表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼きそばパン大戦争  作者: 清泪(せいな)
最終章 焼きそばパン大戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/146

第九十一話 ミニチュア錫杖

「な――」


 和美と矢附、そして齋藤も思わず息を呑んだ。カウンセリングルームに現れていた小早志真理亜の幻影が、突如身震いしたかと思うと掻き消えたのだ。耳にこびりついていた小早志真理亜の声も、跡形なく消え失せる。

 何が起きたのか――そう言葉にしかけた瞬間。


 ガラガラ――ドンッ。


 スライド式のドアが豪快に開き、巫女装束の女性が姿を現した。


「邪魔するでー」


 和美は驚きに目を丸くした。

 矢附は心当たりのある人物とは違う装束に首をかしげ、齋藤の微笑みはわずかに引きつった。


「この部屋には、招待した人物しか入れないはずだったんですが……無視できるとはね、西生花菜さん?」


「無視やないよ。こんな小細工しはるから、高城さん探すのに余計時間かかったわ」


 鬼の結界が効かない体質? いや、そうではない。力でこじ開けて侵入してきたのだ。齋藤の笑みはさらに引きつる。


「私を、探してたんですか?」


「そうや。奈菜を手伝ってほしい思てな」


 ――奈菜の仕事に首を突っ込むな。以前突きつけられたのは忠告ではなく、警告だった。言うことを聞かなければ力づくで阻む。そんな意味合いのはずだった。

 それが一転、手のひらを返したような提案。和美は呆気にとられる。


「白鬼の力が必要ってことですか?」


「あ? いやいや、勘違いせんといて。鬼の力を便利道具みたいに扱う気はない。アンタに頼みたいのは尻拭いや。こんな事態になったんは、アンタが余計なことしたせいでもあるやろ?」


「余計なこと?」


「さっき言うてた白鬼の力や。余計な巻き戻しに、余計な蘇り。それで生まれた僅かな希望が、かえって小早志真理亜を狂わせたんよ」


 わかっとるやろ? と花菜は続ける。


「そこのオッサンは西生家の失態やなんや言うとるかもしれん。でも、不用意な巻き戻しが残滓を顕にして、それが覚醒につながったんは事実やろ? アンタが姉さんのことを受けとめて、何もかも助けようなんてアホなこと考えんかったら、こんなことにはならんかった」


 突きつけられる言葉に、和美は返す言葉を失った。


「あの、それはちょっと――」


「いいの、舞彩」


 庇おうとした矢附を、和美は制した。責任の押し付け合いに意味はない。


「それで、花菜さん。私がやる尻拭いって?」


「まぁまぁ、言い方がキツかったのは認めるわ。そんなケンケンせんでええ。高城さんがいつもやっとる《お手伝い》感覚でやってくれたらええんよ」


 そう言って花菜は腰の巾着から掌サイズの錫杖を取り出した。


「何ですか、それ……ミニチュア?」


「よう出来とるやろ。ウチの神社のお土産として人気の品や。ご利益もある、れっきとしたもんやで」


 ほら、と花菜はミニサイズの錫杖を放った。和美はしっかり受け取り、掌の上でまじまじと見つめる。


「神社に錫杖……? 錫杖って仏教の道具じゃなかったですか?」


 先ほどは止められた矢附が、思わず口を挟む。


「おお、矢附さんは詳しいな?」


 名前を呼ばれ、矢附は動揺した。把握されていたことに驚いたのだ。


「いえ、ちょっと聞いたことがある程度で……」


「そもそもウチらの家は神道でもなけりゃ、仏教でもない。世間体のために形だけ真似しとるだけで、どっちつかずの立ち位置なんよ」


 巫女装束をひらりと揺らしながら、花菜は淡々と語った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