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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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錬金術師のお仕事

 さて次は、使ってしまったポーションを補充しなくては。

 そして、本日の本命。

 安全な仕事を確保したい。

 冒険者ギルドからもほど近く、中央広場近くの一等地にそのお店はあった。

 窓にガラスがはまっている。

 今までの店とは明らかに違うたたずまい。

 大丈夫かな・・・。

 心配になりながらも扉を開ける。

「こんにちは~」

 するとカウンターにいた妖艶(ようえん)な感じのきれいな女性が顔を上げる。

「いらっしゃい。あら、めずらしい」

 きれいな女性と話すスキルは持っていません。

 それも、たいして広くも無い店内で1対1。無理です。

 いきなりテンパりました。

「え、ええと・・・」

 見た目は女でも心は男なので。

 とりあえず視線を外して店内を見まわしてみる。

 ガラス窓の表面は平らでは無いのか外の景色は見えない。しかし、店内を照らすのに十分な光を取り込んでいる。

 アンティークで高級な感じの店内に薬瓶(くすりびん)やポーション瓶が整然と並べられている。手前から奥まできっちりと。誰も買う人がいないのか、それとも、買われてもすぐ棚に補充しているのか。品数は多くなく余裕をもって陳列されているところも、高級な雰囲気を(かも)し出している。

 あ、マリー達が入ってきてない事に今気が付いた。

「何かお探し?」

 おおう、もう催促されてしまった。

「ポーションを・・・」

「魔法薬は、この辺よ。キズポは、これ」

 魔法薬は試験管のような瓶に入っているようだ。

「キズポ?」

「怪我を治療する魔法薬。骨折くらいの大怪我になると、こっちのハイポーション」

「高っ!」

 値札には2000Crと書いてある。小金貨20枚かよ。ちなみに普通のポーションは100Cr。

「魔法薬を買うのは初めて?魔法薬の値段は決められていて、国内ならどこで買っても同じよ」

 錬金ギルドめ足元を見やがって、価格調整しているのか。

「今まで森で暮らしていたので・・・」

「へぇ~、エルフって本当に森で生活しているんだ」

「一人暮らしだったので、他のエルフの事は知らないんですけど」

「ふぅ~ん。で、買うの買わないの?」

「高いのでやめておきます。その代わりに、すり鉢とか、ガラス瓶ありますか?」

「あるけど、まさか、ポーション作るつもり?」

「はい」

「あんた知らないと思うから忠告しておくけど。作ったヤツ売ったら捕まるからね」

「えっ!」

「錬金ギルドに所属していないのに販売すると鉱山送りよ」

「え~・・・、じゃ、錬金ギルドに入りたいのですが」

「すぐには無理。王都の魔法学園錬金科の卒業、又は、ギルド員に弟子入りして数年のキャリアが必要よ」

「あの、弟子として雇ってもらう事は・・・」

「それも無理。雇ってあげたいけど最近不景気でね」

「・・・」

 一番期待していた仕事は無理そうだ。ポーションは高いから実入りは良さそうだし。自分で薬草採取すれば100%ほぼ儲け。少し仕事して後はのんびりできるかと思ったのに。

「意地悪で言っているんじゃないのよ。この街は数年前まで最前線だったから冒険者もいっぱいいて(にぎ)わっていたのだけど。この先に新たな拠点ができたのよ」

 そういえば、門番さんが言っていたな。

「フォレストワースですか?」

「そう。高位の冒険者は、みんなそっちに移動してしまったの」

「なんで、行かなかったんですか?」

「危ないからよ。高位の魔物が出るのに街の石壁は建築中で、ほとんどが木の柵。無いも同然よ。自衛する力が無かったらすぐに死ぬわ。という事だから、この街には他にもお店はあるけれど、どこも事情は同じよ。あなた今まで森で生活していたなら、大丈夫じゃない?フォレストワースに行ってみたら?」

「いえ、もう死にそうになったので、それは遠慮しておきます。とりあえず、すり鉢とガラス瓶下さい」

「ポーション瓶と封印は要らないの?」

「ポーション瓶は持ってます。封印て何ですか?」

「魔法薬の魔力を保存するための魔法陣が書いてある紙。これを貼っておくと保存がきくのよ」

「あ、保存の魔法陣なら瓶についてます」

「え?瓶に?ちょっと見せてもらえる?」

「はいどうぞ」

 持っていた空のポーション瓶をポーチから取り出した。

 青いガラスの小瓶は香水瓶のようなデザインで、瓶の底に魔法陣が刻まれている。

「へえ、初めて見たわ。これ、どこで手に入れたの?」

 やばい、こんなところにもトラップがあったとは。変なところから出身地がばれてしまうのは避けたい。いやバレてもいいんだが、変なところだった場合に困ることにならないように。

「えぇと・・・、旅の商人さんから、偶然・・・」

「これ、すごい技術ね。ガラスの表面じゃなく、中に魔法陣が刻まれているなんて」

 爪で魔法陣の辺りをつついている。

 エレーナが住んでいた地域では普通だったけどね。

 ここは魔法技術的な後進国だろうか?


