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気ままに生きたい異世界転生 ~元おっさんエルフ、チートは無いはずなのに目立ち過ぎて困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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狩りの練習

 さて、今度は古着ではない服屋に来た。

 マリー達は、また表で待っている。

 別に貴族御用達の高級店ではないが、新品の服は高いので入りにくいそうだ。

 さて、ここで買うのは下着だ。どうしても中古の下着を買う気にはなれなかったので。

 店員さんはシミもほつれも無いきれいな制服をビシッと着こなしている。

 マリー達が入りにくいって言った意味が分かる。


「あの~、下着が欲しいのですが」

 声をかけてみたのは、そこそこの年齢の女性の店員。若い子に声をかける勇気はない。

「どのような下着でしょうか?」

 そんなことを聞かれても分からないので、聞き返す。

「どのような下着があるのでしょうか?」

 店員は少し目を丸くしていたがすぐに再起動し、奥から何種類かのパンツを持ってきた。

「これは毛糸で編まれています。冬でも暖かいですよ。100Crです」

 毛糸のパンツだった。

「これは亜麻(リネン)です。男性の方がお求めになることが多いですけどね。150Crです」

 いわゆるトランクスというタイプだな。お股を開いたら足の隙間から見えてしまいそう。森に行くときは使えないが街中でズボンを履いているなら全く問題無いな。

「こちらは絹です。手触りなんかも最高です。1000Crです」

 高ッ! さすが絹。

 腰の部分と足の部分が絞ってある。ドロワーズといったかな。

 この世界にはまだゴムという素材が無いらしい。

 代わりにスパイダーシルクと呼ばれる魔物由来の糸が使われていた。これは、伸縮性が多少あるのでゴム紐のような用途に使われているらしい。ちなみに超高級素材。

 ふんどしは売っていないようだ。目立つのも嫌なので今日はあきらめる。後で自作してもいいし。

 ということで、男としてはき慣れたトランクスと、裁縫道具、普通の糸と、スパイダーシルクの糸(3mで30Cr)を購入。


 そして、桶や紐を買ったり、市場で塩を買ったり。

 歯磨き用の枝を買ったり。

 石鹸は高かったので、また今度収入があったときにする。

 お金はほぼなくなった。金貨1枚と銀貨が少し。

 魔石を売らなければならなくなるかもしれない。

 今日使った分をゴブリンで稼ぐとなると、30匹以上倒さなくてはならない。

 昨日、ライバルっぽい少年パーティが4匹倒してジークに自慢していたな。

 探し回るのだけでも一苦労するのだろう。

 何かぼろい儲け話はないものだろうか。


 いったん宿に帰り荷物を置き、弓を持って街の南の草原に来ていた。昨日みんなと肉を焼いた付近だ。

 獲物はウサギ。

 昨日もちらほら気配は感じていた。

 男共には、腹筋、背筋、腕立て伏せ等、そして、素振りをやらせる。ジーク以外は途中で拾った木の棒だ。

 まずは筋力を付けなくては。

 多分まともな食事ができなかったから筋肉があまりついていないんだと思う。

 マリーも弓を引いたときに腕が震えているようでは狙いが定まらない。

 ただ、今日の獲物は小動物なので矢の威力はあまりいらない。

 軽く引かせて的に当てる練習をさせる。


 ほどほどに練習したところで狩りの時間だ。

 ウサギは魔物じゃないので襲ってこない。

 男共はウサギを追い立てる役。

 マリーと自分が弓で仕留める役。

「マリー、落ち着いて狙って。外しても私がいるから大丈夫」

「はいっ!」

 返事が緊張している。

「ま、命がかかっているわけでもないし、気軽に練習だと思って」

「はいっ!」

 気合の入った返事だった。……まぁいいか。

 合図を送ると男共はガサガサ音を立てながらウサギを追い立て始めた。

 暫くすると、

 ガサッ!

