しい光球が目に入った。

 しかもその周りには羽虫がぶんぶん飛び交っている。

 この光景、真っ暗な公園にポツンとある街灯とおんなじだ。

 どうすんだこれ・・・。


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