 その後、彼女とは少しおしゃべりした。

 毎日暇で仕方がなかったんじゃないだろうか。

 彼女の名前はメラニア、25歳。

 女同士だと話しやすいのかすぐに教えてくれた。こっちが39歳で男性恐怖症と知ると、さらに仲が良くなった気がする。

「錬金ギルドが無かった頃は、みんな自由にポーションを作って売っていたのよ。ポーションの値段は安かったから、みんな使うようになったのだけど、ある時、薬草を取りすぎて入手が困難になってしまったの。薬草が無いものだから、ポーションが値上がりした。そして次には、粗悪なポーションが市場にあふれたってわけ。上級冒険者は、お金を持っているからしっかりした物を手に入れていたけれど、駆け出しの冒険者はずいぶん命を落としたそうよ。そこで王命により錬金ギルドが発足した。だから、錬金ギルドに入るにはハードルが高くなっているし、ポーションの値段も高めに設定されているの」

「へぇ、物知りなんですね」

「これは学校に通えば必ず教わる内容よ。あと、錬金ギルドに入ってしまいさえすれば儲かるってわけじゃないの。この封印は錬金ギルド本部から購入しなければならなくて、その値段は40Cr」

「高っ!」

「そう、他にも瓶代、薬草代もかかるし、儲けは思ったほど無いのよ」

 ポーション作って悠々自適生活という夢は早くも潰えた。

「錬金ギルドはそんなに利益を吸い上げて、何に使っているんですか?」

「魔法陣を書くのにも、上質な紙にもそれなりのコストがかかっているし、各店舗の抜き打ち検査もしているわ。品質に問題がないかとか調べるの。他に瓶は透明でなければならないとか。封印は消費期限が書き込まれているかどうかとか。いろいろ面倒な規則がたくさんあるの。当然ながらお偉いさんの給料と税金なんかも含まれているらしいわ」

 あ、これ、錬金ギルドの上の方はドロドロしていそうだな。近づかない方がいいかもしれない。国が作った組織はそんなもんだろう。

 冒険者ギルドはどうだろう?これからもお世話になるのなら気になるところだ。


「複数のパーティが集まったクランという大人数の組織もあるんだけど、そいつらの資材購入担当のヤツらは結構ヤバいのが多いのよ。大量購入するのに、値切れないポーションの場合はどうすると思う?体やリベートを要求してくるのよ。最悪、本当に」

 メラニアさんは話し好きのようだ。

 おかげで、きれいなお姉さんの耐性は付いたような気がする。

 体を要求されてどうなったのか・・・、いや、どう対処したのかはとても気になる。


「それがね、あいつったら、フォレストワースに行って稼いだら結婚しようって言っていたのに、いつの間にかもう結婚していたのよ!それも私の後輩よ!ちょっと若くって、ちょっと胸が大きいだけの。学校の成績も顔も性格も、私の方が上だったのに。あんな小さな集落みたいなところなのに、もう行けるわけないわよ!」

 いや、顔は好みがあるし、性格は上かどうかなんてわからないだろうと突っ込みたい。

「行ったら絶対にうちの店に来て、マウントを取ってくるに決まっているわ。あの女」

 愚痴がつづく・・・、もうだいぶ経つのに話が途切れない・・・。

 いろいろな話が聞けてこれはこれで非常に助かるのだが、マリー達が待っている。

 そんな時、冒険者風の若い男が店内に入ってきた。

「いらっしゃいませ!何をお求めですか?」

 メラニアさんのトーンが突然上がった。

 一瞬、ジークがしびれを切らしたんじゃないかと思ったが知らない男だった。

 ナイスタイミング。お前はいい男だ。

「じゃ、また」

 ちらりとメラニアさんを見ると小さく手を挙げて合図してくれていた。

 ふう。

 やっと解放された。

 今度は時間のある時に来てみよう。

 もしかしたらお友達になれるかもしれない。


「遅くなっちゃって、ごめんなさい」

「いいんですよ。買い物は楽しいですからね」

 マリーは普通に見えるが、ジーク達は青ざめているようにも見える。

「なにか、あったらすぐ言ってね」

「何にもないですよ。さ、次に行きますか~」

 マリー・・・やっぱり怖い。


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