 一羽のウサギが草むらから飛び出してきた。

 マリーは急いで弓を引き、狙いを定める間もなくすぐ放つ。

 当然、矢は大きく外れた。

 それを見てから矢を放つ。

 するとタイミングよくウサギが大きく跳ねたため矢は外れてしまう。

「……」

「……」

 自分もマリーも無言だ。

 やっちまった。大失態だ。

 だが、すぐさま次の矢を番える。

 ウサギは方向転換して近くの草むらに飛び込もうとしていた。

 魔法を準備している暇は無い。

 エレーナを信じて第2射を放つ。

 するとギリギリ後ろ脚に矢が刺さった。

 ウサギは暴れているが、返しのついた狩猟用の矢は簡単には抜けない。

「マリー、すぐ次、来るよ」

「えっ! はいっ!」

 喜んでウサギの元に駆けだしていきそうだったマリーを制す。

 ガサッ!

 2羽目のウサギが草むらから飛び出してきた。

 マリーは慌てることなく落ち着いて矢を放ったが、マリーに気付いたウサギが素早く方向転換したため矢は外れてしまう。

 それを確認してから矢を放つ。

 今度はホーミング付き。

 きっちりと胴体に矢が刺さる。

 魔法を使わなくても問題はなかったけど保険です。

 恥ずかしいからとかじゃなくて、お肉がもったいないからです。本当です。

 魔法による矢の軌道修正は掛からなかったので、マリーは魔法を使ったことに気が付いていないはずだ。

 ウサギは深々と矢が刺さった状態で、それでも必死に逃げようとしていた。白っぽい毛並みに赤いシミが広がっていく。それを見てハッと我に返る。小学校で飼われていたウサギの世話をしていた頃を思い出して胸がキュッと苦しくなる。昨日は必死だったからこんな気持ちになることはなかったな。自分達にとっては狩りの練習のつもり。気軽なものだ。しかしウサギにとっては生死を分ける非常事態。

「やったー! 肉ー!」

 男共はウサギに飛びついてとどめを刺していく。

 ちょっと感傷的な気分になっていたのだが……台無しだよ。

 そして傍らのマリーを見てみるとテンションが低い。

 ここは年長者としてフォローしなければならないか。

「マリー。まだ練習を始めたばかりなんだから、そんなに気にしない。悪くなかったよ。30年やってきても外すことあるんだから。それよりも、すぐ次の準備をする練習もしよう」

「あっ、はい。頑張ります!」


 今回南側から追い込んだので、北側、東側から同じように追い込んで2羽仕留めた。

 先ほどは新しく購入した矢ではなく元々持っていた矢を使った。幸いにも折れたりしなかったようだ。数が少ないから助かった。今回は新しく購入した矢を使った。この矢は少し短く軽い。使えないことはなく小動物程度なら使用感は特に問題はない。

 骨に当たったのか深く刺さらず、返しも無いので抜けてしまうことがあったけれど、男共が追いかけまわして仕留めてくれた。

 さすがにみんな息を切らしている。

 これは筋力だけじゃなく持久力も付けなければならないかな。


 今日は買い物をしてから狩りに来たので午後の結構いい時間だ。

 そろそろ帰ろうかと思っていたら、みんなテキパキと準備を始めている。

 西側にある川でウサギの血抜き、そして冷却。薪を集めたり、かまどを作ったり。

「今日も食べるの?」

「え、帰っちゃうんですか?」

 みんな食べる気満々らしい。そんな話、何もしていなかったよね。

「確か宿で夕食代も払っていなかった?」

「それはそれで食べます。今から、ちょっと遅めのお昼です」

 ぐぎゅるるる~。

 その時、マリーのお腹が盛大に鳴った。

 歳を取ってからあまりお腹が空かなくなったと思っていたけれど、エルフになってからさらに空かなくなったような気がする。昼食を抜くくらいなら平気なようだ。

 とは言っても食べたくないわけじゃないので、みんなと一緒に食べることにする。


 今日仕留めたのは合計4羽。

 すぐ夕食になりそうだし昨日ほどは食べなくてもいいだろうと思い三羽解体する。

 昨日買った串に肉を刺して遠火でじっくり焼く。

 一羽は売るために持って帰る。

 鍋があれば骨から出汁を取って美味しいスープが作れるのだが、それはまた今度。

 魔物と違って動物は捨てるところがない。内臓も丸々持って帰って宿の主人にお土産として渡したら夕食がちょっと豪華になるかもしれない。


 肉が焼けるまでの間は魔法の練習。とは言っても発動したのはまだマリーだけ。

 そして、すぐに魔力が尽きるらしく、へばっている。

 この時間に基礎訓練というのもいいかもね。

 疲れた状態で狩りというのもしんどいし。いや、それも訓練になるか。まぁいいや。



 ウサギの肉は美味かった。

 柔らかくて変な獣臭もなく鶏肉のよう。

 みんな私の塩を躊躇なく振りかけて食べている。

 また買ってこなくては。

 今度は乾燥ハーブも混ぜて美味しい塩を作りたい。

 焼き肉のタレも欲しいが作り方が分からない。残念だ。

「明日は薬草取りにでも行こうかと思っているんですが、一緒にどうですか?」

 すっかり満足した顔のマリーが聞いてきた。

「防具が無いから明日もゆっくりする予定」

「東の森は魔物もほとんど出ないですよ」

「そうなの?」

「いままで一度も見たことないです。川を渡った西側の森は出るんですけど」

「ふ~ん。でも、何があるか分からないから、やめとく」

「じゃ、また明日もウサギ狩りしませんか?」

 それでもいいけどいろいろと情報収集がしたい。この国のこととか。周辺の地理とか。魔物のこととか。あと職探しも重要。

「ん~、午前中だけなら」

「やったー!」

「「「明日も肉が食えるぞ!」」」

 そうね。お肉は美味しいからね。


 昨日ほどお腹いっぱいというわけではないが、みんな満足してリラックス。

 ジークは足を投げ出して座っていたが、見ると土踏まず辺りから血を流していた。

「あれ、その足どうしたの?」

「ああ、さっきウサギを追い回していた時に、とげが刺さったみたい」

「大丈夫?」

「ああ、とげは抜いたし、血も止まっている。普通に歩けるよ」

「薬とかは持っていないの?」

「無い……」

 ジークはちらっとマリーの方を見た。

 マリーはこっちをちらっと見た。

 え~、なにか期待されてる?

「いつもポーションを持ち歩いているから薬は持っていないの。でも、ポーションが無いなら薬くらいは持っておいた方がいいと思うよ。これから討伐メインにしていくなら特に」

「そうですよね~」

「歩く程度なら足元も確認できるけど、走ったりすると足元を気にしていられないときもあるから。まだ、お金の使い道を決めていないなら、ちゃんとした靴を買うのもいいんじゃない?」

 みんなサンダルだからね。街中ならともかく森とかはダメだと思う。


 その後、何を買うのか、という話題で花が咲いている。いや、紛糾している? まあ、話し合いながら帰っている。

 今日は少し早いのでギルドが混む前に帰れそう。

 前を歩くジークは少し足を引きずっているように見える。

 夜飯まで時間があるはずだから、しなびた薬草でポーションでも作ろう。

 さすがに2000Crのハイポーションをこんな怪我には使えない。

「ジーク」

「ん?」

「今日、ごはんが終わったら、部屋に来て」

「えっ!!」

 大きく目を見開いたかと思うと顔が真っ赤になった。

 おいっ! 盛大に勘違いしているんじゃねぇ!

「足の傷の手当てをするから」

「ぐふっ!」

 固まっているジークにマリーから強めの腹パンが入った。

「なに勘違いしているのよ。このドスケベ野郎。お姉さまがあんたなんかと釣り合うはずないでしょ。百万年早いのよ」

 マリー……、つっこみがハードすぎやしませんか?



 街に帰るとまずはギルドへ。

 ギルドはまだ空いていてウサギは1羽15Crで売れた。毛皮は1枚5Cr。内臓は買い取ってもらえなかった。合計40Cr。この生活を繰り返してもお金は減るだけってことですね。

 その後宿に帰り、肉を除く3羽分の内臓やら骨といった残骸を見せると買い取ってくれた。

 それは10Crになった。

 さらに話し込んでみるとウサギまるまる1羽なら20Crで買い取ってくれるという。毛皮抜きで。

 ということは、毛皮を5Crでギルドに売るとして1羽25Crの稼ぎになる。

 ゴブリンは討伐報酬と魔石で30Cr。狩場も近いし危険度が少ない分こっちの方が断然いい。

 もちろん仕留めることができるなら。


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